怖がっている唯を見て、僕はちょっとだけからかってやろうかな?
と思った。
お母さんはお祭りの役員に選ばれたとかで、忙しくて唯をかまってやれない。
だから少しぐらいからかってやっても大丈夫そうだ。
「唯、鬼がいるかどうか見に行こうか?」
「えっ、こわいよ・・・」
「大丈夫だよ、少しだけ見に行くだけだから」
そういって僕が歩き出すと、唯は慌てて後についてきた。
一人きりになるのが怖いらしい。
着いた先は僕の家が物置として使っている、古い小屋だ。
そこにはお祭りで使う太鼓の予備がおいてある。
町内から預かっていることを僕は知っているんだ。
入り口にどさっとランドセルを放り投げると、太鼓がおいてあるところまで
ずんずん歩いて行った。
唯も慌ててついてくる。
「なぁ、唯。
『オニが来る音』ってこんな音じゃないか?」
僕は太鼓のバチを取り、適当に叩いてみた。
―― ドコドコ、ドコドコ、ドコドコドンドン ――
「そう!このおと!」