小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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暑い夏。
暑すぎて嫌になる人は必ずいる。これだから冬がいいんだよ! なんて言う奴は、冬になると夏がいいと言い出す野郎だろうな。
近年、地球温暖化も進み、秋でも夏のような気温になったり、南極や北極の氷が溶けたりと数多くの問題を生み出している。
熱いのはこいつが原因の一つだろうな。
今ではエコバックやエコカーなどなど、エコ化が進んでいる。
遅い、とは思ってはいけないだろう。人類に託された義務のようなものだ。
ま、でも。恋歌の奴ときたら一年中暑苦しいからな。
冬になったらあれやこれや。
夏になったらあれやこれや。以下略。
誰かコイツと変わってくれ…………。



♯7.ゲーセン×見抜き



さて、あれから10分。歩き出した俺たちは、ある一つのデパートへと足を踏み入れた。
名を「MALL」。ここいらでは大きなデパートである。
10階建ての店内では、ゲームセンターやショッピング、食遊館と言うレストラン街、映画スタジオ、電化製品、食品物などなど。とにかくいろんなものを取り扱っており、遊ぶもよし、お買い物でもよしという万能なデパートである。
まぁ、デパート事態そんなもんか。
俺と恋歌は、最初にゲームセンターへと訪れた。ゲーセンかぁ……自慢ではないが、射撃ゲームとクレーンゲームならお得意ものだぞ。

「広いゲームセンターね。こんなにも広くうるさかったら狂ってしまいそうだわ」
「そういうなよ。ゲーセンはそれが普通なんだ。お前、来たことないのかよ?」

確かに、中にはメダルゲームなんかもあって、場所によってはものすごい騒音を生み出していた。だが、どこもそんなもんだろう。ゲーセンに入った瞬間耳が可笑しくなりそうなのは当たり前と思うぞ、恋歌。

「うるさいわね、何回か来たことくらいあるわよ。つまんなくてすぐ出たけど」

なんだ。じゃああんまりゲーセンってものを経験してないわけだな?
ほほう、ならこの俺が伝授してやろうではないか!

「別に伝授とかいいから。アンタ、そんなこと考えてないでしょうね?」
「え、あ……いやいや、そんなこと考えるわけないだろう。馬鹿馬鹿しい」

何故だ。なぜ見抜かれているんだ。
と、気を取り戻そう。恋歌は、何か欲しい景品などないのだろうか?
試に聞いてみるとしよう。

「なぁ、恋歌。お前、何か欲しい物とかあるか?」
「な、なによ急に。そうねぇ……あ、最近シャーペンが1本壊れちゃったから、シャーペンが欲しいわね。何氷河、もしかして買ってくれるの?」
「ちげーよ。このゲームセンターで欲しい物はないのかって聞いてるんだ。少しは察しろ」

普通そう思うだろ。まぁ、恋歌様のお考えは少々並の人間とは違うからな。

「何だここでね……。そうね、ないわ」
「おいおい、マジか」

と、言いつつ――実は俺はみていたのだ。
そう、恋歌の目線を。その目の矢先にあった物は――お手軽サイズのくまのぬいぐるみだった。ほんの小さな物置くらいの。
もしかして、少し気になってるのか? そうときたら、物は試しだ。

「お、あのくまのぬいぐるみ可愛いじゃねぇか! ちょっとやってみようぜ」
「は、はぁ!? 何言ってんのよ、私別にいらないわよ」

フン、そう言いつつも、目が泳いでるぜ恋歌さん。
じゃ、俺の腕前を見せてやるか。
俺は恋歌に「ちょっと待ってろ」と言い、そのクレーンゲームの元へと早足で行く。
ま、この程度なら後れを取らんだろう。
1回100円か。よし、投入。
俺は財布を取り出し、100円を投入口に入れる。音が鳴り、ゲームスタートだ。
………………
…………
……

「ホラ、やるよ」

約10分後。俺はようやくぬいぐるみを取り、恋歌の元へと戻った。
誤算だった。あんなにミスするとは……。まぁ、この件についてはもう忘れよう。結果オーライだ。

「ホラ、受け取れって」
「だ、だから別にいいって言ってるでしょ!」

はぁー。なぜこんなに往生際が悪いのだ。
あれだけ見てただろうが!
ちなみに今はゲームセンターを去り、時間も昼時となったためカフェにやってきた。
そこでランチセットを頼み、今は向かいあって食事中だ。
どうでもいいが、ランチセットの中身はトマトやハムを挟んだごく普通のサンドイッチが2つと、コーヒーだ。恋歌はミルクを入れてミルクコーヒーにしてるが、俺はミルクよりも一般の方が好きなのでスティックシュガーを1つだけ入れたものを飲んでいる。
と、そんな食事中の時だった。

「せっかく取ったんだからやるって言ってんだ。素直に受け取ったらどうだ?」
「私はそんなぬいぐるみいらないの! べ、別に欲しくもなんともないわよ!」

いや、絶対欲しいだろ。直感だが外れてないと思うぞ。
仕方ない。ここはひとつ、奥の手を使うか……。

「お前のために取ってやったんだよ。その、いるかな〜、と思ってさ」
「………!!」

あ、何か頬赤くなった――気がする。
ほらな。

「し、仕方ないわね。あ、アンタがそこまで言うんなら、受け取ってあげるわよ」
「そりゃ良かったよ。取った甲斐があるってもんだ」
「ふ、フン……」

そっぽを向いてしまったが、嬉しそうだった。
しっかりとぬいぐるみを抱きしめている姿を見ていると、本当に良かったと思える。
ああ、ちなみに、さっきの奥の手は依然考が俺に見せつけてきた雑誌に掲載されていた方法だ。なんでも『ツンデレに効く10の方法!』とかいうタイトルで載っていた胡散臭い情報集だったのだが、何か役に立ったな。
ちなみに他には『攻めまくる』や『急に優しい態度を取る』などというものであった。
まぁ、俺はそんなもの試さないけどな。ともあれ、これまた結果オーライだ。
こうして、俺と恋歌は昼食を終え、一通り館内を楽しんだ。
全く、やれやれだ。







(わ、私がぬいぐるみ欲しいって何で分かったのよ?)

どうして分かってしまったのか。バレてしまったのか。
そ、そんな態度取ってない気がするけど……。あぁーもう!
ま、まさか、氷河は、最初から全部わかってたのかな? わ、私の考え……。

『恋歌、あのくま欲しいだろ?』
『べ、別に欲しくなんかないわよ。何言ってんのバカ』
『そう言って、頬が赤くなってんぞ。取って来てやるよ』
『い、いらないって言ってるでしょバカ!』
『いるんだろ? 恋歌のためならなんだってするからよ。な? 欲しいのか?』
『う……。ほ、欲しい』

……………ボッ
って、ないないない! そんなことがあるわけないじゃない!
頭で行われた数分によるシチュエーション。
否定しながらも、何度も再生していた。
おさまりそうにないこのループは、恋する16歳の特権である。そう思いながら、何度も再生していた。
もしこんなこと起こらなかったとしても、氷河が取ってくれたことに間違いはないのだ。
そう思うと、嫌でも赤くなってしまう。
でも、一番の楽しみはこれから渡されるだろうプレゼントだ。
高まるドキドキ感は、体を、そして期待を熱くさせていた。


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