第六話「猫の来客」
次の日の朝、時間はもう既に昼の十二時を示そうとしていた。俺はピンポ〜ンという、
チャイムの音に反応して一度目覚めた。しかし、
―まだ眠い…。
そう思った俺は、思わず二度寝してしまったのだ。
ここは、家の玄関前…。宅配便のお兄さんが、四角い箱を少し重そうに抱えながら、帽子を被りなおす。
「あれ、いないのかな…?」
宅配便のお兄さんが仕方なく帰ろうとすると、足元に猫が擦り寄ってきた。
「ニャ〜♪」
「あれ、こんな所に猫が…。首輪をしてるってことは、ノラじゃないのか?」
お兄さんは少しばかり辺りを見回し、人気がないことを確認すると、
懐から何故か常備していたツナ缶を取り出し、蓋をベリベリッと開け、
蒼い海の様な瞳を持つ、猫の前にスッと差し出した。
「ニャァ〜♪」
謎の首輪をつけた猫は、嬉しそうに鳴いた。
「お〜そうかそうか、嬉しいか…。じゃあ、またな…」
宅配のお兄さんはツナ缶と猫をそのままにして、足早にトラックに乗り込むと、
エンジンをふかして行ってしまった。
「何だか、よく分からないけど、ついてるニャ!」
猫が喋っている…しかし、その事実を知るものはまだ誰もいない…。
午後一時…。自然に目が覚めた響史の目の前には、少女の顔があった。
「!?」
俺は少し驚いて後ろに後ずさった。すると、今度は後ろにも人気が…。
まだ寝起きで寝ぼけている俺は、頬を少し軽く叩いた。顔を左右に激しく振り、ようやく目が覚めた。