小説『ソードアート・オンライン 第一章 〜アインクラッドと蒼騎真紅狼〜』
作者:大喰らいの牙()

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第九話  【ヤマタノオロチ】


〜真紅狼side〜
八十八階層に戻り、俺はメンバーを呼び寄せた。


「オラ、全員集まりやがれ! 土産だぞーー?」
「あ、団長、おかえりーー」
「意外に早かったですね」
「お土産、お土産♪」


ウチのメンバーは、男女の比が4:3となっていて、その内の二人は恋人同士でこのSAOに囚われてしまったらしい。
このギルドを発足したのにも理由があって、最初は俺達は顔は知ってるがソロもしくはコンビで最前線で活躍していたが、八十階層を超え始めてから十分な安全マージンを取っていても切羽詰まった状況に陥ることが多くなり、その時に主に俺が助けに入ることが多かった。
そして、八十八階層の時に俺は助けた七人に「俺達でギルドを新しく創らないか?」と俺が提案した。
すると、彼らもさすがにソロ・コンビで活動するにも無理を覚え始めたのか、快く乗ってくれたのだ。
そこからはトントン拍子で進んでいき、八人だけのギルド【ヤマタノオロチ】が誕生した。
本拠地はもちろん、この<タカマガハラ>であった。
<タカマガハラ>は、厳島神社の様な風貌で、和で彩られた街だった。
俺は稼ぎに稼ぎまくった金で、ホームを買った。
厳島神社の様に湖の上に建っていた。
このホームの前に旗をたて掛けて、ここが俺達のギルド【ヤマタノオロチ】であるということを証明した。


「おい、ライカ! 土産品食う前にお礼ぐらい、言えよ!!」
「ありふぁおうごがいまひた!(モゴモゴ………」
「食いながら喋んな! どうにかしてくれよ、フィン!!」
「すみません、ライカはどうしても食い意地が………」
「恋人のお前が止まらない時点で、女としてアウトだろ、コイツ」
「ふぁー! だんひょう………」
「「食いながら喋んな!!」」


俺とフィンで同時に叫ぶ。
フィンとライカは恋人同士で、現実世界の方では結婚まで話を進めているらしいが、このデスゲームに囚われてしまって結婚式は挙げることが出来なくなってしまったらしい。
その為、ギルドを発足した次の日ゲーム内ではあるが他のメンバーで結婚式の様なものを挙げてやった。
もしゲームをクリア出来たら、「結婚式に呼びますから!」とフィンは言っていた。
フィンは、黒髪で物優しそうな顔だが、芯は太い。メイン武器は楯付きの槍。
“第二頭首”の位置に居る。
ライカは、金髪でボーイッシュだが、やんちゃ。メイン武器は双剣。
“第四頭首”の位置に居る。


「あら、これ、どうしたの?」
「おう、カルラ。これ、俺のお土産」
「そうなの。いただきます、団長」
「はいよ」


今話したのは、カルラと言ってこのギルドの中ではおそらく俺よりも年上の女性だ。
だが、女性に年齢を聞くのはタブーであるので実年齢はよくわからん。
しかもプロポーションが抜群で、ソロで活動時はいい寄って来る男が凄かったらしい。
カルラは、茶髪だが朱のメッシュが多少混じっておりロングヘアー、妖しい雰囲気をたまに醸し出す大人の女性。ライカとは全然違う。キャリアウーマンとキャバ嬢を足して二で割った感じだな。メイン武器は細剣。
“第六頭首”の位置に居る。


「アレ、団長、帰ってきてたんだ!?」
「ホントだー、おかえり団長。どこまで行ってたの〜?」
「一応、俺はメンバー全員に行き先告げた筈なんだが、なんで覚えてないんだよ………」
「ゴメンネ、団長、僕忘れやすいんだー」
「うん、知ってるから。お土産あるから、ライカに全部食われる前に食べて来な」


二人は「はーい」と返事をして、全員が集まっている共同スペースに走っていった。
この【ヤマタノオロチ】の中でもっとも最年少の二人で姉弟である。
姉のシオリと弟のタツヤで、アバター名は名前をそのまんま使っているらしい。
歳は姉が17で弟は15だと言っていた。
姉のシオリは、珍しい銀髪で染めてるとかではなく地毛。母親がスイスの人でハーフらしい。
弟違ってしっかり者のお姉ちゃんで、忘れ癖のある弟がいつも心配。
メイン武器は大剣。
“第一頭首”の位置に居る。
対して、弟のタツヤは黒髪で忘れっぽいが無邪気で、ムードメーカーみたいな存在だ。
メイン武器は刀。
“第三頭首”の位置に居る。


「おや、団長。もう用事は済んだのか?」
「おう。意外と早く出来てな。何もすることがないから、土産買って帰ってきた」
「とか言って、【血盟騎士団】の副団長との密会があったんだろ?」
「密会じゃないが、堂々と会ったぞ?」
「堂々かよ!? チッ、賭けに負けたァーー!!」
「オイ、俺の知らない所で賭けんなよ!! つーか、お前等何の賭けしてたんだ、言えや、コラ!?」
「「「「「「団長と閃光の密会があったかどうか」」」」」」
「よぉーし、全員表に出ろ。ちょっと殴り合おうぜ!」
「「「「「「お断りします(^ω^)」」」」」」
「貴様等………!」


んで、最後に話しかけてきたのが、副長のクルス。
コイツも銀髪だが、コイツは染めたらしい。
クルスは既婚者で、妻は現実世界で待っているらしい。
おそらく、現実世界で眠り続けているコイツの身の回りを世話しているに違いない。
メイン武器は大剣。
“第七頭首”の位置に居る。


と言った感じでギルメンの紹介を終える。
まだ、色々とあるが、楽しみを奪うのもつまらないので、また今度にしよう。
突然、俺の前にメッセが届いた。
差出人はアスナからで内容は、「食事しない?」と書いてあった。
「もし、いいなら第五十層<アルゲード>のエギルの店で逢いましょう」と書かれていたので、再び出掛けることにした。


「あれー、団長、また出掛けるの?」
「おう」
「今度はどこに?」
「アスナに食事しないかって誘われたから、行ってくる」
「「「「「「ふ〜〜〜ん(ニヤニヤ」」」」」」


おい、そのニヤニヤを止めろ。
特にフィンとライカ、お前等は何、影でコソコソと話していやがる?


「まぁ、行ってくる」
「「「「「「いってらっしゃ〜〜い」」」」」」


あ、そうだ、この前森林の中で“ラグー・ラビット”を数匹仕留めたからついでに持っていくか。
〜真紅狼side out〜


〜アスナside〜
部屋に帰ってから、今日の私のイメージを払拭させようと得意の料理スキルで忘れさせるために、ガロンにメッセを送った。


「よぉーし、忘れさせるほど美味しいモノ食べさせてやるんだから!」


私はいつもに増してやる気を出した。
待ち合わせ場所の五十層<アルゲード>に向かう事にした。
ただ、ちょっとややこしいことがギルド内で決まってしまったが………
用意して家の外に出ると、【血盟騎士団】のユニフォームを来た男が立っていた。


「クラディール、まだ居たのですか?」
「私の役目は、アスナ様の護衛の任務を承ってます。当然の事。どこかに出掛けられるのですか?」
「ちょっと下の階層でね……」
「お供させてもらいますよ」
「………ご勝手に」


私は、後ろからついてくるクラディールを見向きもせずに転移門まで進み………


「転移、<アルゲード>!!」


アルゲードに転移し、エギルさんのお店に向かうと中にはガロンと<黒の剣士>と呼ばれるソロプレイヤー、キリト君がいた。
〜アスナside out〜


〜真紅狼side〜
アルゲードに転移した俺は薄汚れた路地裏を進み、通りに面した店を訊ねた。


「うっす、儲かってるか? エギル」
「おお、ガロンじゃねぇか、何しに来たんだ?」
「いや、待ち合わせ。……っとキリトもどうよ? 調子は?」
「そこそこだな。ガロンこそどうだ? 七十六階層の迷宮区の方は?」
「ヤバいぞ。安全マージンを絶対に14以上は取っていないと、通常攻撃で削られるからな」
「マジか………俺も防御面を考えないとヤバいか。というか、待ち合わせってさっき言ってたけど、一体誰と………………!?」


キリトとエギルはぎょっとした目で出口の方を見てる。
そのリアクションは来たのか。
後ろを俺も釣られてみると、アスナが居た。


「ガロン、早かったわね」
「ほんの数分前に来たから、待っては無いぞ」
「そう、よかった」
「………あ、今日はゴチになります。そんでもって手ぶらというわけにもいかないので、ストレージボックスに余っていた<ラグー・ラビット>の肉を数個持ってきたぞ」
「「「はぁ!?」」」


エギル・キリト・アスナは声を揃えて、驚いていた。


「何かおかしいこと言ったか?」
「いやいや、ガロン。<S級食材>の<ラグー・ラビット>だぞ? 俺ですらゲットしたこと無いのに、それを数個ってお前、どんだけ遭遇率いいんだ?!」
「あー、それね。いやね? 俺がフィールドを歩くとバカみたいにモンスターのエンカウント率が高くてさぁ、そのせいで第一層から強烈だったんだ………。最初の方は、ベヘモスが三体並んだ時は死ぬかと思ったね」


遠い目をしながら、過去の出来事を思い出す。
いまだにこのSAOの<ソードスキル>に慣れてなくて、苦労したもんだ。
周りに人が居る中で、システム外の動きを出せば、怪しく思われるから、なるべくシステム内の動きをしないといけない時は、そりゃもう辛いったらありゃしない。
もちろん、常に視られているわけではないので、周囲に人の気配がない時は、システム外の動きで処理していた。


「というわけか、<ラグー・ラビット>のエンカウント率も高かったわけさ」
「でもよぉ、ラグー・ラビットって、逃走率が高いんだろ? どうやって仕留めたんだよ」
「それは企業秘密だ、エギル。知りたいなら、俺が狩ってる時の姿でも視るんだな」
「それが出来ないから、こうして聞いてるんだよ!」


ぶっちゃけ、七夜の体術で一気に距離を詰めて倒しているが、そんな動き絶対に人間の動きを超えた動きなので、見せたくない。


「ま、お二人さん、これから俺はアスナに誘われてるので………じゃあな」
「「お、おう」」


どうも微妙な返事で俺とアスナとさっきから俺の事を睨んでしょうがない男は、店を後にした。


「………で、食材は有難いけど、どこで創るの? あなたの家?」
「俺の家はちょっとマズイから無理」


新ギルドの噂の発生源の場所に連れて行けるか。


「………どうせ、器具の方が揃ってないんでしょう?」
「ま、まぁ、そうだな………うん」
「いいわ、私の家に行きましょう」


アスナが勝ち誇った表情で、そういうととうとう黙っていられなくなったのか、後ろの男が口を挟んだ。


「アスナ様、こんな得体のしれない男をアスナ様のご自宅に上がらせるなど………!!」


様ぁ?!
え、なに? コイツも一種の崇拝者? アスナも大変だナー。
そして、“閃光”の異名を持つアスナが居ると言う情報が瞬く間に広がり、人が集まりし始めた。


「クラディール、この人は確かに得体のしれない人かもしれないけど、信用できるわ。それに貴方よりもレベルは10も上よ?」
「コイツが私よりも上………?!」


すると、何かに至ったのか反撃の言葉を出す。


「そうか、分かったぞ! 貴様、<ビーター>だな!? アスナ様、コイツ等自分が良ければ他はどうでもいい連中ですよ?!」
「いや、俺、<ビーター>じゃないんだが………、まぁそう呼びたいならご勝手に」


ホントは<チーター>ですけど。


「取り敢えず、ここで帰りなさい。副団長として命じます」


アスナは強い口調で、クラディールと呼ばれた男を黙らせ、俺はいつかの階層の様に背中を引っ張られていった。
男の視線は、ずっと俺に向けていて、まるで蛇のように睨んでいた。
どうやらアスナのホームは、六十一階層の<セルムブルク>らしく、ここに住む為に結構な額をつぎ込んだらしい。
部屋に案内されてから、料理スキルMaxのアスナの腕によりラグー・ラビットは素晴らしい一品と早変わりした。


「ごっそさん」
「美味しかったわ〜、生きてて良かった〜〜」
「確かに上手かったな。………血盟騎士団も変わったな」
「………………最初は、団長自ら声を掛けて行った少数ギルドだったんだけどね、いつの間にかギルドは拡大されて、今では最強ギルドって言われるようになったわ。でも、その地位も今再び奪われ掛けようとしているけどね」
「【ヤマタノオロチ】か?」
「ギルドの方でも情報を集めていて。アルゴが情報を渡してくれたの。もちろん取引はしたわ。アルゴの情報によると、『個々の力も総合力も【ヤマタノオロチ】の方が上』だってさ」


まぁ、構成メンバーの名前だけ明かさないのであれば、別にどう扱おうが構わないがな。
アスナは手に持ってる紅茶を一口含んだ後、急に真剣な顔つきになって喋る。


「貴方は、ギルドに入るつもりは無いの?」
「あん?」
「七十階層を超え始めてから、モンスターたちの行動パターンがズレ始めている」
「………そうだな」
「ソロでは緊急事態の時に陥った時の対応が難しい。ギルドなら下がって交代すればいいけど」
「………人それぞれじゃないか?」
「それを言ったら、元も子もないわ。だけど、いざという時に助かる時もあるのもまた事実よ」
「………平行線だな」
「そうね」


互いの主張が互い打ち消し合っている為、お互いの短所を押さえることが出来ず、意見は平行線のままだ。


「だから、貴方、しばらく、私とコンビ組みなさい」
「………はいぃ?(杉下○京風に)」


どうしたら、そのような結論に至ったか、実に興味があるんだが………教えてくれませんかねぇ?


「貴方の実力は知ってるけど、時が経てば、変わってるかもしれないし。それに私の実力もキミに教えて差し上げたいし。今週のラッキーカラー黒だし」
「いや、最前線はあb………」


俺が危ないと言いかけた時、ナイフが目の前に突きつけられた。
しかも、エフェクト帯びてんじゃねぇか!!


「オーライ、分かった。なら、今七十四階層の迷宮区が手間取ってるって聞いたから、そこでいいか?」
「いいわよ。時間は明日の九時、場所は迷宮区前。遅れないでよ?」
「ウィ」


時間を決めた俺は、そそくさと装備し直してアスナの家を出た。
女性の家を長く滞在するのも、時間的にマズイしな。


「そんじゃ、明日」
「ええ、明日」


俺達はそこで別れた。
〜真紅狼side out〜


はてさて、来るねぇ………



―――あとがき―――
【ヤマタノオロチ】はまた次回説明します。

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