小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「ルールは、神童君の家で話した時と同様、私のつけているこのカチューシャを……あっ、ごめんなさい!

ついうっかりして…」

彼女は慌てて、何処からか取り出したカチューシャを、水色の長い髪の毛が生えた頭にはめた。

水色の髪の毛の所々から黄色のカチューシャが見えている。水滝さんは剣を前に構え、鞘から抜き取った。

―気のせいだろうか…動作が少し霄に似ている…。


「じゃあ、始めようか?」

「あっ、はい…」

俺は少し、相手に気を取られて、タイミングをずらしてしまった。

「じゃあ、私からいくよ?」

水滝さんの合図と同時に、彼女は足を地面に踏み込み、一気に前に進み出ると、

そこから勢いよく俺に向かって剣を振るった。

「おわっ!」俺は間一髪の所で、ギリギリかわし傾く体を受け身でかわし、調整した。

「これは、まだまだ序の口…」

それからも、ず〜っと彼女のターンで、俺は相手に攻撃されてばかりで、全く反撃出来ていなかった。

「どうしたの?どうして、反撃してこないの?まさか、私を傷つけるのが怖い?

でも、そんな甘いこと言ってたら…」

「ぐっ!?」

痛みを感じ、俺はふっと腰の辺りを見ると、黄色の服から真っ赤な血が滲み出ていた。

「なっ!…いつの間に?」

「ふふふ…これが、私の一の型『水刃』…」

俺は声のする方にさっと体ごと顔を向けると、そこには血が滴り落ちる剣を握った、水滝さんがいた。

しかも、その時の彼女の表情は、暗闇の中で電灯に色白の肌が照らされ、不気味さを引き立たせていた。

―嘘だろ?今の攻撃全然見えなかった。そんなのってアリかよ?


俺は焦りを隠せなかった。どうすればいいのか分からなかった。

だが、護衛役の零と戦った時よりかは、まだマシだと思った。

しかし、その考えは甘いんだということに後で気付いた。その後もどんどん攻撃を与えられ続けた。

何とか相手の攻撃にもパターン性がみられ、それらの攻撃はかわせるようになったが、

どうしても、あの水刃という型がかわせない。

―せめて、相手に近づくことが出来れば…。


そう思う俺だったが、そんなにも上手く行く方法など見つかるわけもなく、俺は途方に暮れていた。

時間だけが、刻々と過ぎていき、俺は必死に相手の技を懸命にかわしていた。

その時、彼女のある異変に気付いた。何と、水滝さんが疲れてきていたのだ。

どうやら、あの水刃という型は相当な体力を要するらしく、敵に持久戦に持ち込まれてしまったら、

おしまいのようだ。そう考えた俺は相手の体力を削ることに専念する事にした。

まず、簡単な攻撃は完全に防ぎ、水刃はギリギリの所でかわすようにした。

すると、最初は曲がって攻撃できていた彼女が、まるで猪が真っ直ぐにしか進めないように、

曲がれなくなっていた。そして、俺は確信した。

―間違いない、彼女は疲れてきている。そうと分かれば、水刃攻略まで後もう一歩だ。


俺はそう自分に言い聞かせ、相手の攻撃をひたすら、さっきと同じパターンで繰り返していった。

それから約十分後…。彼女はついに、動きを止めた。

「はぁはぁ…どうして攻撃が当たらないの?」

「もう、あなたの水刃は攻略しましたよ…」

「へぇ〜、どうやらこの技の弱点を見破ったみたいね…まずは、一つといったところかしら?

でも、まだ型は後三つあるし…」

そう言って、彼女はまたしても姿を消した。

すると、彼女は放物線を描くように剣を振るった。すると、剣から水が吹き出し、

俺の立っている場所から約十メートル程が水浸しになった。それと同時に、

彼女はさっと後ろにジャンプして俺との距離を保った。そして地面に剣を突き刺し言葉を放った。

「二の型『水固』!!三の型『水影』!!」

「何!?」

グサッ!

一瞬のことだった。俺は、背後に殺気を感じ、攻撃を防ごうと体を動かそうとしたが、動かなかった。

「ボフッ…」

ビチャビチャ!

口から血が滴り落ちる。しかも、下を見れば、腹から真っ赤な血をつけた剣が突き出ていた。

「ごめんね、神童君…でも、これは勝負だから、手加減するわけにはいかなないの…許してね?」

その悲しそうな顔…相変わらず俺の脳裏に焼きついたままでいる。

「ぐっ…言っておきますが、俺はこんなもんじゃ死にませんよ?」

「えぇ…!?ど、どうしてまだ喋れるの?普通の人なら…もう喋るどころか、

立ってることもままならないはずなのに…。神童君…あなた一体何者なの?」

「へへ…ただの、悪魔に囲まれた人間ですよ…。でも、さすがにこの状態のままだったら、

大量出血で死ぬかもしれないですね…」

俺は腹から突き出た剣をガッシリ掴んだ。

「や、やめて!そんなことやったら、手が…!」

彼女が止める頃には、もう遅かった。俺の手の平からは、ボタボタと赤い血が滴り落ち、

地面を赤く染めていた。その光景に、さすがの彼女も耐えられなくなったのか、急に技を止めた。

俺の腹から剣が消え、体の自由も戻った。しかし、俺の腹にあいた穴からは、

未だに血がたくさん出てきている。

「うっ!」

俺は片方の手で傷口を押さえた。しかし、隙間からどうしても血が滲み出て完全に塞ぐことが出来ない。

俺は携帯で霊を呼んだ。

「もしもし…霊か?」

〈霊なら今、お風呂だよ?〉

「その声は、瑠璃か?」

〈響史?どうしたの、その声…凄く苦しそうだけど…〉

「霊にすぐ中央公園に来るように伝えてくれ!」

「戦いの最中に電話は禁止だよ!」

「うわっ!」

いきなり、水滝さんに攻撃され、俺は携帯を落としてしまった。

バキッ!

「ああ!!!俺の携帯が〜!」

彼女は、俺の携帯に天誅を下した。俺の携帯は壊れ、使い物にならない状態になった。

そればかりか、データも全て破損…原型も留めていなかった。

「そ、そんな…これ高かったんですよ?」

「そんなの関係ないもん!戦いの最中に、電話なんかする方が悪いんだもんね!」

俺は、悲しみと怒りを抑えながら立ち上がった。まだ、傷口がズキズキ痛む。

「いい加減に、本気を出してくれない?」

―もう十分に本気を出しているつもりなんだが…。にしても、あの二と三の型のあわせ技は、

少しばかり厄介だな…。このままだと確実に俺が死んじまう。どうすれば…何とかあの技を防ぐ方法は?

俺が相手の攻撃していない今の間を有効に使い、考えていると水滝さんが口を開いた。

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