第六話 ボス攻略
〜真紅狼side〜
ボス攻略後、十四階層のホームでゆったりと一日を過ごしていると、数件のメッセージが届いた。
pipi………!
機械音が鳴り響き、内容を見ると予想通りのメッセージだった。
送り主はアスナ、キリト、クライン、エギルの四名だった。
「十四階層に居るんだけど……」とアスナのメッセージには書かれていたので、「一際大きな水路の端……」と書こうとした時、戸を叩かれたので、ドアに向かうと……………
「はいはい、どちらさん?」
「………えへへ、来ちゃった♪」
「………え?」
「「「俺達も居るぜ!」」」
「………はい?」
「「「「お邪魔しまーす!」」」」
「オイコラ、ちょっと待て!?」
人の家にズカズカと入る四人組。
さっきのメッセージから5分も経っても無いぞ?!
どうして分かったんだよ!!?
「お前等、どうしてここが分かった?」
「……私の勘でここまで来たの」
女のカン、KOEEEEEEEEEEEE!?
「なんも出せないが勘弁してくれ。で、聞きたくてここまで来たんだし、さっさと話すとしようか」
「そうね。改めて聞くわ、ガロン。………キマイラを倒した時のあの槍の動きは何?」
「お前等は“神話”って知ってるよな?」
「「「「え/はい/なんだって?」」」」
「神話だよ、神話! ギリシャ神話とか北欧神話とか知ってるか?って聞いてんだよ」
「ああ、まぁ、それなりに知ってるが………それがあの槍と関係あンのかよ?」
「大いにあるぞ、クライン。あの槍はケルト神話の英雄クー・フーリンが持っていた魔槍『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』だよ」
そう話すとクライン、アスナ、キリトは頭を傾げていたがエギルだけは驚いていた。
「なんだと!? あのゲイ・ボルグだと!?」
「エギルは知ってる様だな。なら、知ってるお前ならゲイ・ボルグの力は知ってるよな」
「ああ、ゲイ・ボルグの能力は因果逆転の槍」
「エギル、因果逆転ってどういうことだよ?」
「いいか、キリト。あのゲイ・ボルグは原因と結果が逆転するんだよ。つまり、“相手を刺すという原因”よりも先に“相手の心臓を穿つという結果”が先に来てしまう為、本来なら【原因】>【結果】の構図が【結果】>【原因】になっちまうんだよ」
「………避けれれる方法はないの? ガロン」
「無いな。心臓を穿たれるという未来が確定しちまってるため、避けることはまず不可能だ。食らいたくないなら、運命に干渉するか、自分の運の強さを信じるしかない」
エギルと俺で槍の力を語り終えると、アスナ、キリト、クラインは黙ってしまった。
エギルもつられて黙る。
「まぁ、そんな所だ。質問はあるか?」
「「「「………………」」」」
四人の沈黙が凄まじく重い。
特にアスナなんか、じとーっとこちらを睨んでいた。
「………ガロンはまだ何か隠していない?」
「何をだ?」
「何か重要なことを私達に隠してない?」
「………いや、別に?」
「怪しいな〜?」
おおぅ、すげぇ疑われている。
なら、俺も少し反撃をしようかね。
「そういうアスナだってこの槍が気になるからといって、本当にここまで来るなんて……………俺に惚れたか?」
「な、なっ/// ち、違うわよ!!」
勝った!
そして、可愛いなオイ。
クライン達は見事に空気化してた。
すると、キリトが立ち上がった。
「ガロン、話の方有難う。俺はもう行くよ」
「そうかい。まぁ、俺もココうっぱらって攻略に戻るつもりなんだよ。最低でも今日で五、六階は登りてぇからな」
「「「「一日で五、六階も登る!?」」」」
「なんか、おかしいこと言ったか?」
「いやいや、普通一回昇ったら休むだろう!?」
「何言ってんだ、クライン? 俺は十階層まではこのペースだぞ? 十四階層に来てから、休暇と言う事で一カ月ほど休んだが、それも今日で終わり。また、攻略の日々に戻るだけさ」
「それは身体や精神を削る行為だ、止めとけ!」
「いいんだよ、これが俺のペースだから」
そう言いつつ、必要な物をアイテムストレージに収めていく。
そして、【黒獄・纏】と【常闇】を装備した後、最後の確認をした後、アスナ達を見た。
「さて、俺はダンジョンに向かう為、ここを売るから出た出た」
アスナ達は、言われるがまま出ていき、俺はNPCと手続きし、鍵を返した。
そして、俺はダンジョンに向かって歩いていく。
「また逢える気がするし、お互い頑張ろうや。じゃあな」
俺は、後ろを見ずに手を振ってその場を後にした。
〜真紅狼side out〜
〜アスナside〜
ガロンの槍の内容を聞いて、あの槍が神話で使われている伝説の武器なんて全く知らなかった。
しかも、“因果”と言った概念に干渉する武器なんて、このSAOに本当に実在する武器かしら?
なんか怪しいのよね、ガロンの武器や装備って最初から私達の理解の範囲を超えた代物ばっかり、所有していて。
すると、ガロンから予想外の言葉が飛んで来た。
「…………本当にここまで来るなんて……………俺に惚れたか?」
「な、なっ/// ち、違うわよ!!」
そんなわけあるわけないじゃない!
ちょ、ちょっとはキマイラと戦っている姿を見て、カッコ良く見えたけど…………///
………って、私は何を思ってるの?!
私は頭を振って、思考を止めた。
それでも、私の顔は真っ赤で暑かった。
すると、ガロンから信じられない言葉が聞いた。
『最低でも今日で五、六階は登りてぇからな』
最低でも五、六階登るって………バカじゃないの!?
どういう神経してんのよ!?
狂気の沙汰よ、そんな行動!!
私達は、必死に止めたがガロンはそれを優しく受け流し、私達の元から去ってしまった。
「ガロンも行っちゃったし………私もギルドに戻るわ。皆は?」
「俺もギルドメンバーが心配なんで………」
「俺は、フィールドに行くよ」
「俺は、宿探しだな」
「そう、じゃあ、ここでお別れね。………またどこかで逢いましょう」
「「「ああ/おう!」」」
そして、私達はそれぞれの道に向かって歩き出した。
〜アスナside out〜
〜真紅狼side〜
俺は四人と別れてから、三日。攻略組の中でもトップスピードで進めていき、
現在、俺は二十五階層のボス部屋の前まで足を進めていた。
「ここが、ボスの間か」
俺は一呼吸してから、ボス部屋の扉を蹴っ飛ばした。
勢いよく扉は開けられ、フィールド内に扉の開く音が響き渡った。
今日の俺の得物は、名も無き石剣。
英雄ヘラクレスが持っていたあの石剣だ。肩に担いで、堂々と部屋に入ると奥から巨大な影が姿を現し、それと同時にボス部屋の明かりが付いた。
「おいおい、マジかよ」
ボスの姿は、巨人だった。
巨人だったのだが、どうやら双頭の巨人で他のボスよりも倍近いデカさだった。
そしてボスの頭にカーソルが表示され、ボス名は【ツイン・オーガ】と表記されていた。
ツイン・オーガは俺の姿を見て、咆哮を上げながら右手にモーニングスターを左手に巨大な円月刀を持って襲い掛かってきた。
俺は石剣を破棄し、干将・莫耶を投影した。
「投影、開始!」
右手のモーニングスターが振り下ろされ、俺に直撃する直前で、左手の干将で受け止めた。
ガギィン!
強烈な一撃に、多少余波ダメージを受けるが、両手でモーニングスターを押し返す。
モーニングスターが返されると、今度は巨大な円月刀を水平にして斬りつけてくる。
俺はその攻撃をしゃがんで避け、隙を逃がさず反撃に出た。
懐に潜り込んだ俺は、飛び上がるバネを利用して斬りつける。
攻撃力の低さを手数と機動力で補い、ときおり敵の攻撃を回避しながら、突き、斬り上げ、斬り下げ、弾きからの反撃を繰り返していく。
「ガァアアアアア!」
「やっかましい! 口が二つもあるせいで、大音量なんだよ! 大声で叫ぶんじゃねぇ!」
俺はデータ上のボスに怒鳴った。
そのまま腹の辺りまで潜り込み、莫耶で三角形を描くように三連突きを放ち、干将で中心を穿った。
「グォ………ァァアアア」
「ん、なんだ?」
残りのHPバーが三本目に突入すると【ツイン・オーガ】の様子が変だった。
体を丸込める様に、蹲っていたがブチブチッ!と肉の食い破る音共に姿が変わった。
「オオオオオオオオッ!」
「なっ!?」
背中の辺り、ちょうど肩甲骨辺りから新たに二本の腕が生えたのだ。
しかも、二本の角が三本になっていたのである。
「なんつーか、ドラ○エのパズズとシドーを混ぜた感じだな」
そして、【ツイン・オーガ】の猛攻が始まった。
前の二本は相変わらず武器を掴んでいたが、新たに生えた腕の方には武器は無く、拳を握りしめている所を見ると、格闘戦をメインに置いた戦いと予測したが注意は払っておくことにした。
そこからは、前半戦と変わらず武器を弾いては反撃という流れだったが、少し違和感を感じた。
「オオオッ!」
【ツイン・オーガ】は円月刀を振り下ろしてきたので、受け止めて弾こうとするが、受け止めた瞬間………
ガ……ギィィン!!
「ぐっ!!?」
ピシィ………!
先程より力が上がっているのか、弾くのが辛くなったのだ。
まさか、このボスHPバーが半分以下になると、姿変化+能力変化を起こすボスなんじゃ………?
………というか、なんか罅が入る様な音が聞こえたぞ?
俺はその音を不審に思いながら、モーニングスターの攻撃を左右に避けて、円月刀を振り下ろしてくるのを待った。
隙を付け入ろうにも、モーニングスターを振りまわしているせいでうかつに飛び込むことが出来なかった。
鎖を切ろうと思ったが、しくじったら確定反撃を食らうのは目に見えているので、止めることにしていた。
その時だった、ボスが円月刀を振り下ろしてきたのだ。
「ウォォオオオ!」
ギィンッ!
「力………上がってんじゃねぇか………! ぐぅっ!!」
次の瞬間、異音の正体が分かることになった。
バキィン………!
手に持っていた干将・莫耶が砕けたのだ。
「なに!?」
罅が入るなんて、構造に問題があったということとそれほどまで【ツイン・オーガ】の力が上がっていることを示している!
早く決着を付けないとマズイな。ジリ貧になったらこっちの負けは確定だ。
そうこう考えているうちに、次の危機がやってきた。
新たに生えた腕の一本が拳を握りしめて、ストレートを放ってきた。
気付くことは出来たが、投影して防御するまでに時間は無く、“王の財宝”で石剣を取り出すまでには一撃を確実に貰っている状態だったが、そんな中、【ツイン・オーガ】の隙が生まれていたのに気付き、俺は拳を握り格闘スキルを放った。
格闘スキル:絶!激拳
「ゥオオオオオオオ!!」
ゴォン!
ボスの拳と俺の拳がぶつかり合い、鐘を叩いた音がボス部屋に鳴り響く。
ほんの僅かであったが拮抗し……………ボスの体勢が崩れた。
俺は決めるタイミングはここにしかないと判断し、もう一度格闘スキルを使った。
格闘スキル:爆真
「オオオオオォラァ!」
爆真はダメージを与えるようなスキルではなく、逆に自身の攻撃力を強化させる。攻撃力上昇値は50%。
そして俺はその状態で石剣を取り出し、両手で構え、“ヒュドラ”を殺しせしめた業を放った。
「是――――――即ち射殺す百頭!!」
ドッ…………ガンガンガンガンガンガンガンガァンッッ!!!!
「はああああああああっ!!!」
まるで、爆撃が行われている様な刺突音がボス部屋では収まることなく、マップにも鳴り響いているぐらいの轟音だった。
ボスのHPバーも見ずに俺は最後の一撃をありったけの力を込めて、叩き込んだ。
「はあッ!!!」
ガァァァァァン!!!!
「………ゴォ……ァァァァ……………ァ…」
最後の一撃が決まると、【ツイン・オーガ】は消える様な声で断末魔を上げ、ポリゴンがパシャンと弾けて割れていった。
「………終わったか」
自分のHPバーを見るとこのデスゲームで初めてイエロー近くまでバーが削れていた。
「なかなか手強かった。………ちょっと気を引き締めた方がいいな。おそらくキリのいい階層のボスはこういうのが待ち構えていると考えた方がいいな」
俺は終わったにもかかわらず、次のボス攻略のことを考えていた。
そんなことばっかり考えていると、目の前にボーナス画面が出ていた。
『二十五階層のボス撃破ボーナスとして………
【双鬼の剛角】・【双鬼の禍骨】・【鬼の生き血】を手に入れた』
俺はアイテムストレージにその三つのアイテムを入れると、さらにメッセージが届いていた。
『【双鬼】を撃破成功として、さらにアイテムを受け取れます!
【魔刀の製造書】を手に入れた』
俺はその特別な武器を創る為の製造書もアイテムストレージに入れ込み、ボス部屋を後にし、俺は二十六階層の土を踏んだ。
〜真紅狼side out〜
一休みすっか。
―――あとがき―――
“絶!激拳”と“爆真”はどちらもシェン・ウーの技です。
“絶!激拳”は発生が早いので、相打ちでも結構強烈な一撃となります。
ちなみに5ゲージある状態で、通常技を刺さった後から虎豹連撃(スーパーキャンセル。以後、scと)→爆真(ドリームキャンセル。以後、dcと)→再び虎豹連撃をやると即死コンボです。10割吹き飛びます。
原因は“爆真”の効果で攻撃力50%上昇が原因ですね。
“射殺す百頭”は皆さんお馴染の技。
士郎が何ルートかは、分かりませんがバーサーカーに対して放った技ですね。
というか、この技で殺したのって、ヒュドラで合ってましたっけ?
間違っていたら、すみません。
二十五階層のボス撃破のボーナスアイテムは、オリジナル武器として創ります。