小説『国境の橋 』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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  前日から車は長い列を作っている。おまけにこのボロ橋は重量の関係で片側通行をさせているありさまだ。
 それに歩道の隔てもない橋は所々に穴が開いていた。そんな国境の橋を歩いて渡る人の列も見られる。
 沢山の車が往来する橋は川幅が百メートル両側の土手の高さに橋を掛けるから全長は倍少しメートルといった処だろうか。
 それ程大きな橋ではない。国内ではもっと大きな橋を造って来たからやや物足りないが。だがこれは手始めである。

 この橋が予定通り完成したら次はラオスとタイを流れる大河、メコン河へ架ける橋を手がける話も浮かび上がっている。スタッフも裕輔も夢は大きく開く。
 この川の増水はどうかも調べる必要がありそうだ。日本と違って雨季には集中豪雨も考慮しなくてはならない。
裕輔は早くも橋の工事を行なう上で工事状況を想定し、この土地の雨季にどれほどの雨量になるのかデーターを調べた。

  川の水はやや茶色に濁っているように見えるが、洗濯などをしても問題はないそうだ。
 日本のように川は透明とは限らない。よくそんな濁った川で洗濯や野菜を洗えるのか不思議だが。
 元々ラオス、ベトナムに限らずタイ、マレーシアも川は濁っている。土も同様に赤茶色が普通だ。
 日本なら土の色はまず黒で、川の水は透明と決まっている。

 色は茶色だが洗濯やシャワーに使うし野菜なども洗う。ただそのまま飲めば一発でゲリをする。
 出来ればこの国の人々に日本の川を見せてあげたい程だ。そして目の前で川の水を飲んだら驚くだろう。
 日本は水に恵まれた国である。恐らく川の水をそのまま飲める国は数少ないだろう。
 ただ何処の国でも、その環境の中で生活している。特に不便は感じないそうだ。

それを裏付けるように濁った川で、確かに近くでは子供達が川で遊び、洗濯している主婦の姿が見えた。
 橋を架けるにあたって当分の仮住まいとなる宿舎に案内された。
 国境に架かる橋だから近辺の警備は厳しいかと思ったら、警備兵ものんびりして警戒心も見られない。

 しかし此処にも日本の影響が残されている。第二次世界大戦でベトナムもラオスも日本の占領下にあった。
 中国、韓国ほどではないが、日本人を良く思っていない事も確かである。
 ただ日本は経済成長と共に東南アジア諸国に多大な寄付をして来た。今回もその一環である。
 今では日本人には、なんの偏見を持たずに受け入れてくれるようになった。
 そういう日本人はと云うとアメリカを憎んではいない。良いか悪いか過去を振り向かないのが日本人なのだろう。

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