小説『ソードアート・オンライン 第一章 〜アインクラッドと蒼騎真紅狼〜』
作者:大喰らいの牙()

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第十三話  “真絶・二刀流”vs“神聖剣”


〜真紅狼side〜
二日後、反動が抜けた俺は「グランザムで決闘してくる」とついうっかりとクルス達に喋ってしまい、全員着いてくるハメとなった。
だが、【ヤマタノオロチ】のメンバー発覚を恐れたので、全員ローブを被って姿を隠しながらという条件出した。


纏まっていくとバレる可能性がある為に、先にクルス達を向かわせて、最後に俺が向かった。
移動すると否や、目の前の光景に目を疑った。


「ナニコレ?」


目の前はどこもかしこもプレイヤーだらけで、池袋並みの人の寿司詰が起きていた。
取り敢えず俺はアスナが居る血盟騎士団のロビーに向かうと、アスナが壁に寄りかかりながら待っていたが俺の姿を見ると駆け寄ってくる。


「ガロン! こっちこっち!!」
「なぁ、なんだコレ? 俺とヒースクリフの決闘でなんでこんなに人が寄って来てるんだよ!?」
「うーん、多分、会計のダイゼンさんの仕業だと思うだよねぇ。ウチ、資金が常にギリギリだからさ」
「俺は客寄せじゃねぇ!!」
「あ、ダイゼンさん」
「いやぁ、えろう儲からせてもらってます。こちらとしては、月に一回はやって欲しいですなぁ」
「やるかバカ」


ダイゼンと呼ばれた青年は、彼の部下に呼ばれて「では、ウチはこれで………」といって去っていき、俺とアスナだけがロビーに残り、俺達もコロシアムに移動することにした。


「……ガロン、勝てる自信は?」
「さぁ?」
「さぁ……って、勝つ気はあるの?」
「勝つ気はあるが、どうなるかなんて蓋を開けてみないとわからないだろ?」
「そうだけど………」


移動しながらアスナは心配したような表情でこちらを見てくる。
俺が言おうとした時、コロシアムが歓声に包まれたおかげで、俺の声は掻き消されてしまった。


「ヒースクリフが出てきたか」
「……がんばって!」
「おう!」


アスナの声援を受けた俺は短く返事をした後、舞台に上がった。
俺が出ると再び歓声が上がる。
さて、始めるか。
〜真紅狼side out〜





二人の男が互いに対極の位置から歩き、中央で止まる。
片や、赤い鎧に包まれた男―――――ヒースクリフ。
もう一方は、黒いコートに深い蒼のズボンを身に纏う男―――――ガロン。
互いの色ですら対立した男二人が、中央まで向かうとヒースクリフが剣を抜くとそれにつられて、ガロンはコートの中から一振りの刀を取り出して構える。
すると、観客の声も次第に静かになっていき、最後は静寂が訪れた。


沈黙が場を支配していたが、互いが機微たる動きを見せた瞬間、二人は跳躍して己の武器をぶつけ合う。
剣と刀の鍔迫り合いが続くが、ヒースクリフが左手に備え付けられている楯をガロンに向かって殴りつけようとするとするが、ガロンはそれに気が付いたのか、鍔迫り合いにワザと負けて弾き飛ばされる反動を利用して、距離を取る。


ヒースクリフはすぐに距離を詰めてくるが、ガロンは自分の間合いに入ってきたヒースクリフに向けて横に一閃!
剣で受け止めていたがその一撃は重かったらしく、若干ヒースクリフの右足が僅かに浮き上がりかけた。
その事実を知ったヒースクリフはなんとかいなすことに成功し、今度はヒースクリフが距離を取った。
一進一退の攻防で、観客全員が食い入る様に見る。
誰もこの決闘を一瞬でも見逃さない為に、瞬きをしていない。


そして、再び二人は加速し互いの武器をぶつけ合う。
二人の武器がぶつかり合う度に、火花が散ってる様な光景を錯覚させる。
それほどまでにこの決闘はリアルに近いモノとして感じられた。
技のモーションやソードスキルは一切無く、ただただ“目の前の敵を斬る”というその目的に徹した剣戟音がこのコロシアム内を響きかせる。
もう何度目か分からないが再び距離が開くと、二人は会話していた。


『………ガロン君、二刀流できたまえ』
『そう急かすなよ、ヒースクリフ。これからちょっとした曲芸を見してやる。ちょっとは楽しめ』


そう言ってガロンは、空いてる左手にもう一振りの刀を握り始めた。
そこから始まった戦闘は、今までの“SAO”の常識を根本的に覆すような戦い方だった。
最初は二刀による連撃だったが、その攻撃が通らないと判断したガロンは距離を離しながら、持っていた刀を手放しコートの中に両手を隠す。
そして、次の瞬間、手に持っていたのはなんと槍だった。
両手に槍を手にしたガロンは、向かって来るヒースクリフに対し刺突による迎撃態勢を取った。
ヒースクリフは楯でなんとか一方は防ぐが、もう一方の攻撃にも対処するがそれでも防ぎきれず、思わず後退した。
後退したヒースクリフに追い打ちをかける様に、ガロンは距離を詰める為に迫るが、またしても武器を手放し、コートの中に両手を隠す。
今度現れたのは、“斧槍”(ハルバート)で両手を叩き付けるように振り下ろす。
そんな一連の流れがしばらく続いた。


ありとあらゆる刀剣類が出現し、それを手足の様に操りヒースクリフに襲い掛かる。
コロシアムのフィールドは、ガロンが出現させた武器で覆い尽くされ、刀剣の見本市と化していた。
その型にハマらない戦い方に“あの”ヒースクリフも次第に険しい表情が帯びていた。
しかし、互いに決定打に勝る一撃が入っていない。
ガロンの“真絶・二刀流”による幾千もの連撃もあと僅かというところで防ぎ、躱されており……………また、ヒースクリフの“神聖剣”も躱し、いなされていた。


ガロンが今握っているのは、短剣だった。
黒と白の短剣で、陰陽玉を浮かび上がらせるような短剣だった。
今までの武器と違い、今持っている武器は小回りが利くおかげで、今回の決闘の中でもっとも手数が多く、また素早いモーションが展開されていた。
そして………………………………






遂にガロンの黒の短剣がヒースクリフの顔を捉え、誰もが『長い戦いに決着がつく………!』と思った矢先に、「カンッッッ!」と金属音らしいエフェクトが響く。ヒースクリフの楯が間にあっていたらしく、それと激突した為に音が発生していた。ヒースクリフは険しい表情をしながらガロンを吹き飛ばす。
ガロンは着地に失敗したのか、地面に膝を付けながらヒースクリフを険しい表情をしながら睨む。


観客には先程の一瞬の攻防に何が起こったのか分からなかったが、ガロンが膝を着いてる所から「負け」と判断したらしく、溜まっていた歓声が湧き上がった。





〜アスナside〜
歓声が上がった瞬間、私はコロシアムに入り、ガロンの傍に駆け寄った。


「ガロン!!」


声をかけたにも関わらず、ガロンと団長は互いに険しい表情をしながら睨み合っていた。
勝負が終わったのに、この場だけ未だに緊張が続いていた。
そしてガロンが声を出そうとした瞬間……………


「お……………「―――この勝負は引き分けだ、ガロン君」……………」
「………後ほど、追って連絡する」


団長はそう言って去っていった。
団長もガロンも険しい表情のまま、この決闘は幕を閉じた。
〜アスナside out〜


二人ともどうかしたのかしら。




―――あとがき―――
この話だけは、何度も書いては消すの繰り返し作業でした。
これで一つの山は越える事が出来ました。


途中のsideなしは、第三者の視点からです。
どう表現していいか、分からんです。
なにか良い表現はないですかね?

ついでに作中に出てきた真紅狼が取った武器切り替えですが、あれは『ソードアート・オンライン プログレッシブ』に出てくる“武器切り替え”(クイックチェンジ)を利用している様に、観客達には見せていますが、実際にはコートの奥に“王の財宝”(ゲート・オブ・バビロン)を展開している為、次々と武器を取り出す事が出来てます。

そして、最後のやり取りはだいぶ省いてしましましたが、次回に持ち越しという事で。

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