第十九話「買い物での出会い」
時刻は午前八時…。
「ふあぁ〜あ…眠い…ったく昨日もいろいろ大変だったからな…」
俺はゆっくり起き上がり、重い体を動かしながらベッドから出る。階段を降り、玄関のドアを開けると、
新聞受けに、新聞や広告などが詰め込まれていた。
「ったく…もっと丁寧に入れろっつうの!」
俺は少し小声で文句を言いながら新聞と広告を取ると、それを小脇に挟み、片手で欠伸をしながら、
もう片方の手で頭をかきながら、家の中に入って行った。
俺がリビングの扉を開け、電気をつけようとした次の瞬間、突然電話のベルが鳴り響いた。
「うわっ!」
俺は突然の電話のベルの音に驚き、心臓の鼓動が早くなるのを感じながら受話器を手に取った。
「え〜と、もしもし?」
〈…おはよう、響ちゃん…〉
―この声はまさか…!?
俺は思わず受話器を置いて、電話を切ろうとしてしまった。
〈今電話を切ったら、あなたの首も切ることになるわよ?〉
「すみませんでした……」
―まさかこの話の仕方…昨日燈が言ってたことが?
「なぁ、姉ちゃん…単刀直入に聞くけど、何の用?」
〈何の用ですって?…自分が一番よく分かっているんじゃないかしら?何か私に隠してることなぁ〜い?〉
「えっ、…い、いや別に、特に何も隠してない…と思うけど?」
俺はあくまでシラを切るような口調で話し続けた。
〈へぇ〜?本当…なのね?信じていいのね?〉
その悪魔に尋ねられるような言い方…。
―くっ、これは後でバレたら偉い目にあう…(体験談)ここはもう正直に話した方が罪が軽いってもんだ!
よし、こうなったら…。
「分かった…正直に話す…実はカクカクシカジカで…」
〈へぇ、そうなの…空から美少女がねぇ……響ちゃん?あなた、本当にその話が通用すると思ってるの?〉
「いやいやいや、本当なんだって!信じてくれよ!」
〈ええ…信じるわ…あなたの想像力がとっても豊かだってことはね…〉
「いや、そうじゃなくって…そうだ!燈に聞いてみてくれよ!あいつなら、
この話を信じてくれるから…燈は?いる?」
〈ちょっと、待ってね?〉
茜姉ちゃんはすぐさま、燈に代わってくれた。
〈もしもし…〉
何だか脱力感溢れる口調…。
「どうかしたのか?」
〈どうもこうもないわよ!あんたの、あの朝の光景をみたら脱力だってするわよ!〉
「だから、あれは誤解で…あいつらは、本当に悪魔なんだって!!その証拠に、
こいつら空から降ってきたんだから…」
〈…ふん!そんな話信じられるわけないでしょ?〉
―全く…どうして人が正直に話しても信じてくれないんだよ!俺は本当のことを言っているだけなのに…。
まぁ、無理もないか…何せ、本当に悪魔がまさか空から降ってくるなんて思わないものな〜。
だが、現に二階の俺の部屋には、既に悪魔が五人程いるんだよ…。見た目は人間みたいだが…。
〈分かった…もういい…あんたの事心配してた奈緒にも、ちゃんと説明しておいたから今、かわるね?〉
「ああ…」
しばらく話が途切れていたが、かすかに声が聞こえていた。しかも、誰かのすすり泣く声…。
この声からして、恐らく女の子だろう…。
〈ぐすっ…もしもし、お兄ちゃん?〉
「えっ?奈緒、何で泣いてんだ?」
〈だ、だって…お兄ちゃんが…お兄ちゃんがグスッ!〉
― 一体、あいつら奈緒に何を話したんだ〜!!?
俺はよく分からず、奈緒に詳しい話を聞くことにした。
「一体、燈達から何を聞いたんだ?」
〈グス…だって…お姉ちゃん達が、お兄ちゃんが悪魔にたぶらかされて、頭がおかしくなったって…〉
―ちょ、ちょっと待て!一体、どういう解釈の仕方してんだ!?俺は悪魔に苦労をかけられてる、
と言っただけで、たぶらかされてるなんて一言も言ってないぞ?
「なぁ、奈緒…悪いが燈にかわってくれるか?」
〈…グスッいいよ…〉
―奈緒…すまねぇ。何とかして、もう一度燈達にちゃんとした真実を話してもらわねぇと…。
〈もしもし?何?何度も人を呼んで…!〉
「お前、何とんでもねぇ作り話してんだ?ちゃんと真実を話せよ!」
〈えっ?真実でしょ?だって…あんた、女の子達といつもイチャついているんでしょ?〉
「はぁ〜?一体誰から聞いたんだ?」
〈よく、わかんないけどあんたの友達だって…なんていったかな…確か…あ…あ、藍…?〉
―あの…変態(バカ)か!!
〈やっぱり、知り合いなんでしょ?〉
「あのバカ…とんでもねぇ嘘作りやがって…それはあいつのでたらめだ!俺は別に、
あいつらとイチャついてるわけじゃなくて…」
と、その時だった。あまりにも、俺が大声で話していたせいだろう…。
瑠璃が目を覚まして、一階に下りてきたのだ。
「ん?響史…誰と、話してるの?」
「えっ、いやちょっと…!」
〈まさか、響史…あんた、昨日のあの子と同棲してるの!?〉
「違う!!」
―それはとんだ勘違いだ…。こいつらはただの居候だって!と言ってもどちらにせよ、
あまり意味は変わらないのか?
〈とにかく、その子に変わって!〉
「はぁ?別にいいけど何話すんだ?」
〈いいから!〉
「分かった…」
俺は仕方なく瑠璃と電話を変わった。
「響史?何…」
「燈がお前に用があるってさ!」
「あかり?」
瑠璃はまだ寝起きで、きょとんとしたまま、意味が分からないでいる。
「もしもし?」
とりあえず、瑠璃が声をかけてみる。
〈あなたが、瑠璃とかいう子ね?響史とはどういう関係なの?どうして、響史と一緒にいるの?〉
「え?私はただ、響史に助けられただけで…恩人ってとこかな?」
―…何だか、このまま話を聞いているのも飽きてきたし、腹もすいてきたし朝ごはんでも食べるかな…。
俺はリビングに向かい、そこから通じている台所に向かうと、袋をあさりながら、
アンパン五個と飲み物として、ホットミルクを用意した。そして、それを両手に持って、
少し散らかっているテーブルの上に、ジャマなものをひじでどかしながら強引に置いた。
「さてと…食べるかな…」
俺がアンパンを片手に一口食べようとしたその時、急に瑠璃が扉を開けた。