小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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そして、俺達はようやく俺の家にたどりついた。俺はポケットから鍵を取り出すと、

二重ロック式の鍵を開け(といっても、既に壊れているのだが…)中に入った。

もう、既に時刻は午後一時をまわっていたため、少しばかり腹が減って力が出ないものの、

女の人一人くらいはおぶることは出来た。

「…すぐに、手当てしますから、そこで待っていてください!」

俺は女性を、玄関の靴を履く場所の背中が壁にあたって、せもたれがわりになる位置に座らせるとすぐに、

俺は救急箱を取りに、リビングへと向かった。

「なぁ、瑠璃!救急箱、この間使って何処にしまった?」

「え〜?たしか、収納棚の中にあると思うけど?」

俺は彼女の言うとおり、収納棚を探しまわり、ようやく白い救急箱を見つけ出した。

「あった!…お待たせしました…すぐに手当てしますから」

俺はそう言って、お姫様抱っこのような状態で彼女を抱え上げ、リビングに運んだ。

「えっ、あの…」

水色の髪の毛の女性は俺に何か言いたそうだったが、口を閉じて言うのを止めた。

「少し、ヒヤッとするかもしれませんが、シップはりますね?」

「あっ、はい…」

俺は丁度いいサイズに、はさみでシップを切り刻み、彼女の細くて白い足にはった。

その瞬間、彼女から

「ひゃっ!」

という小さな悲鳴が聞こえた。

「あっ、ごめんなさい痛かったですか?」

「あっ、いえその少し冷たくて…」

俺は救急箱を閉めながら彼女の言葉を聞いていた。

「ありがとう…これではっきりしたわ…。あなたならば、世界の崩壊を止めてくれそうね…」

「えっ?」

「あっ、そういえばまだ言っていなかったわね…実は、私太陽系の一人で、水星の守護者なの…」

「太陽系の一人?」

「うん…もしも商店街で私を助けてくれなかったら、あなたを殺していたわ…本当に良かった」

「確かにそれはよかったです…」

―本当…助けてよかった。危うく死ぬところだったぜ。


「そして、あなたには第二関門を、突破してもらわなければならないわ!」

「第二関門?」

俺は彼女に聞いた。

「そう…これからあなたには、私と一緒に戦ってもらうわ…さぁ、これを使って?」

そう言って、俺は彼女から剣を渡された。

「な、何を…」

「今からあなたには、私がつけているこのカチューシャをとってもらうわ!どう、取るかはあなたの自由…。

例えあなたに助けられたとしても、手加減はしないから気をつけてね?」

―そんな笑顔で言われても…。


どうやら、俺はこれから彼女と戦わなければならないようだ。

「そういえば、まだ自己紹介してなかったわね…でも、本当なら私の名前くらい、

顔をみればすぐに分かってほしいものだけど…次からはちゃんと覚えてよね?

私の名前は『水滝 麗』…。太陽系の水星の守護者よ!」

「でも、ここで戦うわけには行きません…家が壊れるし…中央公園に行きましょう…」

「平和主義者なのね…」

「ええまぁ…」

俺は水滝さんにほめられたようで、少し嬉しかった。

「でも、この時間帯じゃ、まだ子供達が遊んでるはずよ?それに…―」

グゥウ…。

聞こえてきたのは腹の音だった。

「お互いに、お腹も減ってることだしね…。だから、決戦は時刻午後九時でどうかしら?」

「いいですよ?…午後九時ですね」

「ええ…じゃあ、また後で……。しっぷ、ありがとう」

俺は最後に水滝さんにお礼を言われた。

「あ〜っ、響史…顔赤くなってる〜!」

「なっ、ち…違うって!」

「あら、本当ですわ!」

「なっ、霰まで!」

俺は相変わらずの雰囲気の彼女達を見て、怒りながらも笑っていた。



そして、約束の午後九時の一時間前…。日もすっかり落ちて、辺りは真っ暗になっていた。

住宅街を、転々と白い電灯の光が照らし出す。俺は、晩御飯を早めに済ませておいて、準備を整えた。

夜は少し冷え込む、という天気予報を信じて、簡単に上が、着脱出来るような服を着て、

九時になるのを待った。九時まで後十分ほど…。

―そろそろ家を出れば丁度中央公園に着くくらいだろう。


俺はそう思って、靴を履きに玄関に向かった。少し大きめのサイズの靴を履き、かかとをきれいに合わせる。

「じゃあ、行ってくる…」

「なるべく、早く戻ってきてね?」

「ああ。分かってる…」

俺は瑠璃にそう言って、壊れた玄関ドアを開けると、中央公園に向かった。



時刻は午後九時…場所は中央公園の、ど真ん中…。俺は腕につけておいた、銀色の腕時計と、

何度もにらめっこをしながら、水滝さんが来るのを待った。そして、ようやく彼女らしき人影が姿を現した。

「どうやら、あなたの方が早かったみたいね…」

「いえ、ちょっと俺が早めに家を出たんです…。だから、大丈夫ですよ?」

「そう?」

「所で、勝負の件ですが…」

「それなら、安心して?ちゃんと、あなたの武器も持ってきてあるから…」

そう言って、水滝さんは俺の一歩手前の位置に鞘から抜いた剣が刺さるように放り投げた。

「えっ、これは?」

「私が昔、練習用に使っていた剣なの…。安心して、ちゃんと刃を研いできたから、切れ味は抜群よ?

試しに、この大根を斬ってみて?」

俺は彼女に言われるがままにし、大根を切った。すると、まるで新品の刀の様に、

スパン!

大根が二つに分かれた。切れ口を見てみると、殆ど斬る途中でつっかえた後などない。見事だ…。

「そして、これが私の愛刀の剣『村雨』…。型は五つほどしかないけれど、必殺技があるの。

元々、この必殺技…というよりも奥義は、五つの型が破られた時に使うために編み出したものなのだけれど、

今まで、この五つの型を破ったものはいないの…だから、もしもあなたが私の五つの型を破り、

必殺技を出させることが出来れば、この指輪以外に有力な情報を教えてあげる…」

「有力な情報?」

俺はその情報が何なのか、本当に、俺にとって必要な情報なのかは分からなかったが、

何だか知りたい衝動に駆られ、つい頷いてしまった。

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