小説『ソードアート・オンライン 第一章 〜アインクラッドと蒼騎真紅狼〜』
作者:大喰らいの牙()

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第七話  特殊クエスト


〜真紅狼side〜
二十六階層の名は、クオーラル。
山岳地帯で、麓に街を展開しているフロアとなっていた。
さらには、その山岳の中辺りから雪解け水が流れており、山登りが好きな人にはココはたまらないだろう。
さらに、その雪解け水はアイテム化するらしく、分類は回復アイテムである特定のNPCに話しかけると二、三個であるがその雪解け水から精製された回復アイテムをただで譲り受けることが出来る。
しかも、この回復アイテムには複数の効果を持っていたらしく、効果はHPの全回復と全異常状態回復となっていた。
しかし、これは一人一回となっている為、何回も貰えるわけではないらしい。
二十五階層のボスを攻略してからすでに四日が経ち、その間に俺はいまだ二十五階層のボスを攻略出来ていないプレイヤー達の為にも【ツイン・オーガ】の特徴、行動を書き記して情報屋の一人、“鼠のアルゴ”にメッセを送った。
そんなことをしてたら日が経ち、すでにこのフロアで四日を過ごしていた。


「明日の朝一番には攻略に戻るか」


俺は間借りしている家の屋上で呟き、新聞を広げる。
このSAOの世界では“新聞”というのがあるが、現実世界のとはまったく仕様が違う。
なんせこれは、他プレイヤーが情報を集めて編集して創った物を配布しているもので、内容はギルドの紹介や攻略組の中でも上位のソロプレイヤーの紹介、あとは最近発見されたスキル、ボス攻略の情報などと攻略に手助けになる物から娯楽まで扱っているらしい。


「さてはて、今日はどんな内容が載ってるかな?」


俺はゆっくりと眺めてると………一つ目についた記事があった。


「何々? “()、壊滅状態!?”あの()が壊滅ねぇ………」


記事の内容を見るとこう書かれていた。


『皆さんも知ってると思うが、第一階層の【黒鉄宮】を拠点とする巨大なギルド――()が二十五階層のボス攻略に挑んだが、無残に惨敗し、さらには()の中でもハイレベルのプレイヤーが数十人消滅した。今まで()の活動方針は“治安維持”の一つだったが、いつのころか“治安維持”だけではなく、“徴収”や“フィールドの長期占領”といった他プレイヤーに対して被害を与える行為をしてきた。その行為に非難すると、彼等は「民衆の為に働いている! それ故、キミ達には払う義務がある!!」と自分達があたかも上の立場にいる発言をした。現在、()のトップには二人おり、一人は穏健派のトップ―――シンカー。実質()の創設者である。もう一人は途中から入ってきた過激派のトップ―――キバオウ。穏健派のシンカーが大人しい事をいいことに過激派のキバオウが発言力を高めて、好き勝手やっていた………が、あまりにも攻略を疎かにしていた為、穏健派の者たちから追及されてこのような大惨事を引き起こしたのである………』


キバオウって、確か十階層で俺にたかってきたあのバカか。
まぁ、ああいう性格だ。
いつかはやると思っていたんだが、こうも早くも来るとはなぁ。
俺はやれやれ………と思いながら、他の記事を読もうとしたら続きあったことに気が付き、さらに読むことにした。


『………また、この事態が起きる前日に情報屋の“鼠のアルゴ”に二十五階層のボスを記した情報が届けられていたことが分かった。この情報を送ったのはソロプレイヤーにして、攻略組の中でもトッププレイヤーであるガロン氏から送られてきたものである。彼の情報には二十五階層のボスのことが事細かく書かれており、最後の一文に「二十五階層のボスを攻略する者は、必ず読むべし。相手は生半可な相手ではない」と必読することを勧めていた。だが、キバオウ氏は何故か読むことを嫌い、その情報を投げ捨てて特攻させたのである。キバオウ氏のコメントは「ガロン、アンタを必ず牢獄に叩き込んでやるわ!」と逆恨み発言を言い放った』


………おおぅ、とんだとばっちりだ。
俺はちゃんと読めって書いて送った筈なのに。
まぁ、今回に関して俺は関係ないな、アイツが情報を投げ捨てたのがいけないんだ。
俺は、新聞を破棄し、この前フィールドで発見した隠れ採掘場に向かうことにした。
NPCと話をして、クエストが発生したからである。
どうやら、そこの採掘場の奥地にはレベルは低いものの希少鉱石をドロップするモンスターが居て、それから獲れる鉱石はボス攻略成功の証として手に入った【魔刀の製造書】に必要な鉱石らしいので、早速向かう事にした。
〜真紅狼side out〜


〜アスナside〜
私達【血盟騎士団】は二十五階層に到達し、ひとまず休憩することとなった。
現在、二十五階層の街ではあちこちでガロンがボス攻略の情報誌が無料配布されていた。
私もそれを手にした。


「………()を壊滅に追い詰めた相手をガロンは一人で突破するなんて、やっぱりガロンはまだ何かスキルを隠しているっぽいわね」


じゃなきゃ、ギルドにも入らず一人で五、六階層も進み、ボス攻略に成功する筈がない。
私は、今度出会った時に問い詰めることを決めて、自分達の目の前に置かれている状況を確認する為にガロンが残してくれたボス情報を閲覧した。


「名前は【ツイン・オーガ】。双頭鬼人で巨人タイプか………」


映像に映っている限り、武器は円月刀とモーニングスターだが、とてつもなく巨大だった。
………となると、戦法は“盾装備”(タンク)を五人ぐらい並んでもらいながら次々と“スイッチ”していくしかないわね。
いくつかの戦法を頭の中で描きながら、さらに情報を読む。


「『またHPバーが半分を切ると行動・姿形が変化し、ステータスも上昇する。回避力や瞬発力に自身が無い者は絶対に一人で向かわず、組んで戦う事』………こんなこと書いちゃっても、書いた本人が一人で突破しちゃったら現実味がないと思うんだけどなぁ………」


私は再度、ガロンのことを呆れた。
よく情報を読みながら、ギルドに戻りボス攻略の為に作戦会議を開くことにした。
〜アスナside out〜


〜真紅狼side〜
今、俺は鉱石を掘っているんだが………なんだろう、誰かに凄いバカにされた気がする。
ともあれ、俺は掘りながら奥に進むと少し開けた場所に出た。
その瞬間、モンスターの視線を感じた。
俺は、周囲を見渡すと真正面に手のひらサイズぐらいの小さな鬼が居た。
いや、鬼とは少しばかり違う。
見た所、鬼だが鬼にしては愛嬌があり顔は犬にそっくりだ。
確か“犬鬼”(コボルド)と呼ばれていた筈………
しかも、モンスターの筈なのだが、おかしいことにHPバーが出ないどころか、話しかけられてきた。


『よく来たど、冒険者。おで達は“犬鬼”(コボルド)。ここの採掘場を棲み処にしてるど。ところで、冒険者は石・鉄鉱石・金・銀×10を持っていないか? もし持っているなら、おで達が持ってる希少鉱石と交換しないど?』


俺はアイテムストレージを開き、見てみるとそれぞれ50個ずつ持っていたので、“交換に出す”のボタンを押す。
すると、“犬鬼”(コボルド)達は喜び、代わりに希少鉱石を差しだしてきた。


【“犬鬼”(コボルド)達から“ブラックダイヤモンド”を5個受け取った】


そして会話が進む。


『冒険者、有難うど。また持って来てくれたら今度は違う希少鉱石を渡すど』


犬鬼”(コボルド)達は棲み処に戻っていき、そして最後は居なくなった。
俺は採掘場を出る為に出口まで戻った。
………これって、クエストじゃなくて特殊クエストだったんじゃないか?
“クエスト”には二つ種類があって、一つは通常の討伐クエ。もう一つは“特殊クエスト”である。
“特殊クエスト”はNPCや特定の手順を踏んでから発生するクエストで、全てが討伐クエではない。このような交換クエストもあるのだ。


「まぁ、たまには、こういうクエストも悪くないかな」


常にモンスターとの戦いばかりではなく、このようなほのぼのとしたクエストもまたアリだなと思いながら俺は街に帰った。
〜真紅狼side out〜


さて、攻略を再開しますか!



―――あとがき―――
今回は短くてゴメンナサイ!
今回はほのぼのをテーマにしてみました。
デスゲームという中で、こういうクエストもアリなんじゃないか?と思って、こういう話を書きました。

それと、雪解け水がアイテムになる。という話しはRPGにはあり得そうな話だったので入れてみました。
あと、もしルビ振りがミスってたらすみません。
なかなかうまくいかないんですよねぇ。



ここから、小話なので無視してもいいですよ。
“織田信奈の野望”が終わっちゃいましたねぇ………第二期やらねぇかな。
というか、書きたいなぁ。実に書きたい。
ぶっちゃけると、バカテスを書く前から信奈の方を書こうと思っていたんですよね。
どうしよっかな………

-7-
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