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空気が一瞬にして張り詰めた。数秒前とは比べ物にならない息が詰まるような感覚。
どうも新川の姿勢は戦闘慣れしているような雰囲気を漂わせていた。まぁ、戦闘慣れしている女性というのもどうかと思うが。
「こっちから手を出すより相手の出を待とう」
カイトがぼそりといった。
三人は新川に集中する。
三対一。数を見れば明らかに憐爾達のほうが有利だ。しかし、そうと分かっていてもなお、彼女はローブックを奪おうとしている。よほど戦闘に自信があるのか・・・、それともout lawに自信があるのか。いや、その両方だろう。
新川が一歩前に歩を進めた。三人に緊張が走る。ただ歩いただけなのになんというか、気迫が違う。絶対こんな女とはかかわりたくないな、と憐爾は思いながら、その一つ一つの動作を見逃さないように集中する。さっき、新川は虚空からいきなり現れた。もしかしたら、姿をくらますことのできるout lawを持っているのかもしれない。そうだとすると危ない。
新川はまた一歩前へ進んだ・・・・・・、と同時にその姿が消えた。突然。
「!?」
「どこいった!?」
「わ、わからない。突然消えたよね、いま」
初音と憐爾は慌てていた。しかし、カイトはじっと集中していた。
カツン。カツン。
姿は見えない。が、足音は聞こえている。
「(二人とも集中しろ。特に耳にな)」
二人はそんなカイトの言葉の意が分からなかったが、耳を澄ました。
カツン。
聞こえた。たしかに聞こえた。足音が。今、目の前まで迫っている。
「(き、きてる・・・)」
「(あ、あぁ・・・どうする?)」
二人がぼそぼそと言っていると、足音が止まった。
少しの間完全な静寂に包まれる。