小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「何を考えているのかは知らないけれど、私の型の攻略方法を考えているんだったら、

今の内にあきらめなさい!今まで、戦った中でも、私の二と三の型のあわせ技の攻撃をかわす、

もしくは防いだ相手は、ほんの数人しかいないのよ?とても…ってわけじゃないけど、

素人剣士のあなたには、ムリに決まってるわ!」

その相手の言葉に、俺は少しカチンときた。

「なっ、んなことねぇよ!俺にだって…出来る!…と、思う」

「既に今のその間が答えを示しているわ!悪い事は言わない…今すぐこの戦いで負けを認めなさい!

私だって、弱い人間を殺すのはあまり趣味じゃないの!寝覚めも悪いし…」

俺は相手からの、散々な言われようにだまっていられず、なりふり構わず相手に切りかかった。

しかし、やはり相手に隙はなくどうしても防がれてしまう。

「人が話しているんだから、ちゃんと人の話を聞きなさいよ!」

水滝さんは腰に手を当てて、ためいきをつく。

「はぁ、すみません…」

「全く…とにかく、あきらめなさい」

「それは、出来ません!」

「はぁ〜どうして?」

彼女は俺の発言に呆れながら、一応理由を聞いてくれた。

「俺があなたと戦う目的は…もちろん天界に行くためです…。でも、本当はそれだけじゃないんです…。

瑠璃のお母さんに魔界が企んでいる計画を阻止してもらうためでもあるんです!それに、

俺はこの人間界を守らないといけない。じゃないと、あなたもこの世界から消えることになるんですよ?」

「言っておくけど、私達太陽系の守護者は…既に世界の理から外れた存在だから、消えはしないわよ?」

その言葉に俺は

「えっ?」

と声を上げてし合った。

「う、嘘…」

「なんで、私が嘘をつかないといけないのよ!」

「ごもっとも…。でも、とにかく俺はあなたに勝たなくてはならないんです!どんな手を使ってでも!」

俺は拳を握り、相手に俺の覚悟を伝えた。

「仕方ないわね…本当に聞き分けのない子なんだから…でも、その勇気は認めてあげるわ!」

彼女はそう言って、剣を天空に向かって高々と上げると、魔力を込めてその剣を勢いよく振り下ろした。

「四の型『水溶』!!」

その瞬間、俺の足元が急にぬかるみ、脚を掬われた。

「うわぁっ!な、なな何なんだ!?」

「ふふ…これは、水溶と言って水に触れたものを液状化させることが出来る技なの…。これを使えば例え、

コンクリートだろうと、水の様にドロドロの液体になるわ…」

―くっ!まさか、そんな技があるとは!まずい…足がまるで底無し沼にはまったように、

身動きが取れない…。


「さごがしつらいでしょうね…さぁ、もう一度いうわよ?今すぐ降参なさい!」

「嫌だ!」

「くっ、往生際の悪い子ね…だったら追い討ちをかけてあげる!!五の型『水爆』!!」

「なっ!?」

彼女の言葉と同時に、俺の頭上めがけて何かが上空から落ちてきた。

「あ、あれは!?」

「あれは、水爆…特殊合金の入れ物の中には相当な量の水が入っているの…。

でも、ただの水じゃないわ。死の水…爆薬が込められているから、水爆死するの…しかも、

あなたはその場から動くことが出来ない…。もしも、私がこの腕を振るい、

指示を出せばあなたは爆死するってこと…。どう?怖いでしょ?…だから、さっさと降参して!」

「くっ…うっ、…こ、断る!!」

「もう、頑固者なんだから!どうなっても知らないわよ?」

「望むところだ!!」

俺は覚悟を決めて、歯を食いしばった。とその時、奇跡とも思える出来事が起きた。

「ひやっ!!」

「な、何だ?」

「やっ、誰なの…!?」

暗闇でよく見えないが、よく見ると何と水滝さんの胸を何者かが後ろから触っている…。

―まさか、痴漢か?最近物騒になっているとは聞いていたが…。


しかし、相手は男ではなく、こともあろうか俺と同じくらいの年齢の緑色の髪の毛を持ち、

変わった服装をした少女だった。

「へぇ〜…なかなか、いい胸してるわねアナタ…。でも、それでも私の方が勝ってるかな〜?」

「な、何なのあなた!いきなり人の胸触ってきて…」

「私のこと、知らないの?はぁ…これだから、人間は…」

少女は俺の近くにやってくると、俺の頭をわしづかみにし、さほど力も入れず意図も簡単に、

俺を底無し沼状態の足場から、救ってくれた。そして、俺を安全な足場の場所に運んでくれた。

「あ、あの…」

「礼ならいらないわよ?人間から礼なんか言われても、ちっとも嬉しくなんかないから…」

「はぁ…」

俺は彼女の言うとおり礼を言うのは止めた。

「……やっぱり、何だかムカつくから礼を言いなさい!」

―どっちなんだよ!?


俺は軽くツッコミをかました。

「あ、ありがとう…」

「はあ?それが、人間のお礼の仕方なわけ?もっと、ちゃんとした礼をしなさいよ!」

「どうやって?」

「全く…役立たずの人間ね…だから、こうやってありがとうございました!!ってやるのよ!」

「いや、別にお礼を言われるほどの事は何も…―」

「あんたに言ってるんじゃないわよ!!」

「えっ?違うのか?」

「もう、ヤダ!何で私が、こんな能無しの人間に付き合わなきゃいけないの?

もう…ストレス溜まり過ぎて死んじゃったらどうしてくれんの!?」

―それくらいでは死なないと思うが…。ていうか、さっきから能無しの人間とか、

役立たずの人間って言ってるが、こいつは人間じゃないのか?…ま、まさか悪魔!?―…なわけないか、

第一こいつそんな気配ちっとも見せてねぇし。


「さっきから、何人のことジロジロ見てんの?…ははぁ〜ん、さては私の体を見て興奮してたんでしょ?

この変態!」

「なっ、んなわけねぇだろ!この俺が、お前みたいな奴に何で興奮しねぇといけねぇんだよ!!」

「なっ、誰に向かってそんな口聞いてるわけ?」

「お前ですが!?」

「きぃいいい!!!ムカつく、この男マジムカつく!!今すぐ殺してやりたい!!!

…ところだけど、今日は残念だけど、人間を殺すようには指示されてないのよね〜。

実に残念…私の今日の目的はそこにいるアナタ…」

「わ、私?」

「そっ!アナタに私は用があるのよ…。悪いんだけど、あの変態に証渡してくれない?」

「えっ!?」

「なっ、何言って!?…それに、俺は変態じゃないっつうの!!」

「変…じゃなかった、神童君にどうして証を渡さないといけないのよ!」

「すみません、水滝さん…今、一瞬変態って言おうとしてましたよね?」

「あはは…ご、ごめんね?つい…」

俺は心の中で思った。

―なんだろう、この胸の奥に深く突き刺さるような悲しい思いは…。


俺は立ち上がると言った。

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