小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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「結構間が空いちまったな。すまん、不定期と言えば不定期なんだ」
「今更そんなこと言ってどうにかなるのか〜?」
「あ、考」
「どうにでもならねぇって! それより、今回はそりゃあもう大変なことになるんだよな!」
「まぁ、俺が言えることでもないがそうだな」
「ささ、始めようぜ!」
「つか、これ小説の前書きでやって大丈夫か?」
「大丈夫だろ、なんとか。ほーら、早く!」



♯14.火花×血統開始予告



そんなわけで、今日は家に、考、雄志、健也+俺が揃っている。
はたして成功するのか、ナンパは。
俺はどうでもいいことだが、仲間の成功を祈ってしっかりと願う。いいか、くれぐれも泣くなよ。

「それじゃ、出発! いざ行かん、広大な海!!」

考の指揮と共に、歩き出す御一行。今回はどんな衝撃が待っていることやら。







というわけでやってきた海。
前来た時よりも、人は増え、もちろん3人がお目手の女子も群がっている。
やはり夏休みだからか、どこの人間も思いは一緒のようだ。
すでに考たちは突撃しに行った。俺は、頑張れよとだけ言い残し、今は砂浜を歩いている。
水の冷たさと、日光の暖かさを同時に感じる。うむ、悪くない。
騒いでいる者たちも、静かに日光浴を楽しんでいる人たちも、今見ると夏の風物詩のようなもので、なんだかいい。
と、依然鏡花と出会ったあの海の家が目に入ってきた。相変わらず長蛇の列だ。
これ程暑ければそりゃだれだって冷たいもの求めるよな〜。昼だってあそこで食べる人もいるだろうし。
ん? あれは……

「あ、氷河せんぱーい! 私ですー! 鏡花ですー!」

おお、やはり。
俺は、鏡花に向かって手を振る。ちゃんと気づいていると示すために何かしらの行動を取ろうと思い、自然と出てきたのがこれだった。あちらも分かってくれたようで、せっかく並んでいた列から脱け出して出てきた。

「わぁ! どうしているんですか!? 氷河先輩!」
「いやまぁ、どうしてって言われたら遊びに来たとしか言いようがないんだけど……それよりいいの? 列、並んでいたんだろ?」
「あ、あちゃ〜……やってしまった。……いやいいんです!」
「どうして?」
「あ、えーっと……その……(言えない! 氷河先輩がいたからです! なんて言えない!)」
「なんだから、並ぼうか」

鏡花はわずかに頷いた。いや、そんな落ち込まなくても……。
二人で歩いて最後尾に立つ。うお、さすがにすごいな……これは時間がかかりそうだ。
ん? と、他の人はいないのだろうか、聞いてみよう。

「鏡花は、今日は他の友達とかはどうしたんだ?」
「ああ、でしたら向こうの方で待っています。みんなの分も買うつもりだったんですよ」
「え……それ、本当に脱け出して来たらヤバかったじゃん。悪いな、なんか」
「ええ!? いえ、氷河先輩は謝らなくていいです! 悪いのは私です!(皆もわかってくれるはずだよ……!)」

そうか、皆の分も何て優しいな。
いや〜、恋歌ならそんなことしそうにないな。まぁ、俺だけにだと思うが。
それから、二人で雑談をしながら並んでいると、あっという間に自分たちの番が来た。
これでようやく冷たい物にありつける。
各々買う物を買い、列から外れ歩く。俺は暇なので、鏡花を友達のところまで送ることにした。
約5分して、友達のとこまで来た。
2人の女の子が笑顔で駆けよってくる。

「あ、お帰り! 遅かったね〜……って、誰その人!」
「鏡花ちゃん、その男の人って?」

ま、そりゃこうなるだろうな。

「ああ、うん。秋島氷河先輩だよ、うちの学校の2年生だから先輩」
「へぇ〜! アンタ、その人と仲良かったの?」
「私も初めて知ったよ〜」

そりゃ、そうだろうな。俺だって君たちの事を今知ったよ。

「うん、ちょっと色々あってね。それで知ったんだ。ね? 氷河先輩」
「まぁ、そうだな」

俺に振るかよ。

「そうなんですか。あ、私は鮫島明美(さめじま あけみ)です。よろしくお願いします!」
「ああ、うん。秋島氷河、よろしく」

少々無愛想だったか? いや、初対面はなかなか気まずい物があるしな。

「私は深木蘭(ふかき らん)です、よろしくです!」
「うん、秋島氷河、よろしく」

初だろう。こんなにも自分の名前を連続して言うのは。

「あ、そういえばね鏡花! さっきさ〜」
「ん? どうしたの?」

と、すっかりガールズトークになってしまったようだ。
「え〜!」や「きゃー!」などと言う発声が聞こえる。
ま、俺はおさらばするかな。そろそろ考たちの結果も気になってきたところだしな。

「じゃ、俺は戻るよ。またね、鏡花」
「あ、先輩!(まさか、もう行ってしまうの?)」
「ん?」

と、そこに俺がいないでありますようにと実は心の中で願っていた人物が姿を現した。
見慣れた顔、スリムなスタイル、膨らみのある胸、俺を見るときは眉がキリッとしているソイツの名前は、そう未来恋歌。
なぜ、なぜいるんだああああっ!?

「氷河、アンタなんでいんのよ」
「そりゃこっちの台詞だ。何で恋歌がいるんだ」
「遊びに来たからでしょ! ……それより、その子誰よ」
「ん? ああ、この子は……って、ん?」

なんだろう、火花? バチバチバチッ、と言う感じの何かを感じる。

「あなた誰ですか! 氷河先輩のなんですか! なれなれしく喋らないでください!」
「アンタこそ誰よ! 私の氷河に軽く近寄らないで」

おいおい、そりゃないだろ。つか、何でお前等喧嘩してんだよ。
私の、ってなんだ。俺は誰のものでもないぞ。

「おい、喧嘩するな。お互い初対面だろ」
「「氷河(先輩)黙ってて!!」」

お、おっす……。

「私は氷河の幼馴染の未来恋歌よ! ずっと昔から一緒なの!」

なんだろう、昔と一緒をやけに強調した気がする。

「私は1年の岬鏡花です! 氷河先輩の後輩です!」
「あら、下なのね。じゃ、私の後輩でもあるわね」
「ぬぐぐ……(わ、私には年下属性が! というか、絶対この人氷河先輩の事好きだよね?)」
「あら、言葉も出ないの?(この子、氷河の事好きなんじゃないの? わ、私は、まぁ……)」

なんだろう。居てはいけない場に居る気がする。

「わかりました。血統しましょう! どちらが氷河先輩にふさわしいか!」
「望むところよ、乗ってやるわ!」

――!?

「おいおい、待て! 血統、ってなんだ!? つか、なんでこんなことになってんだ!?」
「氷河、私、ひょ、氷河のためならなんだってできるんだからね……」

? よく聞こえねーよ。

「氷河先輩! 私頑張ります!!」

いや何をだ!
すると、火花がまたもやバチバチと燃え始め、二人の目が燃える(ように見える…!)
何をするのか、どうしてこうなったか、ツッコミどころが満載だが、これ、俺ではもう止められない気がしてきた。
ホント、俺もナンパしときゃよかった……と、深く反省する俺であった。

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