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日は完全に落ちてしまった。そんな中、憐爾はようやく目的の場へたどり着いた。
「ここか・・・」
普通の、何の変哲もないアパートだった。カイトの指定してきた場所はたしかにここなのだが、そういえばその人の名前も知らないし、第一部屋番号だって知らない。
「仕方ない・・・・・・。メールすっか」
憐爾は携帯をポケットから取り出し、カイトにメールを送った。返信はすぐに返ってきた。
『すまない。もう着いていたのか。こっちはあと十分ぐらいかかりそうだ。しばらくそこで待っていてくれないか?』
憐爾は了解と返信するとポケットに手を突っ込んだ。冬の刺すような、冷たい風が本当に痛い。自分の存在が消えたことを知ってから七時間弱。今日という一日は終わりを告げようとしていた。
「あぁ・・・、これが夢オチならいいのに・・・・・・」
そんな望みのないことを言ってると、すぐ後ろに気配を感じた。憐爾はゆっくりと振り向いた。
「えっ!?」
真後ろにいた一人の男。その姿には見覚えがある。
「カ、カイトさん?」
そこにいたのはまさにカイトだった。が、しかし、気になる点がいくつかある。服装がさっきまでと違うし、一緒にいるはずの初音もいない。
「へぇーカイトって名前知ってるってことは、君もNo existenceなのかな?」
カイト・・・に似た男は憐爾を指さして言った。
声もカイトと同じだったが、口調がなんとなく違う。そう、どっからどう見てもカイトにしか見えないのだが、あちらこちら、どことなく違うように見える。
憐爾はその男を警戒した。カイトに似ているとはいえ、さっきのせりふからこの男がカイトではない事は確かになった。まぁ、この男がカイトの言っていた人物なのかもしれないが、そうとも言い切れない。
「・・・・・・」
その男はそんな憐爾を見て「あぁ、」と呟き、
「そうだ、自己紹介をしよう。僕の名前は『神鳴』空人。よろしくな」
ソラトは自分の頭をかきながら、笑っていた。