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カンカンカンカンカンカン・・・・・・・・・
踏み切りの音が異常に五月蝿い。
下校中の彩歌は踏切の前で立ち往生していた。いつもは数人のともだちと一緒に帰るのだが、今日は一人だ。友達はみんな用事があるらしい。今日は先に帰ってて、とのことだった。別に彩歌は「待ってるから大丈夫だよ」といったのだが、その友達は彩歌のせっかちな性格を承知の上で「いや、結構かかりそうだから、今日はゴメン」と言った。仕方なく一人で帰っている彩歌。この踏切の前で、すでに5分以上待っている。いつもよりほんの少し時間帯が違うだけでこうも違うのか、と彩歌は思う。
右の電車が通り過ぎている間に、左の電車が来ることを示すランプがつき、そして左の電車はなかなか来ない。着たらきたで、また右がつく。
さすがに、せっかちな性格である彩歌のイライラは限界に達していた。
しかし、イライラの原因はそれだけではなかった。もうひとつあった。
昨日から感じていた。自分の記憶の中にぽっかり開いた穴。自分の『中』に開いた空白。忘れてはいけない物を忘れているような・・・。しかし思い出せない。もどかしい。
踏み切りは電車が来なくなったのに、なぜかいまだになり続けている。
「・・・・・・、これは・・・・・・・・・、長すぎだよ・・・」
彩歌がつぶやく。
すると向こうのほうから駅員みたいな格好をした男の人が、走ってきた。ちなみにここは駅のすぐ横の踏み切り。
「どうかしたんですか?」
彩歌が駅員(っぽい男)に問う。
「まことに申し訳ありません。ただいま踏切が故障しておりまして、どうやらとうぶん開きそうにありません。大変ご迷惑をおかけいたしますが、ほかの踏切へ迂回していただけませんでしょうか」
・・・まじか。
道理で電車が来ないのに踏切が開かないわけだ。
「何で壊れたんですか?そんな急に」
「その原因は今現在調査中ですので・・・・・・」
駅員(と思われる男)はまだ何かいおうとしていたが彩歌は無視した。
彩歌はあきらめて迂回することにした。
自分の空白部分に苛立ちを覚えながら・・・。