小説『俺の幼馴染は極度のツンデレ女』
作者:散々桜()

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今の時期と言えば、八朔がそろそろ食べれるようになる。
八朔とは柑橘類の果物、ってのは知ってるよな?
ちなみに八朔と言う名前は、八月の朔日に食べられる果物と言う意味でつけられた名前なのだ。つまり、八月の一日。
だが、これが八朔の食べごろは春なんだよな。
なのに八月の一日が食べ頃と名付けた人はかなり勝手な人だ。
まぁ、昔の人だろうけど。
あ、そうそう。恋歌は柑橘類で言うとみかんとオレンジしか受け付けないそうだ。
みかんとオレンジも多少の違いがあるんだよな〜。そこらへんはよく知らないけど。
ちなみに、俺はグレープフルーツが苦手なんだ。
すっぱいのがダメってわけじゃないが。



♯8.隣同士×記憶復活



時刻は6時30分。すっかり日も暮れ――てはない。夏と言うだけあってまだ明るい。
俺と恋歌はデパート10階にある休憩場へとやってきた。
自販機とベンチだけと言う、本当に休憩するだけの場所。今この時間では、皆帰る所なのか、誰もいなかった。
俺たちは適当にベンチに座り込み、隣同士に座って、そのまま沈黙になってしまった。
何と言うか、話しづらい。誰もいない場所に、隣同士で二人っきりというのは、幼馴染でも少し抵抗がある――気がする。
ちら、と隣に座る恋歌を見てみると、頬を赤くし下にうつむいていた。
なるほど、恋歌も俺と同じ心境か。無理もないか。
だがまぁ、プレゼントを渡すだけだ。俺のバッグに入っているプレゼントを渡せば、あとは帰るだけなんだ。
あ、そうだ。うっかり忘れてしまっていたが、何でブレスレットはプレゼントしてなかったんだろう。何か、理由(わけ)があったか……?
本当に、思い出せない……な。
まぁ、渡すか。

「恋歌」
「あ、は、ひゃい!」

ん? うん、まぁいいか。

「その、誕生日プレゼントだ。ホラ、受け取れ」
「あ、うん。ありがと……」

相当テンパってないか?
恋歌は俺から紙袋に入った小物を受け取ると、その場で封を開けだした。
そういえば、いつもその場であけて喜んでたっけ。何でか上から目線のコメントをもらうがな。
さて、今回はどんなコメントが待っているか――ん? 

「ど、どうして、ブレスレット……なのよ」
「あ、ん?」
「どうしてコレなの!? 忘れたの!?」
「は、はぁ!? 忘れたって、なにを……」

忘れた?
なにをだ。

「あ、おい!」

恋歌は、その物を置いたまま、ここを走り出しどこかへ去って行った。
わけがわからない。俺の脳では、思考錯誤が繰り返されていた。
どうして受け取らなかったのか。忘れた? なにを。
何か、事件でもあったのか……?
忘れた、忘れた、忘れた、忘れた、忘れた忘れた忘れた忘れた忘れた忘れた忘れた――忘れていること…………。

「昔、何かがあった……」

だから、恋歌は「忘れたの!?」と言った。そうに違いない。
思い出せ。何があった? 応えろ、応えろ脳!

「恋歌に……俺と恋歌の間であったこと……。……っ! そうか!」

思い出した。何で今頃なんだろうなぁ……。
思い出せなかったんじゃない。思い出したくなかったんだ。
それを俺はすっかり忘れるなんて馬鹿なことを……。

「昔、ああそうだ。あのできごとが……」

俺と恋歌がまだ10歳のころ。小学5年生の時。
昔っから学校も一緒で、昔っから誕生日にはプレゼントをあげていた。
そうだ。その5年生の時の恋歌の誕生日、俺はその物をあげたんだ。
けど、その物のせいで、“アレ”が起こってしまったんだ。
忘れたかった、できごとが――――


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