小説『ソードアート・オンライン 第一章 〜アインクラッドと蒼騎真紅狼〜』
作者:大喰らいの牙()

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第十話  vsクラディール


〜真紅狼side〜
七十四階層の迷宮区前に俺は居る。
時刻は九時五分前、ほんの少し眠気を残しながらも、ここにやってきた。
俺以外にも、多数のプレイヤー達がここで待ち合わせしているらしく、朝早くから結構人がいる。
その時、転移門が光ったので「アスナかな」と思って、後ろを向くと転移先から慌てた声がした。


「きゃあああ、そこの人どいてーーー!!」


次の瞬間、転移門から勢いよくアスナが飛び出てきたので、俺は体をズラして姫様抱っこの形でキャッチする。


「きゃあっ!!」
「よっと………!」
「あ、あれ………? 痛くない………?」


アスナは地面に激突しないことを不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。


「ハロー♪」
「なっ!? ななななななな、なにしてんのよ///?!」
「それが痛い思いせずにキャッチしてくれた人への言葉か?」
「うっ………! あ、アリガト////」
「おう」


顔を真っ赤にしながらお礼を言うアスナ。
いやぁ、可愛いね。
その後、再び転移門が光り始めたのをアスナは気付き、「降ろして!」と言った後、俺の後ろに隠れた。
転移門からは先日アスナを護衛していた男、クラディールがアスナに続いてやってきた。
そして、こちらに気が付くと甲高い声で叫ぶ。


「ア、アスナ様、勝手なことは困ります………!」


クラディールは、こちらにゆっくりとやってくる。
俺はアスナとクラディールを交互に見た後、状況を把握した。
………うん、これは『七ツ夜』の準備をしておこう。多分これが一番最適だと感じる。


「さぁ、アスナ様、ギルド本部まで帰りますよ」
「今日は活動日じゃないわよ! …………だいたい、なんでアンタ、私の家の前で張り込んでんのよ!?」
「私の任務は、アスナ様の護衛です! 当然の事です!」
「含まれないわよバカァ!!」


へ、変態だぁーーー!!
そして頼むから、俺を挟んで言い合いしないでくれ。
すると、クラディールは後ろに居るアスナの手を無理矢理掴んで、帰ろうとするが俺はその手を掴んだ。


「アンタは、好き勝手に俺のパートナーを持っていかないでくれるか?」


クラディールは怒りに満ちた表情で、アスナは驚いた表情で俺を見る。
その言葉にクラディールはすぐさま反応し、歯を剥き出しにして睨みつけてくる。


「貴様ァ………!」
「安心しろ、お宅のお姫様の安全は責任をもって俺が持つからよ。それにボス戦をやるって訳じゃなく、散策やマッピングの様なもんだ。その手を離して、ギルド本部はアンタ一人で行ってくれ」
「ふ、ふざけるな! 貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるものかぁ!」
「務まるから言ってんだろ、バカ」


この一言が完全に事態をややこしくする決定的な一言となった。


「ガキィ………そこまでデカイ口叩くからには、それなりの覚悟の証明が出来るんだろうなァ………!?」
「そういうアンタは、あるのかい? アンタが言う、護衛の覚悟ってヤツをよ。もしあるなら、俺に見せてくれ」


俺は、火に油を注ぐ行為を躊躇い無くやる。口喧嘩じゃ俺は負けねーぞ。
完全に怒りが頂点に達したクラディールは、震える手でウィンドウを開き、メッセージを送ってきた。


【クラディールからの1vs1のデュエルを申し込まれました。受諾しm………】


『受諾しますか?』という表示が、完全に表示する前に俺は【Yes】を押す。
オプションの中から、『初撃決着モード』を選択する
アスナは、何か言おうとしたが周りの野次がデュエル表示の出現により、騒ぎ立つ。


『おい、ソロのガロンとKoBメンバーがデュエルだとよ!!』


この一言に、周りに居たプレイヤー達はバカみたいに集まり、口笛を鳴らす者、賭けを始める者と様々な奴が見られた。
クラディールは、大声で狂喜したように叫ぶ。


「ご覧くださいアスナ様! 私以外の護衛が務まらないことを証明しますぞ!」


バカみたいに騒ぐクラディールは、腰から両手剣を引き抜き、上段構えで体勢を保つ。


「さぁ………抜け、小僧!! 格の違いを見せてやる!!」


俺に注目が集まる中、俺は野次、クラディール、アスナの期待を裏切り、懐からもっとも慣れしたんだ短刀『七ツ夜』を取り出し、全員に見えるようにかざす。すると、一拍置いてから哄笑と罵声が飛び交う。


『ギャハハハハハ、なんだあの武器!!』
『オイオイ、あんなので戦うつもりかよ? クッ』
『調子に乗ってんじゃねぇぞ! 真面目にやれ!!』


アスナはいよいよ心配となり、声を荒上げる。


「ガロン、真面目にやってちょうだい!」
「割と真面目にやってんだが?」
「それのどこが真面目なのよ!?」
「ま、お前等の目にはそうでしか映らねぇか。笑いたきゃ、笑えよ。だが、結果を見て、お前等はその哄笑や罵声を後悔することになるぜ」


すると、笑いが止まり静かとなる。


「小僧、負けると分かっているからそのような武器でこの俺に挑むつもりか?」
「ハッ! 何を勘違いしていやがる? アンタ如きコイツで充分だ。むしろ、他の武器を扱うなんざ、お前には惜しいモンばっかだ」


クラディールは、何も言わずに激怒した表情で構え、俺を睨みつける。
俺は刃を出し、構えも何もない状態でただ悠然と立ち構え、一秒、また一秒と時間が経っていく。
そして、ブザーが鳴ると同時に俺は姿勢を獣のように低く構え、一気に加速した。
〜真紅狼side out〜


〜アスナside〜
私の争いだったのに、いつの間にかガロンとクラディールとの間の争いと変わっていた。
いや、正確には今後の私についてが報酬だが、一言も挟めずにここまで進んじゃった………
勢いが早く、すでにクラディールとのデュエル間で話は進み、クラディールは両手剣を構えていた。
ガロンも<はじまりの街>で見せたあの槍を構えると思っていたが、私の予想は大きく外れ、ガロンの手には短刀が握られていた。
その短刀を見た周りの野次達は、笑いと罵声の声を上げ、私も怒りが湧いた。


「ガロン、真面目にやってちょうだい!」
「割と真面目にやってんだが?」
「それのどこが真面目なのよ!?」
「ま、お前等の目にはそうでしか映らねぇか。笑いたきゃ、笑えよ。だが、結果を見て、お前等はその哄笑や罵声を後悔することになるぜ」


周りは静かになったが、誰もがその発言を信じなかったか。
どう見ても、武器のリーチの差や耐久度、さらには短刀使いなんか聞いたことがない為、『あんな武器で戦えるわけがない』と誰もが思ったからだ。私もその中の一人だ。
時間が迫ってきて、戦う為の場所を開ける私だが、半分諦めかけていた。
もう諦めるしかないわね………。
あんな息の詰まったギルドにはあまり行きたくないんだけど………
タイマーが0になり、デュエル開始のブザーが鳴る。
クラディールは、リズムを整えてからガロンに襲いかかろうとするが、それよりも早くガロンが真っ先に動いた。


ガロンはブザーが鳴ると同時に急激に姿勢を低くする。
まるで獣が地面を駆けるようにギリギリまで姿勢を低くし――――――消えた。
突然、目の前からガロンが消え、私もクラディールも野次すらガロンの姿を懸命に探す。
すると、突然陽の光が翳った。
太陽に雲でも掛かったのかと思ったが、そうではなかった。その影は不定形な形をしていて、縦細く、ところどころ隙間が合った。
私は変だと思い、空を眺めようとした瞬間、私は………いや、私達は目を剥いた。
そして、そこから先程まで耳にしていた軽い声が鳴り響く。





















『………随分とトロいな、アンタ。そんなんで護衛が務まるとか、笑わせてくれるぜ』
『な………ん……だと………?!』


クラディールも急いで声の方を振り向くと、そこには空中で逆さの状態で相手の首を刈り取ろうとするガロンが居た。
そして、そのまま手に持っている短刀で一閃。
クラディールは目の前の現実が信じられず呆気に取られていて、防御の姿勢すら取れずに、一撃を貰う。
たった一撃だが、行っているデュエルでは有効で、一閃と共に【WINNER】のウィンドウがガロンの上に表示される。


『やれやれ、防御の姿勢すら取れないなんて………つくづく無能だな、オマエ』


ガロンは華麗に着地し、そして再び姿を消しては私の前に戻ってきた。


私は今起こったことが信じられなかった。
ブザーと共にガロンが消えて、すぐ後にクラディールの真後ろ、しかも頭上に現れて一閃して勝つなんて………………私は夢でも見たのかしら。
この“世界”(SAO)において、ジャンプすることは出来る。だが、あの姿勢から飛び上がる動作も無く、クラディールの頭上………しかも、真後ろに飛ぶことなどあり得ないことだった。
私達、ギャラリーは口が塞がらない状況だった。


『……こ、こんなデュエルは無効だ!! 貴様、今ズルをしただろ!?』


クラディールは、捲し立てる。
すると、ガロンは……………


『やれやれ、負けを認めないか。なら―――――殺し合おうか。これなら、死んだ方が負けだ。抗議の声もあげないから、完全な決着方法だな。俺はいつでも準備万端だ。貴様も準備が出来次第、剣を抜け』


ガロンは、先程とは違って目付きが変わり、完全にクラディールの首を殺る目付きだった。
ガロンからの新しいデュエル方法にクラディールは、剣の柄に手をあてるが抜くかどうか躊躇っていた。
その様子を見ていたガロンは催促を促す。


『どうした? 抜けよ。さっきの勝負が納得いかないんだろう?』
『っ!』


クラディールの手は震えて思う様に動かなくなってしまっていて、必死の思いで声を絞り上げて発言した。


『………お、俺の負けで………………』
『抜けよ。お前が抗議の声を上げたんだろうが。自分の発言には責任を持て、それが出来ないなら文句を言うな。素直に認めろや』


ガロンは冷酷に喋る。
声だけで人を殺すほどの迫力を持っていた。


『まぁいい。負けを認めた以上、俺もこれ以上続ける気は無い』


クラディールは、野次を掻きわけて転移門に向かい、転移結晶を取り出して五十五階層の<グランザム>に跳ぶ瞬間、ガロンに向かって『必ず殺してやる』と叫んでいたが、それを聞きとったガロンは手が動き、短刀をクラディールの心臓目掛けておもいっきり投げつけた。


カンッ!


………だが、虚しくそれが刺さることなく、後ろの壁に深々と刺さった。
「外したか」と呟いて、短刀を壁から引き抜き、アイテムストレージにしまい込んだ。


「ガロン、先程の動きはなんなの?」
「外の世界で実際に使ってた体術。この世界で反映するかなと思って使ったら、案外使えたから今も使用しているだけ」
「じゃあ、システムアシストとかは………」
「一切無い。純粋に自分の力のみで行ってる業」
「………貴方の体、どういう風になってんのよ?!」
「人間の活動範囲を大きく超えてる体となってるぞ」
「見ればわかるわよ!!」


私はガロンに疑いの視線を向けながら、迷宮区に足を向けた。


「そんだけの動きに技があるんだし、今日は貴方が前衛を務めてちょうだいね」
「ちょっ! そんなんアリか?!」
「大丈夫よ、ピンチの時は助けてあげるから♪」
「………泣けるぜ」


ガロンは落ち込んだ表情で私の後をついてきて、フィールドに入り込んだ。
〜アスナside out〜


なーんか怪しいのよね、ガロンって。



―――あとがき―――
クラディールとのデュエルで七夜の体術を使いました。
使った技は、【閃走・八穿】。
MBAAでは、作者は結構出だしに使います。
原作では、上空攻撃なのに判定は中段攻撃というとんでも無い判定を持ちます。


今回は『初撃決着モード』です。
上空からの奇襲を反応するのは、至難の業です。
しかも、アバター達はおよそ40Kg前後の重さなので、七夜の体術を繰り出しやすい性能となっています。


次回は1クッション入れてから、グリームアイズ戦に入ります。
真紅狼のスキル【真絶・二刀流】が発動します。

-10-
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