小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「何か考え事か?」

「えっ、ああ…まぁな。実は、ついさっき、護衛役にあったんだ…」

俺の言った護衛役という言葉を聞いて、霄は眉毛をピクッとさせた。

「まさか、襲われたのか?」

「いや、その逆…その護衛役が襲われてたんだ…」

「一体、誰と会ったんだ?」

「え〜っと、あぁ…霙だったかな?」

一応、あっているかどうか、確実ではなかったため、

俺は少し曖昧に覚えているような口調で彼女に名前を教えた。

「ば、バカな…。霙なら、普通の人間に襲われるようなことは絶対にないはずだ!」

「どうして、そんなことが言えるんだよ!」

「あいつは、魔界で閻魔大王、大魔王の次に力持ちと言われてるんだぞ?

その力は、男の悪魔でもかないはしない…。だからあいつは、

大きなハンマーをいつでも振り回すことが出来るんだ!あいつに会ったんなら、

既にあの巨大なハンマーを見ているはずだ!」

俺はそれを聞いて、過去の記憶を振り返ってみた。

「そういえば、持ってたかもしれない…。でも、じゃあ、何で不良に力負けしてたんだ?

確かにあの時、四肢を不良に掴まれて、身動きが取れない状態だったんだ!」

「誰かと、見間違ったんじゃないか?」

「そんなわけない!」

俺は彼女の言葉を聞いて、思わず立ち上がって叫んでしまった。そのため、他の皆が一斉に俺の方を向いて、

驚いた様なまなざしで俺を見つめた。

「神童君…どうかしましたか?」

「あぁ、いえ…すみません」

「では、HRを続けます…。それで、今日の…―」

先生がHRの続きの話を始めたところで、こっちも話を再開する。

「確かに…青い髪の毛に、青い瞳で、ハンマーを持ってたんだ。それに、彼女自身、

自分のことを霙って名乗ってたんだ!この目と耳で確認した。間違いない!」

「ん〜…そうなると、この人間界には悪魔の力を抑え込む力か何かがある、という可能性が出てくるな…」

「力を抑え込む?」

「姫達のように、本来の力を使えないように、封じ込めるアクセサリーのようなものだ。

ストッパーの役目を果たすためのな…」

霄は腕組みをして、俺に言った。俺は顎に手を置き、足を交差させ、ふと瑠璃の席の方を向いた。

―本来ならば、ここには瑠璃がいるはずなのだが、今日は風邪を引いていて、ここにはいな…――ってあれ!?

どうなってるんだ!?なんで、瑠璃が…ん?あれって、よく見たら、瑠璃じゃなくて麗魅じゃないか?


俺は嫌な予感を感じ、HRが終わった後で、なぜここに彼女がいるのか、HRが終わった後で、

問い詰めることにした。



そして、HRが終わり、俺はなぜここに、瑠璃ではなく麗魅が、しかも…うちの制服を着て、

この場にいるのかという疑問を解決することにした。

「おい!」

「ん?何だ…じゃなくて、何、響史?」

「おい、麗魅何やってんだ!?」

「!?」

彼女は自分の正体に俺が気づいていることに驚いたのか、目を丸くして、

慌てた様子で俺の腕を強引に引っ張り教室の外へと連れ出した。と、その時、様子を見ていた藍川が、

「いいな〜神童のやつ…瑠璃ちゃんとあんなに仲良くして…」

と、俺達の行動を見て、うらやましそうに、見つめながら言った。



「おい、何なんだよ!こんなところに、引っ張ってきて…」

「ちょっと、どうして私がお姉さまじゃないって分かったの?」

「はっ?いや、普通にわかるだろ?髪型違うし、目つきも少しキツいし、何よりも胸が…―」

ドゴッ!

俺は急に視界が真っ暗になった。目の前に広がる暗黒の闇。そして、肌に伝わる不気味なオーラ。

「胸がなくて、悪かったわね!」

「いや、俺まだ何も…」

「明らかに胸っていいかけてたでしょ?」

麗魅は俺の耳元で大声で叫んだ。俺は耳の穴を小指でふさぎ、彼女の声をシャットアウトした。

「それよりも、何で、ここにお前がいんだよ!」

「お姉さまに頼まれたのよ!私の代わりに学校に行ってきてってね…」

俺は、麗魅が窓から外の景色を眺めながら言っているのを半目で見ながら、彼女に言った。

「ふ〜ん、まぁそれは分かったが、その制服はどうしたんだ?」

俺はさっきから、彼女が身に着けているうちの制服を見て、聞いた。

「叔母様からもらったのよ!鏡の二重反射の力で、制服を作ってもらってね!」

―二重反射?


よく分からない単語が、彼女の言葉にいくつか含まれていたが、今はそのことについては、

あまり触れないことにしよう。

キンコーンカーンコーン!

予鈴のチャイムが鳴り、俺と麗魅は教室の中に入った。それぞれの席に座り、

一時間目の授業を担当する教科担当の先生が来るのを静かに待つ…。俺は、机の引き出しの中から、

教材を取り出し、机に並べると、筆箱からシャーペンを取り出し、クルクルと器用にペン回しをしながら、

先生を待った。

ガラガラガラ…。

教室の扉が開き、先生が入ってきた。

「じゃあ、授業を始める!」

「きりーつ!」

先生の言葉と共に、学級委員の雛下がクラスのみんなに呼びかける。俺は机に両手をつき、

ゆっくりその場に立ちあがった。立ち上がると同時に、足で椅子を後ろに下げ、ギギィイイと音を立てる。

「礼!」

「「「お願いします!」」」

お礼を言い終わった後、俺達は椅子に座った。椅子は背もたれの部分が木で、足の部分が金属でできている。

俺的には、どちらかというと、もっとふんわりした、柔らかい背もたれにしてほしい。

まぁ、そんなわがままが通用するとは到底思ってはいないが…。そして、長くてダルい授業が始まった。

授業は五十分授業…、俺的には地獄の五十分…。だが、その地獄の五十分間は、

あることをすれば天国の五十分になる。なぁ〜に、簡単な話だ。俺は毎日、

カバンの中にあるものを入れている。そう、それは愛用の枕だ。しかし、これを使うには、

あまりにも無理がある。そのため、俺はまず机の上に教科書を立て、その陰に隠れるようにして枕を置き、

そこに自分の頭を乗せる。いやしかし、これはすごく寝心地がいいのだ。見つかるとヤバイが…。

昔はそこまで頻繁に授業中に寝たりはしなかったのだが、瑠璃達が来てからは日頃の疲れがたまっていて、

ついつい寝てしまう。おかげで…。

バシッ!

「イテッ!!」

「神童!!何寝てるか!!罰として廊下に立っとれ!!」

「ふぁ〜い…」

ゴスッ!!

俺の頭に強い衝撃が走る。鈍い効果音が鳴り響き、俺はクラクラする頭を押さえた。

「いってぇ〜…」

「早く、行け!」

「はい…」

この持ち主である先生の名前は、『城元 醍醐朗』…。数学の担当教師で、がたいのデカイ先生である。

生徒たちはこの声がすごく苦手で、背後から聞こえてこようものならば、

まるで肝試しをやっているかのように、体をビクビクさせながら顔を青ざめるのだ。

つまり、それほどこの先生は恐ろしいということだ。俺はトボトボと教室から出て行き、廊下に出ると、

左右を確認して、誰もいないことを確かめると廊下の壁によりかかり、はぁ〜とため息をついた。

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