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「あ、あった!!」
重要文献保存庫を探し始めて30分、初音が声を上げた。
「お、マジで?どこどこ?」
憐爾が初音の元へ駆け寄る。初音の指差す先、ガラスの中にはなぞの文字が書かれた一冊の本があった。まさしくローブックだ。
「おぉよく見つけたな。で、どうやってとるつもりなんだ?」
カイトが初音に問う。しかし初音はなんでもないように、
「え、普通にこうやって」
初音はポケットから何かを取り出した。手袋だった。なぜ手袋が?とか憐爾が突っ込む前に初音はすばやく手袋をつけ、ガラスに向かって思いっきり・・・・・・、
ガシャン!!
大きな音を立ててガラスが飛び散る。
「ちょ、あぶなっ」
「あ、ごめん。でもこれでちゃんとゲットっと」
初音は開いた穴へ手を伸ばしローブックを取り出した。今まで見たローブックとまた違う文字配列だ。
「ねぇ、カイト。これが『重力』のローブック?」
「たぶんそうだ。ここにはこの一冊しかないはずだからな」
カイトがうなずく。
「じゃぁ、一件落着だな」
憐爾は疲れたように部屋の中央に置かれていたいすに腰をかけた。
「でも、結局俺のout lawはわからないし・・・。俺本当に間に合うのかな・・・・・」
なんだか急に心配になってきた。今回一冊探すにかかった時間が・・・約4時間。寝なくてもいいNo existenceであるとはいえ、どうやら疲れるようだ。さすがに一日中活動はきついだろう。
「そうだな・・・。はやくout lawを自覚してもらわないと、時間に間に合わなくなる。そうだ・・・、
あいつのところにいってみようか」
「あいつ・・・ってだれですか?」
「俺の友人で元No existenceだ。もう戻っているが彼は唯一、No existenceを認識できる特殊な眼の持ち主なんだ。しかも、完璧ではないが大まかにout lawを見分けることもできる」
「へぇ、そんな人がいるんですか」
「あぁ。なかなか珍しい体質だからな。まぁ少し変人だが・・・。とにかく彼は結構この近くに住んでるから今すぐいこう・・・・・・」
カタン。後ろで音がした。
「誰だ!?」
カイトが振り向く。しかし誰もいない。
「・・・?たしかに今音がしたはず・・・・・・」
刹那、カイトの体が横に吹っ飛んだ。そのまま横のガラスにぶつかり、ガラスが割れた。
「カッ・・・ハッ」
「カイトさん大丈夫ですか!?」
「どうしたの!?」
カイトはどうやら気を失ったようだ
憐爾の二人はあたりを見渡す。
「だれもいない・・・?・・・・・・いや」
次の瞬間。
「!?」
目の前に一人の女性が現れた。瞬きひとつほどの間に。いきなり空間に現れた。
その20歳ぐらいの女性は流暢にこういった。
「ハロー。突然だけど、あなたたちの持ってる『重力』と『人間の身体能力』のローブックもらいにきました」