小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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夏と言えばたくさんの物が思い浮かぶ。
スイカ、花火、海、セミ、かき氷、水着、日焼け…………
特にあれじゃないか? 男子とかは夏と言えば水着は必須じゃないか?
海水浴に女に水着。これはもはやセットと言っても過言ではないであろう。
毎年、夏に海で男子を見つけると、大概の奴が女目当てだと思え、女子軍。
ん? 俺か? そりゃ俺だって求めるよ。
もちろん海だって行くさ。ただ、邪魔な奴らがいるからな……はぁ。



♯11.海×誓い



あのプレゼント事件後の数日たったある日。
もう後3日もすれば夏休み突入だ。そんな3日前の土曜日。俺は、いや俺たちは海へとやって来た。

「うおおおおっ!! いいか諸君、俺たちの目的は何かを言ってみろ!」

はぁ。
そう、俺たちと言うのは、考、雄志、健也、そして俺と言う男子軍で来ているのだ。
ちなみに今大声を上げたのは考だ。コイツは、いやいい。めんどうくさい。
後3日も経てば夏休みにもなると言うのに何で今日行かなければならないんだ。
と、疑問をぶつけては見たものの、奴ら3人そろって「今すぐだ!」と言って引かなかったんだ。理由にはなってないと思うが。

「ハイ、隊長! 我々は、女の子と仲良くなるために来たのであります!」

と、威勢よく声を張り上げる健也。

「俺は別に来たくて来たわけじゃない。お前たちがどうしてもと言うからだな……」

と、まるで隠すように喋る雄志。おい、お前鼻の下伸びてるぞ。

「氷河! 貴様と言う者は何もしゃべらない気かっ!? それとも来たわけが分かっていないようだな!」
「隊長、殺ってもいいですか?」
「じょ、冗談だ。ハハ……」

って、下がるのかよ!
たったあれだけの一言で。そんなのでは指揮が取れないんじゃないのか?
まぁ、アイツ等の言っている通り、どうやら女目当てで来たらしい。そんなに人もいないだろうと思いながらも、よく見れば中々いるものだ。
カラフルな水着で半数がビキニと言う、高校生としては普通なんだろうが、あんまり際どいと目線が、な。
と、俺も一体何を考えているのだ、やれやれ。

「それでは、これより突撃準備に入る。各自、用意はいいか?」
「イエスマイロード」
「イエスユアハイネス」

いやどっちかにしろよ……。

「氷河! 声が聞こえんぞ!」
「へいへい」

と、素朴に返す。
アイツら3人は気合が十分に入っているだろうが、俺は今無気力だ。
正直、早く帰りたい。
ふいに3人に目をやると、なんだあれ? なんか、敬礼してる。

「よし。それでは、全軍突撃ぃ!!」
「全軍、って言ってもたった4人だろ!」
「うるさああああい!!!」

もう我慢ならん。俺はとうとうツッコんでしまった。
いや、考のボケがマジでウザい。アイツがここまでだったとは、一体どれだけ張り切っているんだ。
考が指令を出した途端、俺を除くほか2名の健也と雄志が、考に続いて走って行っている。
大きな雄叫びと共に走る様は、どこかの戦闘部族に見える。

「はぁ……俺もやらなきゃいけないのか?」

まっぴら御免こうむる。
そうだな、アイツ等が頑張っているのに対し、俺は休ませてもらうよ。
そう思い、俺は近くにあった海の家に向かった。かき氷やジュース、焼きそばを売っている場所だ。
特に欲しい物もないが、うん、かき氷でも食べるか。
おお、案外人が並んでるな。
俺は最後尾に行き、順番が来るのを待った。すると数分後、俺の目の前の女性がかき氷を買った時、手を滑らせてしまった。

「おっと……!」

それをなんとかキャッチしてみせた俺。うむ、我ながら素晴らしい。
あーでも、少しこぼれちゃったな。どうしようか。

「あ、ありがとうございます!」
「あーいえいいんですよ、それよりもコレちょっとこぼれちゃいましたね。すいません、もう一つ買ってあげますよ」
「え、でも悪いのはあなたじゃないし……」
「気にしないでください。ホラ、味は同じで良かったですよね?」

会話中に勝手に購入した。まぁ、悪くないと言えば確かにそうなのだが、なんかね。
俺は買ったかき氷を女性――というかこの人も高校生だな――に手渡した。
ちなみに味はレモンだ。

「ありがとうございます! 優しいですね、あなた」
「そうっすか? 言われると照れるんですが。ああ、あちらに友達が待っていらっしゃいますよ」

と言い、友達であろう人に目をやる。

「ハイ! あの、私、岬鏡花(みさき きょうか)と言います! あ、ではホントにありがとうございました!」

そう言うと颯爽と友達のところへ走って行った。あ、間違えてなかったんだ、良かった。
というか、俺の名前は聞かなくて良かったのか?
……………

「ま、いっか」

あ、じゃああの子も名前言う必要ないのになんでだ?
……う〜ん、きっと自然と言っちゃったんだろう。
顔とかよく見てなかったけど、背は恋歌程度だったな。同い年かな?
まぁ、そんなことはどうでもいいか。早くかき氷買って考たちの元へと戻ろう。
俺は買ったかき氷を味わいながら、ゆっくりと戻って行った。







………………

「あの人、どこの高校なのかな〜? ていうか、高校生だよね?」

………………

「また会ってみたいな」

女は、持っていたかき氷をしっかりと味わいながら食べた。







時刻はすでに夕方の6時。
結局、なんの収穫もなかったみたいだ。

「う……く、クソォ! 諦めてはならん! 我々はまだ……っく……」

赤く染まった夕焼け空。こいつら3人にとっては、今はとても悲しく見えるだろうな。
とぼとぼと歩きながら帰る男子3人。
考は半泣き、健也はそんな考を慰め、雄志はぶつぶつと何かを言っている。
つか、馬鹿だろお前ら。

「隊長、まだ次があります。次こそ、我々は勝利の宴を……!」
「なぜ無理だったのだ。俺はきちんとマニュアルを読んで誘い方も完璧に……」

勝手にやっとけ。というか、雄志の奴はわざわざマニュアルなんか読んだのかよ。
はぁ。こんな奴らが俺の連れか……。

「うおおおおっ! そうだ、俺たちはまだ負けていないっ!」
「そうです! その意気です隊長!」
「次はもっとマニュアルを読み、完全体になってやる!」

あーうるさい。立ち直りが早いな、考は。

「「「エイエイオー!!!」」」

誓った男ならばやり遂げるのが筋。この3人は、また海に行くはずだ。
はぁ。今日で何回の溜息だろう。

「はぁー……勝手にやっとけ……」

その後男3人は、家に着くまでうるさかった。

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