小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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「雄志って泳げなかったんだな」
「言うな……金槌なんだ仕方ないだろ……」
「ハハハハハ!!! いや〜、あの時代わりに氷河が行ったからいいものの、お前一人だったらどうするつもりだったんだよ」
「そういう健也こそ大丈夫なのかよ? 動揺して何もしてやれないとか」
「んなわけないだろ! 俺は男だぞ!」
「俺だって男だよ!」
「あー、もういいお前ら。そろそろ本編始まるから」
「「お、おう。分かったぞ、氷河」」

「「って、なんでハモるんだよ!!」」

「(喧嘩するほど仲がいい、ってか?)」



♯18.デビルバーク×相手は後輩



翌日、昨日悲惨な状況だがなんでか笑って終わった大会。
そんなふざけた大会も終わり、俺は現在フリーというものを味わっていた。
本当に自由だ。こんなに素晴らしいものが簡単に味わえることを俺は知らなかったのか。
まだまだ無知だな。そうだ、こんな時こそ寝るに限るってもんだ。
日頃疲れきっている体力を回復する。それが俺の今、すべきことではないだろうか。
うむ、そうだろう。間違っていないさ。
よし、じゃあここのリビングから自室へと移動だ。
と、その時。

――プルルルルルル、プルルルルルル

俺の耳元に届いたのはデビルバークだった。
くそ、今は親もいないし俺ひとり。電話に出ないのも礼儀として……ん、んー……。
誰だ? 何らかの業者の人か? 通販なんて頼んだ覚えはないけどな。そうか、きっと親がなにか頼んだんだろうな。
よし、通販だぞ、通販。
俺は音を捲し上げているその電話のもとへと行き、受話器を取った。
通販だ、通販。

「もしもし?」
「もっしもーし!!!! 俺だよ、考くんだよぉ!!!」

――ガチャ

「間違い電話だったな。気をつけて欲しいもんだ」

――プルルルルル、プルルルルル

ん、んー……。
再びかかってきた電話。
と、取るか……。

「もしもし?」
「なんで切るの!? 友達だよ!? つか俺なんだよ!?」
「いや、ろくなことがないと思ってな。それで何の用だ?」
「あ、そうそう。今度みんなでキャンプに――」
「行かん」

――ガチャ

キャンプだとか言ってたけどな、恐ろしくて山など行けるか。それがたとえ川だとしてもな。
無駄な時間を食ってしまった。早く自室のベッドの下に行き寝よう。
と、もう一度受話器の方を見る。……よし、もうないようだな。
そして俺が足を踏み出した瞬間! デビルバークはまたしても耳元に届いた。

――プルルルルル、プルルルルル
――ガチャ

「なんだよ、しつこいぞ!」
「え、いやあの……」
「ん?」

あれ、考じゃない。誰だ? この声恋歌でもなさそうだぞ。

「あの、私岬鏡花と言いますけど……その、氷河先輩はいますか?」

鏡花!? なんだよ、全然違うじゃないか。失礼なことしちゃったな。
え、でもなんで俺の家の電話番号を?

「ああ、ごめん。俺だよ。さっきまで変な奴から電話かかってきてたからつい……」
「あ、そうなんですか? ふあ〜良かったです」
「でも、なんでうちの電話番号を?」
「ああ、恋歌先輩の携帯画面を見て知りました!」

なんてことしてるんだこの子は。侮れないぞ。
それを平気で言うということに関してもだな。

「あ、ああそうなんだ。それで、俺に何か用があって電話したんだよね?」

ただ電話しただけではなさそうだな。わざわざ携帯画面まで見たんだから。
けどなんだろうな。学校関連か? だとしても俺がやるようなことはないと思うが。

「あ、えっとですね……(言えない! ただ電話したかっただけとは言えない……!)」

――時はさかのぼり電話前

「ひょ、氷河先輩に電話してみようかな」
「し、失礼とか思われないかな?」
「う、うー……かけちゃえ!」

――現在

「(ど、どど、どうしよう!?)」

うむ〜。そんなに言いづらいことなのか?
なんだろう、余計気になってきた。

「言いづらいことなの?」
「え! あ、いえその……(ホントにどうしよう? い、いっそ遊びませんか、とか!?)」
「うん? 何?」
「え、えっと……あ、明日遊びませんか!?!?」

遊ぶ? ああ、何だそんなことだったのか?
ま、いいか。明日もフリーだろうしな。さっきも断ったし、キャンプよりよっぽどいい。

「ああ、いいよ」
「はぅ〜、はぅ〜……え?」
「いや、だからいいよって」
「え……(勢いで言っただけなのに。ほ、ホントにいいの!?)」

何だ? 遊ぶんじゃなかったのか?
むむ〜、分からん。

「あの、ホントにいいんですか!?」
「だからいいって。明日も暇だろうし。それとも、違ったの?」
「いえいえ!! じゃ、じゃあ明日バチ公前の10時で!」
「ん、了解」

明日はこれで暇じゃなくなるな。
なんだかんだ言って俺は暇というものが嫌いでな。寝るのは大好きなんだが。

「では、し、失礼します!」
「おう、じゃ」

俺は鏡花との通話を終了し受話器をおいた。
そしてそれからベッドへと行き、俺はついに寝ることができた。
明日、遅れないようにしないとな。







や、やったー!!!!
なんだかよくわからないけど、氷河先輩と遊ぶ約束……!!
あ、準備しなくちゃ! 何着ていこうかな〜、フフフ。
明と蘭に言おうかな〜。あ、ていうか明日って私と先輩だけだよね?
こ、これってもしかして……

「で、デートだったりするの……かな」

考えられなくなった私は、傍にあった毛布を思いっきりかぶった。







「はぁ……俺、氷河になにかしたっけ……」

電話をぶち切られてしまった考は、儚くも、未だに受話器を手にしていた。

「はぁ〜……」

これで憑いたため息は約15回目。
そろそろ精神が崩壊しそうである。

「はぁ〜……」

16回目。


-18-
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