世界会議×神隠し編
１７１話 抜け忍×裏切り者
「で、こっちでいいの？」
「うん、例の鉱山はこの方角で間違いないよ」
「む、どうやらあれのようだな」
昨夜、刺客を撃退した私達5人は敵が次の手を打つ前に
フィナンシェの千里眼で敵の本拠地にまっすぐと向かって
今、例の権力者が所有している山が視界に入る所
所有地の境界線に到着した。
「にしても」
「これほどの規模の土地を所有とはね・・・・・」
「よっぽど悪どいことをしたんだろうね・・・・・」
土地の広大さを見た皆はそんな感想を呟き
私も「確かにね〜」と呟いて
敵は周辺にいないか
罠とか仕掛けていないかの確認で周りを警戒していると
背後からかすかな気配と視線を感じて
私は気付いていない振りをしつつ反応を待ってみると
気配はゆっくりとこっちに近づいてきた。
一応、殺気や敵意は感じなかったので少なくとも敵ではないと
私は判断したがどう対応しようか考え
とりあえず
「私達に何か用ですか？」
背後に振り返って声をかけてみることにした。
するとそこには
葉と書かれたマスクをした忍がいて
「あ、ハガクシじゃねえか
どうしたんだこんな所で？」
彼の姿を見てゴ―グさんがそう問いかけた。
どうやら知り合いみたいですね。
「で、ハガクシさんは葉隠流の忍者の人なんですね？」
私の問いにハガクシさんはコクリと頷いた。
なんでも彼はゴ―グさんの仕事仲間のプロハンターらしく
これまでに何回か一緒に仕事をした仲で
昔、私がゴ―グさんと一緒に片づけた念刀“刃鬼”事件も
彼がゴ―グさんに依頼したらしい。
当時、色々な事情で大きく動くことができなかったそうだが
そして、少し話が脱線したが
彼がここに来た理由だが
今回の事件の首謀者であるこの鉱山の土地の所有者の領主が
何人か雇っているらしい念能力者の忍は
元同胞の裏切り者の抜け忍らしく
彼はその裏切り者を始末にこうしてやって来たそうだ。
あとついでに失踪者救出と外道領主の抹殺も含めて
それらの話を聞いてお互いの情報交換をして
目的は同じだということで私達は
協力し合ってこの件を攻略しようと結論になり
敵地に突入する前に
早速、作戦会議をして
夜に襲撃を仕掛けて混乱の隙に救出という流れの計画となり
私達は準備に取り掛かった。
鉱山の麓にある屋敷
その屋敷で今回の事件の元凶である領主や
その部下・仲間・共犯の代官や商人達は大笑いしながら
酒を飲んで目の前にある宝石の山を眺めていた。
「はっはっは〜大漁大漁じゃ〜！！」
「くくく、笑いが止まりませんなぁ 領主殿」
「ああ、そうだなぁ
この宝石採掘で楽して大金を稼いで
その大金で我がこの国を牛耳ることは造作もない！」
「ええ、そうですねぇ
目の前にある宝はどう見ても兆の額に達しているほどあります
これだけあればこのジャポン所か世界中でやりたい放題できますよ」
「そうじゃな！
そう考えれば考える程
笑いが止まらん！
はっはっはっは――――っ！！」
深夜の屋敷に彼等の笑い声がいつまでも響いていた。
その頃、鉱山の坑道では
もう真夜中だというのに無理矢理連れて来られた男達が
領主の見張り監視の配下達から鞭の攻撃を受けながら
宝石の採掘のために穴を掘らされていた。
だが
「おらおら、掘れ掘れ掘れ掘れ！！
サボるんじゃねえぞ！
鞭を喰らいたくなかっ・・・・・・」
ドンッ
いきなり銃声が坑道内に響いて
それから1秒にも満たない時間に
宝石を採掘している男達に
鞭を振り回している1人の見張りの頭に風穴が空き
ドサッとその男が仰向けに
笑ったまま目を見開いたまま倒れて死んだのを見て
その場にいた者全員の時間が止まり
その間にも間髪入れずに逃げる隙も与えず銃声が響きまくり
領主の配下達が我に帰る前に全員があの世行きとなり
そして、自分達に危険を加え監禁する者達が
いなくなった今がチャンスだと
大喜びでついさっきまでヒ―ヒ―言いながら
宝石の採掘をされていた彼等はその場から逃げ始めた。
「さ〜て、ここにいた雑魚は全て片づけたから
逃げている彼等の護衛をしますか」
「これだけの騒動になったら
敵の念能力者達も動き出すだろうから気を付けようね」
自分が遠くから射殺した悪党共の死体を
ゴミでも見るかのような目つきで一瞥し
視線をすぐに逃亡している被害者達に向けて
彼等を守るために私はフィナンシェとクリネアさんと一緒に
迅速に動き始めた。