小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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「今回は今までで一番あいたんじゃないか」
「何が?」
「ほら、不定期とは言えど、結構日があいちまったなって」
「あー、なるほど」
「謝ってばっかですよね……私たち」
「おお、鏡花」
「こんにちはです。氷河先輩、雄志先輩」
「そんなわけで、今回は俺たちが関係する話なんだよな」
「あー、そうだったな」
「よろしくです!」



♯20.喫茶×極限恐怖



俺と鏡花の二人は、まだ行くあても決めていないのでとりあえず喫茶店に入ることにした。
洋風感漂うその店で俺はコーヒー、鏡花はカフェオレを頼んで二人して話すことにした。
今ここにいる喫茶店は大きなデパートの地下、いわゆるデパ地下にあった。
そんなわけでここで遊ぶのもいいんだが……。

「鏡花は、どっか行きたいところとかあるのか?」
「んー、私は……(氷河先輩がいるならぶっちゃけどこでもいいんだけど……)」
「あ、服とか欲しいのないのか?」
「え……確かにここのデパート可愛い服たくさんありましたけど……」
「そうか、なら俺が買ってやるよ。どれがいいかあとで回ろうぜ」
「それはダメです!!」

突然、鏡花はバンッと机を立てて素早く立ち上がった。
おお、何だ。俺、まずいことでも言ったかな? って、お客さん見てるぞ!

「お、まぁ、落ち着こうぜ。ほら、見られてるぞ」
「え? あ、は、はい……」

鏡花はゆっくりと手を引き椅子に座る。
顔を真っ赤にして俯いたままで、やはり恥ずかしかったようだ。
俺は少し冷や汗をかきながらも、話の話題を再開することにした。

「で、なんでダメなんだ?」
「だって、先輩のお金を使わせるわけにはいきません!!」
「いや、俺は別にいいから言ったんだけどな」
「それでもダメです!!」
「そんなに気を使わなくてもいいって。今日せっかく二人で遊んでんだから、特別だよ」
「と、特別……(な、なんか今日の先輩一味違う気がする……!)」
「な?」
「は、はい……」

よし、じゃあこれで決まりだな。確か、ショッピングセンターなら上の方にあったな。
俺はコーヒーカップの取っ手を持ちコーヒーを口に注ぐ。
とりあえず、一安心だな。
ほっと一息つく。鏡花の方も落ち着いたようで、カフェオレを静かに飲んでいる。
俺はそんな鏡花を見たあと、顔をふと上げる。
そして、視界に入ったのはいつものお世話がせ三人組だった。

「(な、なんであいつらが……!)」

気づかないでくれ、気づかないでくれ……。た、頼むぅ!!
俺は上げていた顔を咄嗟に下げる。コーヒーに意味もなくジッと見つめる。
目の前では鏡花が不思議そうな目で見ているのがわかった。
仕方ない。今は耐えろ! 鏡花にはあとで事情を話せば終わる。だがしかし、あいつらに限っては説明しても意味なんで通じない!! ……はずだ。
俺は少し顔を上げ、奴ら三人組をチラ見する。
お店のウェイトレスが席へと案内していた。そして、三人組が座った席は…………

俺たちの席の真隣だった。

いや、正確に言えば薄いガラス越しだ。
ここの店が考えたアイデアなのか、店の内装ではガラスが席ごとに張り巡らされており、自分たちの時間を楽しめるようになっていた。
が、声や音は聞こえるため話している内容はわかる。それに、ガラスは嬉しいことにモザイクガラスになっているものの、わかってしまうものにはわかってしまう。
これは……きつい……!
とにかく鏡花がどれだけ早く飲んでくれるか、せがむわけにも行かない。
それに、話がないのも寂しいというもの、話さないわけにはいかない。
非常にまずいぞ……!

「そういえば、氷河先輩は考先輩たちのことはどう思ってるんですか?」
「え?」
「氷河先輩を見たときはだいたい一緒にいるので、どうなのかなと思ったんです」
「あ、ああ……」

ここに来てその質問かぁ!!
カオスだ。カオスな質問すぎる。
バレないように、小さな声ですぐ言えばいい。よし、綺麗事でも……。

「ああ、俺は――」
「で、氷河の奴さー!」

でかい声が聞こえた。そのでかい声は確かに俺の名前を言っていた。
俺の名前を知ってるなんて、俺の話題を出すなんてもはや奴らしかいない。
そう、現在隣に座っているこいつらだ。
俺は言いかけた言葉を止め、考たちの話に聞き入ってしまった。

「あいつさー、俺がお金ない時助けてくれないんだよ。昼飯も買えないってのにさー」
「(当たり前だろうが! 小学生かお前はッ!)」
「俺は、あいつの家行ったとき冷凍庫浅ってたら怒られたなー」
「(建也、それは常識だろ! 人の家の冷凍庫は普通浅らねぇ!)」
「俺、フクロウ持って入ったら怒られた」
「(………………。無理にボケようとするなよ…………)」

それからも奴らの会話は途絶えることを知らなかった。
話題はあれやこれやと変わり、それについて一生懸命に語り合っていた。
はぁー……、長いため息をついついついてしまう。
こいつらの思考回路はどうなってるんだ。

「あの、氷河先輩?」

そもそも非常識じゃないか? 人の家の冷凍庫を浅ったり……。ていうか、冷凍庫浅ってどうするの。

「あのー……」

フクロウ、って。ボケ丸見えだぞ。しかも白けていたんじゃないか?

「あの……!」
「――!? あ、何?」

強化が大きな声を上げたもので、俺は驚いて顔を上げる。

「カフェオレ飲み終わったので、行きましょう!」
「ん? あ、ああ……。うん、わかった」

俺が静まり返っていたあいだに飲んだのだろう。
グラスの中にはストローと氷しか残っていなかった。
俺は、まだ少し残っていたコーヒーを飲み干し、財布を手にして立ち上がった。
不思議そうな目でさっきから見つめてくる鏡花に、心の中で必死に説明しながらもレジへと行く。
――?
ちょっと待ってくれ。立ち上がって、レジへと行くということは……これ、バレるんじゃないか?
俺はふと後ろ側を見る。
固唾を飲みながら、目を、その三人組へと向けた。
考、建也、雄志は、こちらを見て、ニタァと口を歪ませた。

「は、はは……こいつは、勉強せずにテストに挑むのと同じ怖さだな……」

俺はすっかり鏡花がいることを忘れ、放心状態へと陥ってしまった。
もしここにアインシュタインがいたとしたら、俺はこう言うだろう。
「舌を出すのをやめたらどうだ? 馬鹿に見えるぞ」と。
だがしかし、アインシュタインはこう答える。
「確かにそうかもしれない。だがしかし、バカは君の方ではないかね?」
アインシュタインは不敵に笑う。俺は何も言い返す言葉がない。
そう、相手はその行動により馬鹿に見えるが、真の馬鹿は自分なのだから。

席を立ち上がり、後ろを振り向いたという馬鹿なのだから。

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