小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「どうしたの、響史?そんなに大声出して…傷に触るよ?」

「はぁはぁ…そ、そうだな」

俺は冷静になって、とりあえず、そのボトルを机の上に置いた。

「まぁ、使用上の注意も分かったことだし…、中身を…ってあれ?おい、霊これ中身は入ってないぞ?」

「そりゃ、そうだよ…まぁこの紙を見れば分かるから…」

「は?」

俺はよく分からず、とりあえず霊から何かの紙を受け取った。すると、そこにはこう書かれていた。

〔ウンタカの鼻水の組み立て方〕と…。

―えっ、何!?本当に何なの?いたずらなの?…組み立て方ってどういうことだよ!


瑠璃達は、俺が何をしているのか、分かっていないようで、不思議な顔をしていた。

―不思議なのはこっちだよ!なんなんだよこの紙…。


俺は意味不明なその紙切れに文句をつけ、机の上に叩きつけると、腕組をしてそっぽを向いた。

「ちょっと、どうしたの響史?」

「どうしたもこうしたも、その紙切れがふざけたことぬかしてんだよ!」

「えっ!?」

霊は俺が放置している紙切れを掴み、中身を開いた。

「あっ、ごめん響史!間違えちゃった!」

俺は彼女のその言葉を聞いて、少し安心した。

―ふぅ、出す紙を間違えたんだな!よく、あることだ…。


だが、実際には、そんな甘いものではなかった。

「これでよし!はい、響史…こっちが正しい説明書だよ?」

「ふぅ…さんきゅう霊…―」

俺は一気に言葉を失った。そこには、さっきの紙の、ウンタカの鼻水の組み立て方という部分の、

組み立て方が、ただ単に作り方に変わっていただけだったからだ。

「お、おい…これどういうことだ?」

「どうって…だから、文字を間違えてたんだよ!私ったらドジふんじゃって…ごめんね?」

「そういう問題じゃな〜い!!俺は、このウンタカの鼻水の組み立て方じゃなくて、

作り方という言葉に問題があるって言ってるんだよ!」

俺は紙切れの文字を指差して言った。

「この、ボトルだってそうだ!なんなんだよ、この説明は!!」

「えっ?」

霊は俺から受け取ったボトルを見つめた。

「あっ!…響史これ…違うボトルだよ?」

「えっ?」

「ほら…これ、外側をカモムラして隠してるだけだよ…。だから、これを外せば…」

ペロリ…。

薄いシールのような紙が外されると、そこには本当の使用上の注意が書かれていた。

「ホントだ!」

俺は驚きながら、霊からボトルと外された紙切れを奪った。俺は、

― 一体誰がこんなことをしたんだ?

と思い、開発者の部分を見てみると、そこにはこう書かれていた。

〔水蓮寺 霄〕と…。

「お前かぁああああ!!!」

「ふっ、いつバレるかと待ちわびたぞ?」

「お前は一体何がしたいんだ!?」

俺は傷の痛みが、だんだん酷くなってくるのを感じ、急いで本物の使用上の注意を見た。

「〔一つ…暗がりには置かないで下さい…二つ、温度調節には気をつけてください…。

常に温度を18℃に保ってください…〕」

―寒っ!!?


「〔四つ…日向ぼっこを始めるので、直射日光の当たらない場所で保管してください…。

or太陽の光に当てると、大爆発を起こしますので、直射日光の当たらない場所で保管してください…。

さぁあなたはどっち?〕何でクイズ形式になってんの!?」

「そうだな…私はやっぱり二番で!」

―えっ、答えんの!?


俺は、何がなんだか分からなくなってきた。止血するための道具が揃ってないため、

血は出続け、既に俺は軽く、貧血状態に陥っていた。頬がげっそりとして、既に潤いがない状態だ。

「はぁはぁ…もう疲れてきた」

「ああ…大変、響史が貧血になってる…。霊…早くウンタカの鼻水を用意して!」

「う、うん…。霰〜、霰!!」

霊は口の周りに手を構え、メガホンの様な形にすると、大声で霰の名前を呼んだ。

「何ですかお姉様〜!!!」

「うぅ…そのお願いがあるの!」

「お姉様のお願いでしたら、何でも聞いてさしあげますわ!!」

「え!本当!?じゃあ、このウンタカの鼻水を今すぐ作って!!」

「エェ!?…う、ウンタカの鼻水ですの?」

「うん…何でもしてくれるんでしょ?」

―何だろう…いつもは霊の方がかわいそうなのだが、今日は霰の方がかわいそうに見えてくる。


「わ、分かりましたわ!この変態…のため、というのは少しばかり、

尺に触りますが…お姉様の頼みでしたら、聞かないわけにはいきませんわ!この、水蓮寺 霰…。

命に代えても、必ずやウンタカの鼻水を完成させてさしあげますわ!!」

何だかよく、分からないが…俺の気絶している間に、いろいろあっているようである。



そして…十分後…。

「完成ですわ〜!!」

「えっ、出来たの?」

霊は身を乗り出した。

「ああ、いけませんわお姉様!そんなに暴れたらこぼれ…―」

ガタッ!バシャァアア!!

「にゃあああ!!!」

霊の悲鳴が家中に響き渡る。

「うぅ…うぷっ臭い…いや〜ん、ベタベタして気持ち悪い…」

「はぁ、お姉様…ですから、暴れたらダメだって言いましたのに……でも、その姿も美しいですわ!」

「えぇ〜!?」

瑠璃が少しひいた。

時刻は既に、十二時…。ペパーミント草を作るために使われたウンタカの鼻水は、最初は水色だったが、

今ではペパーミント草と混ざり合い、キレイな緑色をしている。例えるのならヒスイ色だろうか…。

これが、元々はウンタカの鼻水だったというから不思議だ。全く魔界には、

摩訶不思議なものがたくさん存在しているらしい。あれから何分経ったのだろうか…。

俺は気絶したままで、悪魔の少女達が、気絶した俺を囲むような形で座っていた。

「どうするの?」

「どうするって、やっぱり傷口をふさぐためには、これを塗るしかないでしょ?」

瑠璃が言う…。

「でも、そのためには…私達の内誰かが、響史の傷口に触れなければならないってことよね?」

霊が俺を気絶している俺を見ながら聞いた。

「やはり、ここは霰が行くべきだろう…」

「えぇ〜!?どうして、私なんですの?私はただでさえ、あのウンタカの鼻水を作ったんですのよ?

その上、この変態に触れなければならないなんて、絶対にイヤですわ!」

「姉上…それはあまりにも、響史さんがかわいそうです…」

零が俺の心配をしてくれた。

「でしたら、あなたがやればいいじゃないですか!」

「む…それは遠慮しておきます…」

―ガーン!!!


俺は気絶しているのに、何故か心が傷ついた。

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