小説『国境の橋 』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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  いま思えば日本人スタッフは仕事以外プライベートな時間は殆ど取れなかった。
 観光なんて甘え考えだと思っていたが、彼女のおかげで観光気分を味わえそうだ。
 その彼女がラオスの首都ヴィエンチャンを車で案内してくれた。なんと彼女の自家用車だという。
 日本とは経済事情が違う、この国で若い女性が自分の車を持っているは珍しいそうだ。
 こんなに若くて車を持てるのだから裕福な家庭で育ったのかと思っていた。

 首都ヴィエンチャンは世界でも有名な河、メコン川添えに出来た街である。
 デーンサワンとは反対側にある為、観光を兼ねたら往復一日が必要だ。
 観光はアンコールワットが主だが、街は本当に首都なのかと思わせるほど乏しい建物が多かった。
 せっかく案内をしてくれたビオランに申し訳ないが、そんな表情は押し隠して風物の三輪タクシーに乗り、町をひと周りしてから食事をした。
 野外テントを張った店には豚、鶏、スープに細い米を合わせた物を日本円にして七十円ほどで食事が出来るが日本人だったらタクシーも食事も二倍から三倍はふっかけられるだろう。
 すべての値段は交渉で決まるらしい。慣れない日本人には不便でならないが、その点ではビオランに感謝だ。

 日本を十月末に此処の現場に来たが、ラオスは六月から十月にかけて雨季で三月から五月は夏季にあたる。
 二月から四月までを乾季と呼んでいる。ここに来てひと月半が経つ、計算から行くとあと半年で雨季に入る予定だ。
 その雨季の前に地盤と橋台作りを完成させたい。いよいよ本工事が始まった。
 監督を始め日本人スタッフは気合が入ったが、現地の人間の働きぶりには驚いた。
 始業時間は守らない、しかも休憩時間は仕事が途中だろうと勝手に休憩に入ってしまう。
 途中で止めるなと言ったら、今度は三十分前には次の仕事に手を付けようとしない。

 まだ時間があると言うと昼休みまでに終わらないから、やらないと言う始末だ。
 監督や先輩が怒ってラオスの責任者に文句を言ったら、ここは日本と違う、それが当たり前の事で強引にやらせたら暴動が起きるとまったく習慣の違いとは恐ろしいものだ。

 祐輔は思った。国が違えば人種も違う当然日本人の考え方を押し付ける事は間違っているのかと。
 日本では上司に嫌われない為に、休憩を削っても仕事を止めないし、言われなくても残業もする。
 しかし彼等は始業時間に遅れても、都合の良い規則だけは主張する。
 お国柄の違いにイライラする日々が続いたが、度々ビオランとデートするようになり、その時だけは癒された。
 祐輔はビオランに尋ねた。そして現地の人の考え方の違いも教わった。

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