「えっ?」
もらいにきた、ということはローブックを誰が持っていたのかを知っていたということ。無論、初音たちは今見つけたのであって誰にも教えたわけではない。
「お前は誰だ?」
憐爾がその女性に問う。
「あらあら、年上の人には敬語をつかわなきゃ」
その女性は小ばかにしたように笑う。
「私の名前は、新川真沙美(あらかわまさみ)22歳独身でーす」
別にそんなことまだ聞いたのではないのだが・・・。
「あなたもNo existenceなの?」
初音が訊くと、荒川は、
「そうねぇ。そうなるわね。まぁあなたたちが私と話せてる時点で、そうなるんじゃないかしら?」
確かにそうだ。会話がちゃんと成立してる時点で荒川は、初音と憐爾のことを認識していることになる。No existenceのことを認識できるのは、おなじNo existenceだけ。
だが最も気になるのは・・・。
「あなた、どうやって私たちが『重力』と『人間の身体能力』のローブック持ってるって知ったの?」
しかし、荒川はどうでもないことのように、
「あぁ、それ?そのことはある人に教えてもらったの」
「ある人?」
「『案内人』か?」
憐爾と初音が振り向くと、カイトがふらふらと立ち上がっていた。
「だ、だいじょうぶ」
初音が心配して駆け寄る。
「大丈夫だ」
カイトは荒川のほうを向くと、
「あなたにも『案内人』がついているのか?」
「えぇ、そのとおり。いまここにはいないけどね」
『案内人』とは何だろう。そんな話はカイトからは聞いていない。どうやら初音もきいていない雰囲気だった。
「もしかしてそこのあなたも『案内人』なのかしら?」
荒川はカイトを指差す。
カイトは少し考えた後こういった。
「そうだ、僕は『No existence』を導くための『案内人』だ」