第20話
「やぁ、これで会うのは初めてだね。何でも屋「エリス」だよ。」
今、俺は依頼でとある管理外世界に来ている。依頼主は高町だ。
「西条君、その口調は何なの?」
「僕は依頼中はずっとこの口調だから。後、依頼中は僕の事は「西条」じゃなくて「エリス」って呼んでね。」
「どうして?」
「正体がバレたりしたら、色々面倒だからだよ。」
「分かったの。エリスくん。」
「じゃあ、今度は僕から質問。ロストロギア回収なんて一人でやる任務じゃないだろう?どうして一人で?」
「そうなんだけど・・・他に出来る人がいなかったらしいの。」
・・・まぁ、警戒位はしておいて損は無いだろ。
「じゃあ、今回のロストロギアはどんな効果があるの?」
「そこらじゅうの動物を食べて魔力に変換して、色々な魔法を使ってくるらしいの。」
「分かった。じゃあ僕が前衛をやるから高町さんは後衛で援護をお願いして良い?」
「勿論なの。」
そう言って俺はロストロギアのある方へ向かって行った。
◆
「あれがロストロギア?」
「・・・そうみたいだね。あれは危険そうだな〜。」
そう言う俺達の見る方向には、背中から大量の砲身が生えている、十メートルはある巨大な狼がいた。
「どうする?エリスくん。」
「とりあえず、さっき言った作戦で、それが駄目だったら臨機応変に動く。って感じかな。」
そう言うが早いか、俺は飛び出す。狼が気付く前に懐へ入り、顎を蹴り飛ばす。そして、
「そりゃ!」
という掛け声と共に脳が揺れて、平衡感覚の取れない狼に剣で斬撃をいれ、意識を刈り取る。
「ふぅ、そこまで強い相手でもなかったね。高町さん、封印宜しく。」
「私、全然やることがなかったの・・・」
高町は何故かがっかりした様子でロストロギアを封印する。
封印された後には、赤みがかった青に光る、手のひら位の大きさの球体が残った。
「これで終わり?ずいぶん呆気無いなぁ。」
「ロストロギアを魔法も使わずに圧倒するエリスくんがおかしいだけなの・・・」
「そう?まぁ良いや。早いとこ回収し・・・!」
そこまで言って、こちらに向かってくる魔力弾に気付く。
「エリスくん?」
そう問いかけてくる高町を無視して、高町の方に向かう魔力弾を切り捨てる。
しかし、その間にもう一つ放たれた魔力弾が先ほど封印したロストロギアに命中する。
魔力弾が当たったロストロギアは宙に浮かび上がり、無差別に攻撃魔法を撒き散らす。
「眼」で見ると、それは変換してきた魔力を撒き散らし、魔力が無くなると大規模な爆発を起こす物であるらしかった。
「あれをこのまま放置してると危険みたいだ。僕があれの暴走を止めてくるから高町さんは援護をお願い。」
「一人じゃ危険だよ!ここは二人で・・・」
「二人で行っても魔法の量は変わらないよ。なら一人で行って残った方が援護をした方が被害が少ない。」
「なら私が・・・」
「自分の得意分野を思い出して。君は遠距離の方が得意だろう?だから君に援護は任せるよ。」
「・・・分かったの。気を付けてね。エリスくん。」
そう言い終わらない内に俺は飛び出す。飛んでくる魔法を避け、時には切り捨てながら球体の元にたどり着く。
俺は直ぐに球体の「式」を見て、それに手を突っ込み、暴走する前の物へと変更していく。
「眼」にはこちらにくる魔法が示されるが、気にしない。
変更し終わると、球体は地面に落ち、展開された魔法は消えていく。
「ふぅ、後は魔力弾を撃った奴は・・・さすがに逃げたか。全く、こんな迷惑な事をしたのは誰なんだ?」
「大丈夫?エリスくん。」
「大丈夫。高町さんのおかげで魔法が一発も来なかったしね。」
そう言いながらロストロギアを回収する。
「さて、ロストロギアの回収も済んだし、これで終わりかな。」
「そうだね。・・・あ!そうだ。報酬も払わなきゃね。」
「そうだな〜。じゃあ今回は、後で高町さんの魔法を見せて貰えるかな?」
「へ?そんなので良いの?」
「勿論。別にお金目的でやってる訳じゃないんだよ。それに魔法の構成を弄るのは趣味なんだ。」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ後で見せに行くね。」
「それじゃあ、何でも屋「エリス」をまた宜しくね〜。」
そう言いながら俺は転移魔法を使って、海鳴市へと戻って行った。