小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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訳がわからないまま俺はトイレを出た。
外で待っていた鏡花は、不安そうな顔を浮かべながら「大丈夫ですか?」と聞いてきた。
俺はその答えとして「問題ないよ」という当たり前な言葉で、その会話を終わらせた。
一体、何者なのか。
何故、俺や恋歌のことを知っているのか。
複雑なとぐろを巻いて、頭の中で乱舞している。俺はそれに一歩も近づけないまま終わってしまうのか。
直感的に、触れてはならないものに触れた感じがして。
だが、それは運命だったのかもしれない。そうとすら今思える。
あの男は、こうなることを望んでいた。そして望んだものが現実となった今、これからはやつの計画通りに動いていく。
そうさせないためにも、俺は何をすればいいのか。
その日の鏡花との遊びは、それなりに楽しみ、彼女も、満面の笑みで遊んでくれていた。
しかし俺の笑の中には、どこか不安が隠せなかった。



♯22.家×不敵な笑みで



夜は晴れ朝が来た。
俺は今日、恋歌と出会う約束をしている。
夏休みも半分終わり、もうわずかしか残っていない今、学校で会うよりも二人っきりの場所で話しておきたかった。
話す内容はただ一つ、あの男――相馬仁のことについてだ。
聞かなければならない。今後、どうなるのかわからないから。
約束した時間は午後2時。現在の時刻は午後の1時30分だ。もう、家を出る。
俺は家の扉を閉めて鍵をかけた。そして自転車に乗り込む。
恋歌がどう答えるのか。不安と期待で俺は胸の中がいっぱいだった。
数十分後、俺は恋歌の家に来た。時間は1時50分。少し早かったが、俺は急いで玄関に向かってインターホンを押そうと思った――が、俺の視界に入ってきたのは、あの男、相馬仁であった。玄関の前に立ち、不敵に笑っている。
俺は反射的に自転車から降り、傍にあった電柱になんとか隠れるよう身を小さくして伺った。
奴は、一体なぜ笑っている…?
すると、十分なほどに笑ったのか、相馬仁はそっぽを向いて歩き始め、俺とは別方向の場所へと消え去っていった。

「何やってんだ……アイツ。恋歌の家を知ってる……」

ただ、ただ単に家に来ただけならいい。
だがそれならば笑う必要もないし玄関の前に立っておくのも不自然だ。
恋歌に何かしたのか?
俺は、急いで家の中に入りたくなり、電柱から飛び出し玄関の前に立ってインターホンを押した。

ピンポーン……

しかし、足音も聞こえず出る気配はなかった。
すると、どこからか声が聞こえた。
俺は右往左往に首を振る。声の発生は、2階の部屋――恋歌の部屋から聞こえてきた。

「……っ」

俺は嫌な予感が脳を走ったので、急いで玄関のドアノブを引いた。
先ほど、相馬人が仮に家の中に入って出てきたのだとしたら、玄関のドアは開いているはずだ。それを理に、俺は思いっきり引いた。

――ガチャ

「開いたっ!」

予想通り。
中に入って、俺は部屋へと向かう。
何度も何度もこの家には来たんだ。そして、恋歌も同じように、何度も何度も家に来ている。
場所くらいわかる。
家の中には誰もいなかった。ということは、部屋の中にいる恋歌だけになる。
もしかして、相馬はそれを知っててきたのか?
いや、今はそんなことどうでもいい。
俺はドタドタと激しい足音を鳴らしながら、階段を駆け上がり急いで部屋の場所へと走った。
そして、息を整えて扉を開く。
そこには、予想もしなかった光景と、同時に恐怖とも言えそうな怒りが増してきた。
奴は、相馬人は本当に、何者なんだ?

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