「はぁはぁ…」
「あの〜…」
「ん!?」
「えっ…いや、あの……―」
「ちょっと、あんた…」
「何?」
俺はドキドキ気にしながら、彼女に聞いた。すると、彼女は俺に歩み寄ってきて言った。
「あ……ありがとう…」
「…あぁ…えっ?」
「なんだよ、人がせっかく感謝の言葉を述べてやってんのにさ!それと、あんたのこと少し分かったよ…」
「お前、名前は?」
「ふふっ…水連寺…霙…」
「水連寺…霙?」
「ああ…」
「俺は…―」
「言わなくても知ってる…神童 響史だろ?」
「そういえば、どうして俺の名前を?」
「殺そうとしてたからな…」
俺はその言葉に固まってしまった。えっ、殺す?でも、そんなこと、今まで何人もの護衛役に、
言われてきたことじゃねぇか…。でも、彼女の目は本気の目だった。
「じゃあ、俺…この場で殺されるのかな?」
「まぁ…アタシを助けてくれた命の恩人だし…。もしも、あのままあんたが来なかったら、
アタシ今頃どうなってたか…。ホントありがとな?」
「お、おぉ…」
「でも…」
「でも?」
「あんたがアタシにしたこと……あれは、忘れないから!」
「えっ!?」
俺は冷や汗がダラダラだった。体中から汗が吹き出し、大変な状態になっていた。
「ごめん!」
「ふっ…あんたは変態だな!」
「なっ!」
「じゃあ、アタシはこれで…」
「おい!」
「ん?」
「お前、行くとこないのか?」
俺は自分でも何を口走っているのかと思った。しかし、これが俺の体質なのだろう。いや、
むしろ特徴といっていいかもしれない。
「だったら、何だよ!」
「俺んちこないか?」
「なっ!な、なななな…何をバカなことを!だ、誰が行くか!」
「そうか…そうだよな、迷惑だったよな?」
「べ、別に…そこまで来てほしいってんなら、来てやっても…―」
そう言って、彼女は頬を赤くした。しかし、俺は彼女の言葉よりも、
時計が示している時間の方が問題だった。
「あぁああああああ!!」
「な、何だよ急に!」
霙は俺の突然の叫び声に驚いていた。
「学校に間に合わない!このままじゃ、完全に遅刻だ!」
「なんだ、お前学校に行く途中だったのか?」
「えっ、あぁ…まぁな。じゃあ、俺、急ぐから考えといてくれよ?」
俺は霙にそう一言残し、その場を走り去った。急がなければ、学校に間に合わない。
しかし、腕時計の時計の針を見る限り、俺の知る秘密の道を通れば、ギリギリでHR前につくに違いない。
そう思い、俺は急いでカバンを激しく揺さぶりながら学校に走った。
時刻は八時少し前…本来ならば、HRをしに、先生がくるはずなのだが、どうやらまだ来ていないようだ。
俺は、空き巣のように、教室の扉を音が鳴らないように、静かに開け、扉を閉めると、
赤ん坊が歩くみたいに、四つん這いになって、クラスメイトの陰に隠れて、自分の席に向かった。
俺は、顔を動かさずに目だけで周りの状況を把握し、何食わぬ顔で、自分の机の上にカバンを置き、
椅子を手前に引くと、静かに席についた。すると、それと同時に担任の先生が入ってきた。
「じゃあ、今からHRを始めます…。じゃあ学級委員、挨拶お願いします…」
「はい!起立!気を付け…礼!」
「「「おはようございます!」」」
クラスメイトの声が教室に響く。俺は、未だに先生にバレていないかどうか、不安で仕方がなかった。
だが、今の所は安心だ。そう思うと、俺はホッとして、表情が柔らかくなった。席に座ると同時に、
俺は教室の窓から、外の景色を、頬杖をついてボォ〜っとしながら見ていた。
―あの時は時間がなかったから、そのままあの場に残してきまったが、霙のやつ…大丈夫だろうか…。
俺はそのことが気がかりだった。すると、その俺の様子に気づいたのか、霄が俺に聞いてきた。