小説『国境の橋 』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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  裕輔達は此処に橋を造りに来たが、第一優先として両国との親善を努めなくてはならない。
 親善を兼ねた事業である為、工事のイザゴサでラオス、ベトナムとの親交を損ねてならない。政府からのお達しである。
 日本人スタッフは宿舎へ案内された。ただ宿舎とは名ばかりの古びた平屋の鉄筋作りの家だった。
 勿論エアコンなんて洒落たものはない。扇風機があるだけだ。かつて国境を警備する警備隊宿舎が使っていたようだ。

 皮肉にも近くには真新しいラオス国境警備隊の宿舎があった。
 だが国力の違いか、川を超えたベトナム側の国境検問所や国境警備隊の建物は数倍立派だった。
 監督の平井は両方の宿舎を見比べて苦笑いして、諦めたように宿舎に入った。
 到着するとラオス側の政府の人間が出迎えてくれた。日本側責任者の平井監督と握手を交わした。

 今回の工事はラオス側代表して一括した窓口になるそうだ。これは日本政府から要望である。
 窓口は一本でいい。いちいち双方の意見を聞きながら工事にあたっては纏まる話も纏まらなくなるからだ。
 平井監督とラオス政府の責任者の間に入ったラオス人で男の通訳が説明していた。
 ラオス側で用意した人員は、男の通訳が二名と女性が一名だ。
 他に現地作業員募集を担当する世話係り兼、ラオス政府との連絡等担当する青年が一人、宿舎の食事や掃除洗濯する女性が四人の計八人だ。

 男の通訳は主に現場作業で通訳にあたり、二十五?六才くらいの若い女性は事務的な通訳を担当する事なになっているらしい。
 現地で準備するのは主に橋建設の経験した作業員を中心に募集する。
 測量機器やパソコンなどは日本から持って来たが鋼材、セメント、重機は現地の物を使う事になっている。
 作業員や鋼材などが揃うまでは半月くらいの日数を要する。
 その間に測量や届いた材木や鋼材の点検、重機の点検をしなければならない。
 地元民を信用しない訳じゃないが、適切な材料が揃わないと立派な橋も出来ない。

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