小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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突然だが、なぜ人は怖がると風呂やトイレに行けなくなるのか。
自分の小さい時や、もしかすると、今もかもしれない。
何らかの事情で怖くなり、途端にトイレに行きたくなったとしても、人は少し足を止めてしまうだろう。
何故なのか?
現在、オカルトや噂、インターネットを通して言われていることをまとめると、何でも、「無防備になるから」というのが多い。もう一つよく言われているのが、それは「水のある場所には集まりやすい」ということだ。
無防備になると人は不安になるのだろうか。だが、あながち間違ってはいない。
無防備になると己を守る物が無いため抵抗することができない。さらにそれがトイレやお風呂と言った個室になると、自分だけしかいないので助けを求むことが困難だ。
さらに、先ほどの「水のある場所には集まりやすい」と言うのも理由の一つだ。
集まりやすいと言うのは、考えなくてもすぐにわかるだろう、幽霊だ。
無防備の上に、自分しかいない状況の中で幽霊に遭遇、襲われるなどと言ったことがあると、人は必ず怖がるだろう。
これらの考察の結果、人はいまだに、怖がると風呂やトイレにいけないのかもしれない。
もしかすると、本能的に感じているのかも……まさか、ね。



♯12.再会×感激



我が私立聖楼学園もついに夏休み突入となった。
あの時の海の苦い思い出(3人にとって)は、もうすでに消え去っているようだ。
今は、この時この瞬間の夏休みを、大いに楽しんでいる。
そんな今日は、年に一回の夏祭りの日。
もちろん、俺たちは当然遊びに行った。男だけと言うのもあれだが、まぁ、いつもの連れと一緒にいるのが楽しいと感じているのも本性だ。

「キタキタキター! さ、まずは何から食う!?」
「もう食うのかよ。まだ6時だぜ?」

現時刻は午後6時20分。家庭によっては違うだろうが、少なくとも俺の家庭ではまだ夕飯時じゃあないんでな。ちょっと言ってしまった。

「ま、いいんじゃないか。ホラ、あそこに焼きトウモロコシもあるし」
「それお前が食べたいだけだろ」

雄志のヤツ、トウモロコシが好きなんだよな。
だが否定はできない。俺だってトウモロコシは好きさ、あのつぶつぶ感と言ったらたまらん。

「おお!」
「ん? 何かあったのか?」

突如、考が大声を上げたものだから一同で驚いてしまった。
が、今は頭上にクエスチョンマークが浮かんでいる。
皆が考の第二声を待っている。考は、しばらくしてこちらに振り向き、見ていた方向に指をさし、そして言った。

「見ろ! あそこに可愛い女の子たちがいるぞ!! 行こう! 行って――ぶべらっ!?」
「「「てめぇは女にしか目が無いのか!」」」

俺を含めた、健也と雄志のローキックが見事に炸裂した。
何だってんだ。こんな時にも女かコイツは。というか、絶対コイツ「ナンパしようぜ、ナンパ!」って、言おうとしていたな。
そうこうしている内にもう時間は6時を終わり、7時になろうとしている。
どうしてくれるんだ、時間の無駄じゃないか。

「はぁ……。まぁ、何か食べるとするか」

御一行は歩き出し、何かないか屋台を探した。各々が食べたいものを見つけ、買って行った。健也はいか焼き、雄志は焼きトウモロコシ、考はフランクフルト、俺はりんご飴だ。
何だ、今「え、りんご飴なんだ、いが〜い」とか思ってないだろうな。舐めんなよ、りんご飴を。
食べながら祭りの中を歩いていると、人も増えだし混雑な中、恋歌とその友人たちと出会った。おい、こんなところで出会うのか。

「おお、恋歌じゃないか。お前たちも遊びに来てたんだな」

と、言い切り出したのは、女には目が無い考だ。
全く、コイツは恋歌だろうと容赦がないのか……!?

「ええ、まぁそうね。アンタたちも来てたのね、その、氷河も」
「おう、まぁな。年に一回だし、俺も暇だし、こいつらも行こうって言うんでな」

だが、恋歌とその友人たちと一緒に回る気はないからな。

「なぁ、良かったら俺たちと一緒に回ろうぜ! な、健也も雄志もいいよな?」

――!? って、おい! 何言いだすんだ考の奴!!
乗るなよ、乗るんじゃねぇぞ、健也、雄志……!

「ああ、まぁいいぜ」
「女がいた方が何かいいしな」
「よっしゃ! 男子軍は皆OKだな!」

乗っかっちゃったよォ!! ホント、馬鹿なんですねあなたたちは!!
ていうか、俺はOK、って言ってないだろうが! 勝手に話を進めんじゃねぇ!

「おい、俺は別に良いと言っていない。勝手に話を進めるなこの女バカ」
「んだよ、連れねぇな〜」
「それに恋歌とその友人たちがOKしてないんだから無理だろ。ホラ、俺たちは俺たちだけで回るぞ」
「っちぇ、テンション下がるぜ……」

下がっとけ、下がっとけ。
ま、これで一件落着だな、よしよし。
と、俺たちが歩き出した途端、恋歌とその友人たちが声を上げてきた。何だ、何かあるのか。

「私たちは全然いいですよ! 多い方がいいし、私たちも男子が欲しかったの!」
「そうだね、一緒に回ろ!」

え……ちょ、ちょっと何言ってんの、この子達。
いや、待て。ウェイト。まだ恋歌がいるじゃないか、そうだそうだ。

「恋歌は? どうする?」
「私も、別にいいわよ……」

え……。ええええええええええっ!?

「おい、恋歌! 本当にいいのかっ!? こっちには馬鹿な男共しかいないんだぞ!?」
「うるさいわね! アンタの意見は聞かないわよ、このバカ氷河!」
「な、なんだと……!」

こ、こんなのは想定範囲外だ……!

「お、マジ!? おっしゃあ! じゃあ、行くとするか!」

と、言うわけで。
今は、俺、考、健也、雄志、恋歌、恋歌の友人たちというメンバーになってしまった。
どこで何が起こったんだ……。ちなみに全員で7人だ。
はぁ……。今すぐ帰りたい気分だ。
連れのバカどもは女子が来たことでキャッキャしてる。一方、その女子たちもだ。
恋歌は、さほどではないな。
と、よく見ると、左手首にきちんとブレスレットがつけられていた。
何だ、約束覚えているのか……。
あの時のことを思いだし、少々頬が赤くなってしまう。我ながらよくあんな台詞を言ったものだ。
だがまぁ、正直嬉しい。
それから、皆でワイワイと遊ぶこと30分が経過した頃、俺はトイレに行きたくなったため、一人抜けてきた。なるべく早く戻ると言ったので、急いでトイレを探す。すると、

「あ! あなたはあの時の!!」
「ん?」

ふいに声がした方へと向く。そこには、依然海の時に出会った、えーっと、あ、そうだ。岬鏡花さんがいた。

「ああ、確か、鏡花さんでしたよね?」
「ハイ、そうです! あ、さん付けはいいですよ。鏡花でいいです! あとそれからタメでいいです!」
「え、あ、じゃあ……鏡花は何してるんだ?」
「友達と遊んでいます! 今友達は別のとこで飲み物買って行っているんですけど」

まぁ、遊んでいるとしかほかないよな。

「そうなんだ。あ、そういえば、この前名前言ってないよな。俺は秋島氷河だ、よろしく」
「わあ……! カッコいい名前です! 氷河さん、でいいですかっ!?」
「うん。あ、けど、鏡花もどうして敬語なの。タメでいいよ」

ずっと気にかかっていたことを言ってみた。背が恋歌と同じくらいだから、きっと同学年のはず……。

「いえ、私まだ高1なんです! でも、氷河さんは高2ですよね? だからです!」
「そうなのか。俺はてっきり同学年かと」

何だ、高1なんだ。ていうか、何で知っているんだ? まぁ、別にいいか。
まぁ、下と言うなら別にいい、かな。
あ、そういえばどこの高校に居るんだ? ちょっと気になるから言ってみるか。

「そういえば鏡花は、どこの高校に行ってるんだ?」
「あ、私私立聖楼学園、っていう所に行っているんですよ!」

何? するってーと、俺の後輩にあたるわけか?
ていうか、まさかの同じ学校だったよ。

「聖楼学園なのか? 俺もそうなんだが……」
「えっ!? 氷河さんも聖楼なんですか!? 感激です! 嬉しいです!!」

何で嬉しいかは分からんが。
でもすごい偶然だな。こんなこともあるんだな。

「あ、じゃあ、これからは氷河先輩、って呼びます!! あ、そろそろ戻って来るんで今日はこれで……」
「あ、うん。じゃあね」
「本当は、一緒に回りたいけど……」
「ん?」
「ああ、いえ! 何でもないです!! それでは……!」

と、言うと、ものすごいスピードで駆けて行った。
何だあの子、陸上部のエースだったりするのか?
あ、ヤベ。トイレェ!!!







「遅かったぞ、何してたんだ」
「わりぃわりぃ、結構混んでてよ」

あれからトイレに行き、そして戻ってきた。
どうやら、だいぶ待たせてしまったようだ、すまん。

「ま、回ろうぜ。まだまだこれからだ!」
「ああ、そうだな」

再び歩き始め、俺たちは祭りを楽しんだ。
でも、ホント意外だったな〜。あの子と同じ学校で、しかも後輩だったなんて。
偶然は必然、と言った物だ。
ただまぁ、今回の事に関しては、必然ではないか。
ん? 恋歌がこっちを見ている。

「何だ? 顔になんかついているか?」
「違うけど。何か、怪しい……」
「ん? なんだそりゃ。さっぱりわからんぞ」

何が言いたいのだ、恋歌。

「何でもないわよ。アンタの脳みそじゃ到底分からないでしょうね、このバカ氷河。ただの女の勘よ」
「……?」

よくわからん、が、気にせずそのまま、祭りが終わるまでたっぷりと遊んだ。
たまには、こうやって遊ぶものも悪くないな。

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