「世界の法則から外れた?何言ってんの、お前。もしかして電波系?」
「そっちこそ何言ってんのよ。誰が電波系よ」
初音は電波といわれて少し怒っている様子。
「自分が置かれている状況少しはわかってるくせに、まだそんなこというわけ?」
……いや、実際はほとんど分からないのだが。
「この世界には数え切れないほどの法則があるよね。一番一般的なので言えば、『地球上にあるものは重力に従うしかない』とか」
「………飛行機とかは重力に逆らってるんじゃないのか?」
「よく考えてみて、あんたバカ?もし地球の裏側飛んでるときに、重力働いていなかったら、宇宙に放り出されるでしょ?」
……………はい、すいませんでした。俺がバカでした。
「まぁ今言ったのは一般的な例だけど、私たちNo existenceはなぜかそのような世界の法則から外れてしまってるの」
「………、仮に俺たちが、その世界の法則から外れているとして、何故存在が消されたんだ?」
「仮に……?まだ信じてないのね。さっき鬱になりかけてたくせに」
「むっ」
「じゃあ、これで……どう?」
初音はそばにあった木を蹴った。制服のスカートが翻るが憐爾は意図的に無視する。そんなことより、憐爾は今自分の目の前で起きたことに驚いていた。周が1m以上もあるような木を、ただの少女が蹴っただけで、ポッキリと折れた。木は大きな音を立てて倒れる。
今ので憐爾はようやく信じた。理解(わか)った。
「ふぅ……。これで信じてくれた?私の外れている法則は、『人間としての限界』」
憐爾はすぐ認めることが嫌いなので。あえて、疑惑の目を初音に向けた。
「む。まだ信じてないのか………。んじゃあこんなのにトリックがあると思う?」
どうやら初音は負けず嫌いな性格らしい。
初音は真直ぐ上へ跳躍した。およそ4,5m。人間としてはありえない跳躍力。
憐爾は上を見上げようとしたが、あることを思い出しやめた。そして下を向いた。
「どう?これで信じ……」
初音は上空から憐爾を見た。憐爾は顔を伏せている。初音は始めなぜ顔を伏せているか理由が分からなかったが、自分の服装を思い出し、気づいた。自分の服装は制服。しかもスカート。
初音は着地と同時に顔を赤くした。
「み、みた?」
「見てません………グハッッ!」
間髪いれずキッパリ否定。したにもかかわらず、さっきの怪力でアッパーを喰らった。
憐爾は宙を舞い、気絶した。
実際は何も見ていないのに。
そんなこと思ってもすでに気絶済み。