「人間じゃないってどういう・・・・・・」
初音の声が少し震えているような気がした。実際憐爾にも衝撃だった。自分たちはまだ人間だ。ほかの人から認識されていないだけ。しかし、カイトは自分は人間ではないと言う。どういうことだろう。あきらかに見た目は人間だ。
「だからいっただろ?僕もよくわからないって」
カイトの声が少し沈んだものに変わっていた。
「僕は気づいたときにはすでにここにいた。はじめ自分はちゃんとした人間だと思っていた。信じて疑うようなことはなかった。しかしいくつか腑に落ちないことがあった。それは、気づいたらこの状態この年齢でここにいたこと。まぁ、それは記憶喪失とか言う理由で片付けられるが・・・。2つめは誰からも存在が認識されないこと」
「ということは・・・気づいたときにはNo existenceになっていたってことなんですか?」
「まぁそういうことだ。孤独のままどれくらいのときが過ぎたかは覚えていない」
孤独・・・。人間はなんだかんだいっても人とのつながりはある。それがいいつながりか、悪いつながりかは人によっては違うだろう。家族というつながり。友達というつながり。近所の人というつながり。学校のクラスメイト。よく行く店の店員。家の近くでよく見かける人。人は絶対につながりを持っている。人間はつながりを持つことで幸せを感じる。安心を持つ。心地よさ、心強さ。本当の『孤独』というものはそれらが一切存在しない。
つながりが完全にない。誰にでもあるはずの家族すらない。誰からも見えない。誰からも気にされない。これがどれほどつらいものかは憐爾にもなんとなくわかる。誰からにも気にされないというのはさっき街中で経験済みだ。
『孤独』。それがどれだけカイトを傷つけたかは計り知れない。
「そして、いちばんつらかったのが・・・」
「・・・?」
「あるひ、いきなりだ。朝目覚めたら記憶の中に自分の知らない知識が大量に入っていた。正直気持ち悪かった。なぜ知らないはずの記憶が存在する?ありえないだろ普通。そんなこと。本当に自分が何なのかがわからなくなった。怖かった。だが僕は見つけてしまったんだ自分の記憶の中から。自分が何なのか」
そうか・・・と憐爾は心の中で思った。いきなり知らない記憶が頭の中へ入ってきたらそれは気持ち悪いだろう。そして、カイトは知ってしまった。自分が人間でないと。
「カイト・・・」
「カイトさん・・・。今あなたはつながりがあるじゃないですか」
カイトが下に向けていた顔を上げた。
そうだ・・・今僕には憐爾と初音というつながりがある。
「そうだよ、カイト。私たちがいるじゃん。そんな、いまさら沈んだ気持ちにならないでよ」
「初音・・・、憐爾・・・」
カイトは我ながら過去のことでネガティブになりすぎたと反省した。そう、今自分は孤独ではない。
「すまなかったな、2人とも。勝手にこんな風な雰囲気にしてしまって。話がそれすぎてしまった。案内人について詳しく行ったほうがいいか?もう少し」
しかし、二人は首を振った。
「ううん。もう大丈夫。敵さんもそろそろ待ちくたびれてるだろうし」
初音はそういうと新川のほうを見た。新川は欠伸をしている。
「そうだな。じゃあ行くとするか」
カイトが席をたった。すると新川が音でそのことに気づいた。
「あら?終わったみたいね。じゃあ戦闘スタートと行きますか?」
新川がこちらを向いた。そして戦闘の姿勢を作った。