小説『愛と幸せ、それから死と』
作者:ララ()

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  長い長い眠りの中で、あたしは夢を見た

  あたしの目の前には一本の細い道が開けていて、それを取り囲むように

  地面には何千、何万本というろうそくがある

  そしてその全てに淡い炎が灯っていた

  あたしが一歩踏み出すたび、隣の炎はゆらりとなびき

  あっという間に消えてしまう

  くるりとうしろを振りかえると、後方のろうそくには炎が灯っておらず

  冷たい、寂しい空気が漂っていた

  あたしは怖くなって、あわてて前を見る

  前方のろうそくには、やわらかくあたたかな炎が灯っていて

  全てが光に満ちていた

  あたしはゆっくりと一歩踏み出す

  さっきまで隣で炎を灯していたはずのろうそくは

  まるで時間が止まってしまったかのように

  炎を風になびかせ、そのあたたかさを一瞬にして奪い去った

  またあたしの後ろに、暗く寂しい世界が生み出された

  前のろうそくを見つめたまま、あたしはふと立ち止まる

  前方にあるものを見つけたから

  決して見たくなかった、絶対知らないふりをしてたかったもの

  それは「道の終わり」。

  それは「炎の終わり」。

  それは「世界の終わり」。

  それは「わたしの終わり」。

  それは「全ての終わり」。

  ぽっかりと道のなくなった、ろうそくのなくなった

  なんにもない世界が、あたしの目の前にはあった

  あぁ、これが「終わり」。

  全ての「終わり」。

  あたしの「終わり」。

  あそこで、あたしの全てが終わるのか

  心では分かってるのに、それの指す意味が

  けれど足は動かなくって

  前にも、後ろにも、どこへも進めなかった

  もう一度、あたしは後ろを振り返る

  そこには、長い長い細い道が冷たい闇と一緒に口をあけていた











  その道は、はじめの方から見ると

  すっごくすっごく長いのに

  終わりの方から見ると

  すっごくすっごく短く見えた










  人生は

  始めの方から見てみると、結構長いのに

  終わりの方から見てみると、あまりに短かった










  
  残った人生の道を歩くため、必要なことはなんでしょう

  それは

  多すぎる人を愛し

  大きすぎる幸せを見つめ

  悲しすぎる死を待つことです

  あたしが、このろうそくたちに炎を灯すことは出来ないけれど

  ろうそくを、炎を増やすことは出来るはず

  この長い夢が覚めた時

  あたしは、自分という人生をもう一度見つめてみる

  それがあまりに短いものであっても

  あまりに辛いものであっても

  決して目を、そむけずに。
  





  

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