小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

科学者か誰かに調べてほしいものだ……あっ、いやいるにはいるか…1人…。

ちなみにその一人というのは…―

「よっ、おっはよ〜!今日もいい朝ね!」

「……あっ、そうだね…」

「ちょっと、ちょっと!何よ、そのトーン低めの軽い受け流しの挨拶は!

あんた、私をどこまでバカにしたら気がすむわけ?」

「いや、だって、お前バカじゃん?」

「なっ!?私は科学者よ?バカなんかじゃないもん!」

そう彼女が先ほど言っていた科学者『ルナー・アルメニア・ベリリウム』だ。

瑠璃と麗魅の母親の妹にして、瑠璃と麗魅の叔母…。見た目は確かに、彼女達と同じ年齢。

それには理由がある。瑠璃と麗魅の母親『セイラ・コスチトス・ベリリウム』と、

ルナーはすごく年が離れているのだ。何故かは俺も詳しい理由は聞かせてもらってない。

「そうか?じゃあ、どうしてそんな変なかっこうしてるんだ?」

「えっ?」

彼女の姿をよく見てみると、彼女は天井裏から顔をひょっこりと出し、

ちゅうぶらりんの状態で俺と対話していた。しかも、彼女は白衣の下に、何故か俺の姉の服を着て、

顔に既にメガネをかけているのに、額にサングラスを装着していた。

「うわぁあ!こ、これはその…違うのよ?ただ、その…服がないから、この家で洋服探してたら、

偶然あんたの姉の服のサイズがぴったりで、しかも、

デザイン的に好きだから着てるとかそういんじゃないから!!」

彼女の行動のすべてが今彼女の言葉で明らかになった。

「あっ……そ」

俺はルナーを憐みの表情で見つめた。

「何よ…その目は!」

「別に…ていうか、こうやって話している間にも、時間は刻々と過ぎてるのだが…?」

「うっさいわね!ていうか、さっさとその子たち起こして、学校でもなんでも行きなさいよ!」

「ていうか、その間、お前何すんの?」

「そんなの、私の勝手でしょ?」

「いや、俺的に家を改造されたり、荒らされたりするのは困るのだが…」

「そんな言い方しなくてもいいでしょ?ちょっと、Version Upするだけよっ!」

「何で、そこだけ英語?」

俺は彼女との対話に疲れを感じていた。そして、俺は風邪をひいている瑠璃と、

目の前で暇を持て余しているルナーを交互に見た。そして、俺はあるアイデアを思い付いた。

「おぉーっ!」

「な、何よ急に大声出して…」

「お前に頼みがある!」

「た、頼み…?まさか、変なことさせるわけじゃないでしょうね?」

「一体、お前は俺をどうイメージしてるんだ?」

「えっ?変態…でしょ?」

「うっ!何だ、その最悪な二文字は!!」

俺は声を荒げて言った。

「だって、姪が言ってたわよ?」

「姪って…―」

「そっ!麗魅がね♪」

―あいつ〜〜!!


「そうだった、こんなことしてる場合じゃない!急がないと、学校に間に合わない!

てことで、さっさと用件すませるぞ?」

「えっ?」

俺は彼女に何か言われる前に、一方的に言葉を発した。

「瑠璃が今日、風邪ひいてるんだ。だから、俺達が学校に行ってる間、お前に看病しててほしいんだ」

「え〜〜〜っ!?なんで、私が?」

「いや、かわいい姪のためじゃないか!そこは、ひと肌脱ごうぜ?」

「えっ?脱ぐの?」

「いや、変な意味じゃなく……」

「わ、分かってるわよ!」

ルナーは頬を赤らめながらそっぽを向いた。ツインテールに結んだ、薄いエメラルド色の髪が、

彼女の顔の動きに合わせてなびく。

「じゃあ、時間もないし…行くな!」

「ちょっと、まだ私OKなんて一言も言ってないわよ?」

「後で、何かしてやるから、頼む!」

俺はその時何も考えずに軽く言ってしまった。俺は、自分でまいた種に、後で後悔するはめになるとは、

まったくもって思わなかった。



午前七時三十分…。一方霙はというと、既に神童 響史の家の前にいた。

「ふっふっふ…ついに見つけたぞ!神童 響史の家!にしても、こんな普通の民家にすんでるとはな!

アタシてきにはもっと、こう飛○石か何かで空を飛ぶ、ラ○ュ○てきなやつに住んでる、

王族の末裔かと思ってた……おっ!出てきたぞ!しかも、1人だけ…ふっ!

飛んで火に居る夏の虫とはこのことだ!背後から忍び寄って、

その首狩りとってやる!姫達を助けるためだ…悪く思わないでくれよ?」

霙はそう言って、ハンマーを構えた。そして、彼女は住宅地の入り組んだ通路の角から、

響史の歩いている通路に飛び出した。と、その時彼女は彼女の死角にいた男性の姿に気づかず、

そのままその男性とぶつかってしまった。

「いった〜!ったく、なんだよ!ちゃんと前向いて歩けよな!!」

「てめぇこそ、どこ向いて歩いてんだ!ちゃんと、交通ルールを守って、左、右確認して歩け!」

二人は互いに自分の思った意見を大声で叫び、相手の顔を確かめた。

「げっ!昨日のおっさん!」

「ぐっ!昨日の怪力娘!」

彼らは互いに火花を散らし、後ろに飛びのいた。そして、互いににらみ合うと、いきなり戦いを始めた。

「いい加減アタシの邪魔すんなよ!アタシは忙しいんだよ!」

「だったら、おとなしく俺に負けな!」

不良のリーダーはそう言って、指をパチンと鳴らした。

すると、なぜか昨日霙にボコ殴りを受けた男たちが出現した。

「くっ!昨日より人数が増えてる!?」

「あたりめぇだ…。あれから、俺達はおめぇのこと探してたんだ!

必ず、お前を見つけて仕返しをするってな!」

「ガキか……」

霙は横目でボソッと嫌味を言った。

「うっせえ〜!やられたら、やり返す!それが、俺達のモットーだ!」

「開き直るな!」

「へへっ!強がってられるのも今の内だぜ小娘!!これが何か分かるかぁ〜?」

そう言って、懐に手を伸ばした不良リーダーは上着の裏から何かを取り出そうとした。

「あっ、あああ…アレ?どこにいった…?くっそ〜なくしたのか?アレ結構高かったんだぞぉお〜おい!」

「アニキ!さっき、そこに落ちてやした!」

「おぉお!でかした!へっへっへ…これが何か分かるかぁ〜?」

「………いや、なんていうか、かっこわる……」

「うっせぇ〜!!!死にたくなかったら、そこにひざまずきな!」

リーダーはニヤリと笑みを浮かべながら、霙に近寄った。拳銃の銃口を突き付けながら…。

「ていうか、前もこんな状況なかったっけ?」

「ふっ…昨日の事だからな…よく、覚えてるじゃねぇか!まぁ、今回そのおかしなハンマーは、

使わせねぇがな?」

「なっ!?」

彼女はいつもなら背中にあるはずの武器のハンマーがないことに気づいた。

「は、ハンマーは!?」

「こっちだぜ?」

手下の不良がハンマーを握りしめて、霙のハンマーを振る。

「やめろ!乱暴に扱うな!」

霙はひどく興奮していた。どうやら、相当大切なもののようだ。

「へっ…これさえなけりゃ、お前も手が出せない…―」

ドゴッ!

「なっ…かっ……えっ…」

不良のリーダーは自分のすぐ後ろのブロック塀に霙がすごい勢いでパンチをしているのを見ていた。

肩を震わせながら涙目で目だけ後ろを見てみると、激しいひびわれが彼女の手跡から伸びていた。

「ひぃっ…!」

「よくも、アタシのお気に入りの武器をあんたらの汚らわしい手で触ったな〜?」

霙は昨日とはまた別の邪悪なオーラでニヤリと歯を見せずに、笑みを浮かべた。

それは、いろんな意味で不気味だった。背筋に悪寒が走る不良達…。

と、その時何故か、清々しいほど天気のいい青空から雷が落ちてきた。

しかも、その雷は普通の雷とは違い、緑色の稲妻だった。その稲妻は真っ直ぐ霙の体に直撃した。

「ぐぅうぁあああああ!!!!」

「な、何だ!?」

「ヤバいっすよアニキ!ここは、一旦引いた方が…」

「いや、待て…やつの様子を見てみろ!」

「えっ…」

不良達は雷が収まった後の目の前の光景を目の当たりにした。すさまじい稲妻をまともに受けた霙は、

呼吸を乱しながらその場に立っていた。

「ありえねぇ…普通の人間なら死んでるはずだ!」

「バケモノか?こいつ…」

不良達は口々に弱気な言葉を口にする。

「はぁはぁ…な、何だったんだ今の…あれ?」

霙はその場に座り込んでしまった。

ーなっ…体に力が入らない?どうなってんの?くっ…ん〜!う〜っ!だめだ、力が入んない!

どうなってんだ!?くっ…このままじゃ、不利だ…っつうか、今の雷なんだったんだ?

とにかく、この場から逃げないと!


霙は周囲の不良に目をまわした。見た感じ彼女は逃げ道を完全に不良にふせがれている。

「おめぇ…急にしおらしい顔になったな…さては、今の稲妻で何か起きたか?

例えば、力がなくなったとか?」

「!?」

彼女は警戒を固める前に、敵に図星の言葉を言われ、思わずそのことが表情にでてしまった。

「ち、違う!」

「くくっ!くぐぅふふっははははははは!!!嘘つくの下手だなてめぇ…。その顔見れば簡単にわかるぜ?

お前は力を失った…」

「くっ、こっち来んな!!」

霙は右パンチを繰り出した。

「アニキ!!」

手下たちは、リーダーを助けようと、思わず体が動いてしまった。

しかし、彼は彼女のパンチをくらうどころか、簡単に受け止めていた。

「なっ!?」

「へへっ…さっきの時とは全くちげぇな?こんなんじゃ、普通の女子高生とかわらねぇぜ?

どうしたよ、昨日みたいにすんげぇことしてみろよ?あぁ!?」

霙は彼の言葉一つ一つに威圧感を感じていた。自分は今、力を失ってしまっている。

その原因がなぜなのかはよくわからないが、いまのところ一番怪しいのはさっきの雷だ。

だが、それを考える前に今はとりあえずこの場を切り抜けなければならない。誰かに助けを求めるか?

しかし、辺りを通る通行人は誰もいない。おそらくみんな、ただの一般人。

その一般人の中ではこの不良たちに勝てるような力がないことを理解しているのだ。

「くっ、離せ……」

彼女は小声で言った。

「あぁ?今なんつった?小さかったぞ?まさか、離せっつったのか?

今のお前にそんなこと言う権利はねぇぞ?今の権利者は俺だぁ!今のお前には俺には勝てない!

だから、こんなことやっても何も言えねぇんだよ!!」

そう言って、不良のリーダーは霙が羽織っているボロい毛布をはぎとった。

「うわぁああ!!ややや、やめろ!何すんだ!くっ…今すぐやめないと殺すぞ!?」

「やれるもんなら、やってみな小娘!」

男の仕返しはまだ続く…。彼はさらに彼女の服に手を掛けた。

「や、やめろ!やめろ!!」

「へへっ…もうおせぇ!!」

力のない状態の彼女は普通の女子高生と同じのため、力負けし、男に上着をとられてしまった。

「くうっ…!力が戻ったら覚えてろよ?」

「ふっ!その時には、もうお前は昔の女にはなれないだろうぜ?」

「!?そ、それって…どういう…―」

「ふっ…今にわかるさ!」

そして、とうとう彼は彼女のスカートの裾に手をかけた。

-129-
Copyright ©YossiDragon All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える