小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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途絶えることのない紛争。
現在、イスラムやケニアなどの国では、未だに顕在している。
7月2日では、イスラム武装集団が教会を襲撃し、17人の被害者、死亡者を出すなど、途絶える気配すら感じない。
何故、このようなものが収まらないのか?
難しいことではあるが、これは単に、理解しあえる環境ではないからではないだろうか?
例えば、紛争を起こす側とすれば、現在の現状が気に食わないのであり、
逆に被害を食らう側では、その起こす側の人たちに反抗をしている。
これでは事態は収拾できない。どうすればいいのか、もっと話し合うべきではないだろうか? だからと言って、こちらの日本やアメリカなどの国が意見を言ってみろ。
間違いなく巻き込まれる。
そうしないために、日本などの国も手を出していない。
でも、本当にこれでいいのだろうか? 世界は、まだまだ団結していない。
まぁ、俺も紛争はしているところさ。そう、恋歌に。
紛争とも言えるし、奮闘とも言える。
あ、ヤベ。何か、妙な視線を感じるな……。



♯3.睡眠×ノート



7月12日(木)
現在、5時間目の数学A。
いや〜眠い。実に眠い。食べた後だから、余計に眠気が来る。
俺はすでに沈没しようとしていた。上まぶたと下まぶたが電撃結婚並みの速さでくっつきそうだ。ヤバい、これはヤバい……。
なんだったら、もう寝るか? 俺の席は一番後ろだし、バレないのでは?
しかも数学の教師は原田香子(はらだ かおこ)。若い先生ではあるが、とても優しい先生だ。
……イケるかもしれない。この人ならば、きっと。
たとえ、寝ているのがバレタとしても……

『こら! 秋島君、寝てはダメですよ? 今は授業中なんですからね』
『いや〜先生すみません。昨日は、夜遅くに寝たもので』
『はぁ、もう。理由は聞きませんが、ちゃんと起きて、ちゃんと授業を受けてくださいね』
『えーちょっとばかりキツイです』
『じゃあ、特別に5分だけね』

これは、イケる……!
俺は寝ることができる! ――と、そう思っていた時、妙な視線を感じた。
視線を感じる方向へと目線を向ける。その先には、恋歌がいた。
恋歌の席は俺の2つ右斜め上だ。あまり離れてはいないが、会話するには少し厳しい。
つか、何で見てるんだ?
すると、恋歌が突然、ノートの一番後ろの紙に何かを書き始めた。
シャーペンでせっせと書いている。
あーだが、俺の眠気が、遂にピークとなった。すまん、これは本当にヤバい。
もぅ、耐え、られな、い………………。

――どこだ? ここは。あぁ、そうか。俺はやはり寝ることに成功したのか! ということは夢の中かな。いや〜しかし、これで助かった、たすか――

「秋島君!! 起きなさい!!」
「――?」

誰かの怒号が聞こえた。
きっと、先生……だと思う。はぁ、許してくれるんじゃなかったすか? 先生。
と、何かが接近してくるのがわかった。なんかこう、ビュン、て感じの。
って、コイツは!?

「痛っ! いってぇ……」

その何かが俺に接触した。
鉛筆? それとも消しゴム? 誰だ飛ばしたのは。全く、そこまでしなくても。
俺は、当たった部分を手で摩りながら(相当痛い)目を開けた。
開けた矢先、目に入ってきたのは、

「チョ、チョーク? ったく、誰だよ。………あ、ま、まさか………」

チョークを扱う人なんて、今この中には一人しかいない。
俺は、恐る恐る顔を上げる。目線は、教壇の場所へと自然と行く。
そこには、錯覚だろうか? 魔王が見えた。

「何授業中に寝てるの!! 評価下げるわよ? いや、下げます!」
「ええっ!? いや、ちょ、それは!」

何が睡魔だ。一瞬にして覚めた俺の目は、その魔王、もとい原田先生から離れることはなかった。いや、あの人マジ魔王だよ。すっごい怖いよ、あの人。

「何を抵抗しているのです! する価値もないこのドブ男がぁ!」
「ええええええっ!? いや、ええっ!? ドブ男? ドブ男っすか俺!? いや、その前にそんなこと教師が言っていいんですか? ……いいのかコノヤロォ!」

あー言ってしまったよ。敬語? もう、遅いだろう。一度タメ口を言ってしまったら最後。取り返しは付かないのだ。男らしく、ここはもう耐久戦だ!
―――と、しようと思ったが、なんとかそれは免れた。
原田先生を取り押さえる教師。きっと、隣の教室からやって来たのだろう。
さっきの「ドブ男がぁ!」が大きかったせいか、聞こえてきた教師が駆けつけ、暴れている原田先生を確保。そして、今は職員室へと連れて行かれた。
なんでも、原田先生は、怒ると理性を失い、とことん攻めまくってくると言う人格の持ち主らしい……。聞いたことねぇよ、そんな話。

「恐ろしい。もうあの人の前で寝たりなんだりするもんじゃねぇな……」

ちなみに、俺は今こうやって溜息ついているわけだが、周りではもちろん!
笑いの渦に包まれていた。

「お前、原田先生のこと全然知らなかったのかよ!」
「ウケる〜。たまにはこういうのもいいかもね!」
「ねぇねぇ、また今度やってよ!」
「馬鹿じゃねーの! 氷河の奴!」

あーハイハイ。うるさいですよ、諸君。授業中は静かにするもんでしょうが。
まぁ、寝ていた俺が言う言葉でもないが……。
こうして、先生は消えたまま授業は終わった。やれやれ、こんな悲惨なことは、もう二度と起こさないようにしないとな。
まぁ、こうやって先生の真の人格を知ることもできたわけだし。逆に言えば良かったのか?
………いや、良くないか。
まぁ、なんにせよ。とりあえず事態は終わり! 楽になろう。
俺は背伸びをして力を抜いた。――? 恋歌が見ている。
でもなんか、怒ってる……ぽい?
すると、恋歌はそのまま、その場を立ち去って行き、教室を出て行った。
机には、広げたノートをそのままに置いておいて。

「そういえばさっき、なんか書いてたよな」

先ほどの授業時間でのことを思い出す。
恋歌は俺を見た後、せっせとノートに何かを書いていた。だが、俺の睡魔がそれに追いつかず、あの事件が起こった。
恋歌は、何がしたかったんだ?
俺はノートが気になって、恋歌の机まで歩いて行った。全く距離もないため、すぐにつくことができた。ノートを手に持ち、書いていたことを黙読する。
恋歌がノートに書いていたこと。それは――

『原田先生はすっごい口調で怒るのよ。アンタ知らないの? 寝るなんて行為したら、ものすごく怒られて泣くことになるわ。ま、私は別にいいけど』

驚愕した。何に? もちろん、このメッセージである。
恋歌は、俺にこれを伝えたくて、でも、言葉では無理だから書いて伝えようと。
乱雑に書かれてあったメッセージに、とても急いで書いていたことが分かった。
俺が一番驚いたことは『寝るなんて行為』である。
恋歌は、俺が寝ようと思っていたことと、きっとバレないという気持ちが分かっていたのか? だから、こんなメッセージを。
なんだか、ものすごく悪いことをしたようで。
なんだか、とても謝りたくて。
なんだか、今はアイツに会いたい気持ちがあった。

「悪いことしちまったよなぁ……。恋歌、本当にすまなかったな」

本人には聞こえていないだろうけれど、俺は素直に謝った。
周りではまだ、クラスメイトの騒がしい声で埋もれている。

「明日は、恋歌の言うこと聞いてやるか。たまには、いいかもしれないしな」

俺は恋歌のノートのメッセージが書かれたページの隅っこに、
『ありがとう』
と書いて、机の引き出しにしまっておいた。
心の中では、もう一つ伝えようとしたことが実はあったが、それはまだ、まだ、先でも大丈夫だと思いながら。

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