小説『オニが出た日』
作者:夢色真珠()

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 もうじきお祭りがあって、この『音』はそのときに使う太鼓の練習音だ。
町の小さな公民館で練習をしているので、太鼓の音がもれてくることがある。
ウルサイ・・・と僕は思うのだけれど、町の人はお祭り前の恒例だ、といって
さして気にもしない。
まぁ、今だけだから我慢するけどさ。

 妹はどうやらこの『太鼓の練習音』が『鬼(オニ)が来る音』に聞こえるらしい。
ドンドン!という音が、すんごい大きな鬼が足を踏み鳴らす音だとでも
思うのかな?

 僕の後ろに隠れるようにして立っている唯は本気で怖がっているようだ。

 ・・・バカだなぁ、コイツ・・・

 僕は妹を見下ろして、ふぅ〜と溜め息をもらした。

 妹はいつもこうだ。
一人で騒いで、一人ではしゃぐ。
なのに、お父さんもお母さんもそんなコイツにすごく甘い。
騒いでも、イタズラしても、たいして怒らないんだ。
僕がイタズラするとすごく怒るのに。

 妹は『妹』だからいいんだってさ。
僕は『お兄ちゃん』だから、もっとしっかりしろっ!っていつもガミガミ。

 唯をちょっとでも泣かせるようなことをしたら

 「お兄ちゃんなのに、妹に何してるのっ!」

ってすごい顔をして怒るんだ。

 別に僕は好きで『お兄ちゃん』になったわけじゃないのに。

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