小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「―マジ?驚きだよ!」

「本当だって!この間の一年六組の担任の先生がさ〜。あの歳で、若い女性と結婚したんだって!!」

「あはは!!」

などという言葉に俺は慌ててどこか隠れられる場所がないか見回した。しかし、これといっていい場所はない。

と、その時女子トイレの個室に目がいった。

―ここしかない!!


と確信づいた俺は急いでそこへ走って行った。だが、そこであることを思い出した。

―そうだ…。ここでルナーだけを残せば、こいつも怪しまれる!!


と思い、俺はガシッと彼女の手首を掴み、一緒に女子トイレの個室へ駆けこみ鍵をかけた。

「ちょっと!どういうつもりよ!!私をこんな狭苦しいところに押し込めて!!まさか、これもあんたの企み?」

彼女の無茶な言いがかりに俺は一瞬大きな声を出しそうになったが、そこはグッと押さえてあくまでも

小さな声で彼女に言った。

「ち、違いますよ!ここは女子トイレなんです!!そこに俺のような男子生徒がいたら、

確実にお縄ものですよ!!ですから、ここは個室に入っておとなしく隠れているしかないんです!!

ですから、我慢してください!!」

「だからといって、どうして私まで入らないといけないのよ!!私は女よ?」

「その見た目と白衣で怪しまれること山の如しですよ!!第一、あんな恐ろしいメカを発明する人がこの学校中

を徘徊するなんて耐えられません!絶対に変態達に襲われますよ?」

「それは…どういう意味?」

「…分からないならいいです…」

俺は彼女が幼い顔立ちでロリコン変態共の餌食になってしまうという危険性に気が付いていない。

まぁ無理もないか。今まで彼女は鏡界でたった一人、孤独に生きてきたのだから…。ロリコンという人種を

見たことがないのだろう。だが、この学校にも少なくとも俺が知っている中で、

ロリコンのやつが一人いる…。その名も藍川 亮太郎…通称変態バカだ…。

「それよりも、いつになったらここから出られるの?」

「少なくとも、彼女達がここから出て行ってくれるまでですよ…」

「えぇ〜!?それまで私…ず〜っとあんたみたいな変態と一緒にいないといけないの?」

「やめてくれません…?まるで俺が変態みたいな言い方…」

「えっ?本当のことでしょ?」

「うぅっ!!地味に傷つくのでそれはやめてください…」

俺は彼女が平然とした顔で言うことに少しある人物と重ねてしまい、ますます心が傷つくのを感じた。

すると、急に彼女が顔を赤らめて俺に小声で言った。

「ねぇ…さっきからあんた…私にくっつきすぎじゃない?」

「えっ?そうですか…?これでも、十分離れてるつもりなんですけど…」

彼女に言われて、俺は少し離れようと後ろに一歩下がろうとした。とその時、彼女の足が俺の足に絡まり、

ルナーは俺に思いっきり倒れ掛かってきた。

「きゃっ!」

「うわっ!!」

俺は思わず声を出してしまったため、他の女子に気付かれていないかどうか不安でしょうがなかった。

だが、どうやら彼女達には気付かれていないようだ。

「ふぅ…大丈夫ですか?」

「えっ…あっ…だだだ…大丈夫よ!!」

俺は彼女のあたふたする様子を見て少しかわいいと思ってしまった。

―待て待て俺!彼女はあくまでも年上…。確かに見た目は、瑠璃達よりも幼いし、身長も低い…。

だからと言って、俺は変態になるわけにはいかない!!それよりも一番の問題なのは、こんなに幼い顔立ちで

なぜこんなにも胸が大きいのかということだ。少なくとも麗魅以上…瑠璃以下…くらいか?

と、待て待て…またしても俺は変態の道へ足を進めようとしてしまった。いかんいかん…つい亮太郎といる

時のことが行動に出てしまう…。





それからしばらくして、女子生徒が女子トイレから出て行き、それを確認した俺は狭苦しい個室から

飛び出した。

「はぁはぁ…危なかった。危うく気付かれるところだった」

「まったく…それはこっちのセリフよ!じゃあ、私戻るから…後のことはよろしくね?」

ルナーはまだ少し頬を赤らめたまま、再び鏡から俺の家へと戻って行った。俺はその様子をじっと眺めていた。

しかし、俺がその鏡に手を伸ばし鏡に触れた時にはもう既に、元の鏡に戻ってしまっていた。

「どうやら…戻ったみたいだな」

俺は弁当片手に、教室へと戻って行った。

教室に戻ると、もう給食の時間は残り十五分くらいしか残っていなかった。

「くそ…やはり時間がかかりすぎたか…」

俺はこんなことだったら、急いでダッシュして家に帰り、再び学校に戻ってきた方が時間がかからなかった

んじゃないかと思いながらお腹をグ〜グ〜言わせて机に突っ伏している霊に弁当を差し出した。

「わぁ〜!これ、響史が持ってきてくれたの?」

「ん〜まぁそんなとこかな…。これ持ってくるのにすんごく苦労したんだからな〜?(いろんな意味で)」

「苦労することなんてあったかな〜。あっ、わざわざ家まで走って帰ったの?」

「いや…そういうわけじゃないんだが…まぁそれよりも急いで食えよ?早くしないと十五分しか

残ってないぞ?」

彼女が、ちゃんと俺が腕によりをかけて作った弁当を、全部食べられるかどうか心配で時間のことを

言ったが、彼女は大丈夫大丈夫とお箸を持っていただきますのポーズを取り、ご飯を食べた。



そして、給食の時間も終わりを告げ、またしても授業が再開した。だが、俺のそのくそダルい授業は

とんでもない展開へと陥るのだった。

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