小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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「スタートッ!」

全員が一気に駆ける。砂浜を、太陽の日差しを浴びながら。
ただ、駆け出したものはいいものの、これは二人三脚。
正直に言おう……

息がひとつたりとも合わん!



♯16.紐×膨らみのあるものに



「きゃあ!?」
「う、ぐっ!」
「ちょ、痛ぁ!」

駆けることを始めてわずか10秒行っているだろうか、そんなにも早くにこける輩がここに。
何故俺が真ん中なんだ。いや、そこはいい。背のバランスを考えてもここは俺が真ん中になってしまうだろう。うん、そこに関しては一切の問題を問わないのだがな……

こんなにも息が合わないものですか?

問おう。運動神経が悪い女子だってそりゃいるさ。だがな、二人三脚ってものは息さえ合わせればあとはどうでにもなるものだ。

『足の速さなんてどうにでもなるわ。だから息を合わせましょうね!』

そう鮫島さんは言った。そして現状がこれだ。
息合ってないっすよ……。
こけた部分が擦れて少しだが血が流れてきている。鮫島さんも深木さんもそんなことはなさそうで怪我をしているのは俺だけのようだ。
俺たちは再び立ち上がりなんとか体制を取り戻して走り出す。ふと見ると考たちのチームはもはや後半を切ったくらいの場所にいた。ゴールは確かヤシの木が立っている場所までだったな。距離で言うとざっと200mくらいだろうか。
二人三脚で200mなんで長くないか?
いやこれもまたどうでもいいな。とにかく早く行かなければいけない。
今は息も先ほどよりかは合っている……と思う。

「す、すいません! 言いだしっぺのあたしがこんなミスしてしまって」
「いやいや、大丈夫っすよたぶん。あいつらもいずれこけるはずです」
「そうだよ! 頑張ろ、明ちゃん!」

ああ、そうだ。あいつらも調子がいいのはいつまでもじゃあないだろう。
いずれこける……はずだ。
俺たちはそのまま後半を切ったくらいまで走れた。
だがしかし、考たちはもはやゴール直前だった。

「よっしゃあー! このままゴールじゃあ!!」
「うおおおお!!」
「はぁ、暑苦しい」

やばい。ゴールするっ…!
と、その瞬間だった――

「おわぁ!?」
「ん? おわぁ!?」
「て、ちょっと!?」

――ドサァ!

思いっきりこけた。
しかし、これはチャンスだ! 俺たちに勝利の女神は微笑んだか!

「よし、チャンスだ! 行くぞっ!」
「はい!」
「了解ー!」

俺たちは一気にラストスパートをかけた。
こけてしまう確率は一段と上がるわけだが、最初だけで今は呼吸があっている。
きっと大丈夫だ! いける!

と思った、のもつかの間だった!

――ヒュン……

なにやら長いものが俺たちを直撃した。

「うわ!?」
「なにこれ!?」

それはロープ(風)のものだった。そう、つまり、二人三脚で足に結んでいた紐である。
何故飛んでくるんだ?
ふと横を見る。すると、恋歌が不敵な笑みを浮かべた。確信犯か!

「何しやがるっ!」
「私は優勝するの! 邪魔しないでよね!」
「邪魔なんてしてないだろうが!」
「そこの子達よ!」
「え? 私たち?」

何を言っているんだ恋歌は!
ええい、はやく紐をどかさなければ。
……? なんだ妙に絡まる! くそ、こいつ!

「どうなってるんだ!? ただ投げただけでここまで絡むもんかよ?」

くそ、もうちょいか? て、ん? 何か如何わしいような声が聞こえなくもない。
どこからだ? 

「ちょ、氷河先輩……その、当たっていて、擦れて変な感じです……」
「ええっ!?」

見ると深木さんのあの膨らみのある場所に見事紐があたっていた。そしてその紐を俺が引っ張るせいで力が入り膨らみのあるものに擦れていたのだ。
ああ、なるほど。これだったのね。……………やっべ。

「うわぁ〜、蘭エロいね」
「ちょ、明ちゃん!」
「冗談だってば〜、ハハ」

そんなことりも早くどかさなければ!
俺はまた力を入れる。今度は当たらないように気をつけながら身長に行った。
が、しかし。

「う……ちょ、強いです……あ、ん」
「ええっ!?」

なぜだ!? なぜまだ当たっているんだ!?
見ると、太ももが紐の動作を制御していた。そうか、あれのせいで!

「深木さん! 太もも、太ももどけてください!」
「え?」
「そこで紐が縛られているんだ!」

気づいた深木さんが太ももをふ、と紐から離した。
それと同時にしゅる、と楽にほどける紐。
全てはこれが原因だったのか……。なんという失態。気づかなかった俺も馬鹿ではあるが、これなんで深木さんが一番早く気づかなかったんだよ。

「よし、それじゃ早くゴールに!」

紐をどけて俺たちは全力疾走でゴールに向かった。
………………
…………
……
そしてようやくゴール地点にたどり着いた。すでにそこには考に健也、そして恋歌がいた。
当たり前と言えば当たり前だ。

「ふぅ……疲れた。ものすごく疲れた」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「しっかし、さっきの蘭はエロかったな」

もう動きたくないな。このまま休みたい。いや、家に帰りたい。
すると、息を荒くして座り込んでいた俺たちの前に鏡花がいた。どうしたんだろう?

「明! 蘭! ………う、う……もおー!」
「あー、やっちゃったな」
「ふぇ?」

俺じゃないみたいだな。
はぁー、疲れた。
考を恨もう。こんな企画を開始した考を……。

「遅かったわね」
「お前のせいだろうが、恋歌」
「フ…フン! 別にいいじゃない。勝つためには仕方ないことよ」
「何が仕方ないだよ」
「だってあの男たちがどうしようもないんだもの」

あながち間違っていないような。いやでも道具を使うのはルール違反だろう。

「とりあえず、これでひとまず私が一勝ね、よし」
「? ……ま、いいか」

とにかく今は休憩だ。もうやりたくねぇ。
頼む、考。休ませてくれ……

「それではー! 第二回戦の方に参りましょうー!!!!」

ああ、恨む。

-16-
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