小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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「暇だな」
「ああ、暇だ」
「何かある?」
「トランプ」
「おお、真剣衰弱でもするか」
「よっしゃ」
「おいおいやめろ。健也、考。もう本編始まるぞ」

「「主人公は黙ってろよ」」

「んなっ!」



♯25.雑談×安心の時間?



「なぁ、俺思うんだよ」

ある日の日曜日。
いつもの三人組、考、雄志、健也が俺の家に来て、暇だからと言い何の準備もしないまま遊ぶことになった。
することもないので雑談でもしようかと言ったものの、まあそんなものは長続きするわけもなく、一旦沈黙が続いていた。
だが、今こうして、新たに考が口を開き始めたのである。
皆黙って次の言葉を待つが、期待などしていない。するわけがない。

「オゾン層って、何であるんだろうな」

突っ込みたくなるが、そんな気力あるわけがない。
いやむしろ、突っ込んだら、何か自分の負けのような気がしてきたぞ。

「地球を紫外線から守るためだよ」
「雄志の言うとおりだな」

至って普通な回答ではあるが間違ってはいない。

「いや、そうじゃなくてよ。つか、そのくらい俺もわかるし」
「じゃあ、何が言いたいんだよ」
「いや、ほら。どうしてオゾン層というものがこの世に発生したのかな、と」

こいつ、どこの極みを目指してやがる。
そんなこと考えても仕方なかろうに。つか、意味ないでしょうが。
すると、雄志が目を閉じ、謎の言葉を言い始めた。

「――それは、遥か彼方遠い星でのことだった」
「……っ! 雄志、お前それ……!」

ん?
なんだ。え、何? 急に何を言いだしているんだ?
俺が黙って見届けているあいだにこいつ何言いだしてんだ。
と、そんな俺の熱い視線に気づくこともなく雄志は話を続ける。
健也は妙に驚いているが俺の知ったことではない。考に至っては何かを察知したのか真剣な顔つきで話を聞いている。
まともなのは俺だけか……。
まあ、いいか。暇だし付き合うとしよう。
雄志は話を続けた。

「この地球からおよそ60光年先の星であったできごとだ。そこに住む人、いわゆる宇宙人。
奴らは、太陽の恐ろしさを知ったのだ。そのすべてを焼き尽くすほどの炎。それは、彼らにとって驚異であった」

『アレガ、チキュウニショウトツデモシタラタイヘンナコトニナルゾ!』
『ウワー! タイヘンダー!』

「そう、彼らは地球人の生まれ変わり。故郷を守るべく、彼らは最善の手を尽くし、地球を守ろうとした。なんとか、何かないか。彼らは何日も何日も考え、動き続けた」

『タイチョウ。コレヲ』
『コレハ?』
『タイヨウガハッスルチョウカデンリュウシホウトイワレル「シガイセン」デス』
『ナント…!』
『コレガ、チキュウニサイヤクヲモタラシテイルトオモワレマス』
『ダトスレバ、トメナケレバ……!』

「彼らはそこで閃いたのだ。あれ? バリアとかあったらよくね? と。それからは研究に明け暮れ、今までの技術を活かし、何日も、地球を守るために努力した。そして――」

『デキマシタ!』
『コレガ、チキュウヲマモルバリア……』
『ハイ。ソノナモ――』

『オゾンソウ!』

「て、待たんかぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁああああ!!!!!!」
「なんだ、氷河。まだ話は終わっていないぞ」
「いやもうめんどくせーよ! なんで全部カタコトなんだよ! 読みにくいわ!! 読者の気持ちも考えろ!!」
「バカ! それを言ったら終わりだろうが!」
「いや! ある意味ではあるが守るためだ!」
「おい氷河! 止めるんじゃねーよ、続きが気になるだろうが!」
「お前は黙ってろ、健也!」
「ぐふっ!?」

もう無理だ。耐えられん。
俺は、溜まったエネルギーを開放した。

「そもそも、なんで太陽が衝突することになってんだ! そこからもはやおかしいだろうが!」
「あ、いやそれはだな……」
「それに、地球の生まれ変わりだ? んなもん知るか! なんでそんなこと分かんだよ!」
「まぁ、話の種として……」
「紫外線が超荷電粒子砲とか完璧に適当すぎるだろ!」
「まぁ、うん。そう、かもね……?」

はぁ、はぁ、はぁ……。
くそ、おかげで虫の息になっちまった……。

「まさか、オゾン層にそんな秘密があったとはな……」
「いや、間に受けなくていいから、考!」

やはりこのバカ三人組が揃ったらろくなことがない気がしてきたぞ。
なんだこれは。何なんだ!

「なぁ、じゃあ、どうしてマヤ文明のやつらは予言ができたんだ!?」
「ああ、それはな。遥か昔、この大地にて――」
「まだ続けるかぁ!!」

ダメだ。
俺だけでは止められん……!
このあとも、結局続いたこの厨二病とも言える話は、空が暗くなるまで永遠と続いた。
俺はもう、気力なんてものが……。
だがしかし、最近は嫌なことしかなかったことを考えると、このどうでもいい話が、とても安心できる時間になったのかもしれない。
そんなことに気づいたのは、あいつらが帰ったあとだった。
しかし、まあそんなことは絶対にないと自分の心に聞かせ、俺は自室で少し休むことにしたのだ。
夢の中でも、やつらは出てくるのだろうな。

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