小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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外見で言えば、もう見た目で分かる通り、青髪に青い目。

「おい!いつまで寝てんだ!!お前らの兄貴が来てるんだぞ?今日はあいつの誕生日なんだろ?

だったら、お前らも少しはパーティの準備とか手伝ってやれよ!!」

少し強めの口調で俺は彼女達に言った。すると、ようやく一人目に霄が目を覚ました。

「やっと起きたか…」

「響史…」

「ん?」

「さっき言っていた兄貴が来たとは…」

「雫が来てんだよ…」

「!?何故?」

「誕生日なんだと今日が…」

「そういえば、今日は6月6日だったな…そういえば、カレンダーに丸印があったのをすっかり

忘れていた…しかし、よく兄者の誕生日を知っていたな…」

「俺の誕生日でもあるんだよ…」

「ほう、それはまた偶然だな…」

「リアクション薄いな…」

「まだ眠くてな…。それで、兄者は下にいるのか?」

彼女は目をこすりながら俺に訊いた。

「ああ…。一人で黙々とパーティの飾りづくりとかしてるっぽいぜ?」

「兄者はパーティなどが大がつくほど好きだからな…」

「そうなのか…」

俺はああいうやつからそういうことが好きだとは到底思えなかった。といっても、人は見かけによらない

というのは昔から学んでいる。姉ちゃんもああ見えて、結構いろんな恰好をするのが好きだったり

するからな…。俺は彼女が部屋から出ていくのを見届けると、すぐさま他のやつらも叩き起こした。

皆はグチグチと文句を言いながらものそのそと重たそうに体を起こした。



下に降りると、既に雫が一際大きな飾りを作り終えようとしているところだった。

「それ、何作ってるんだ?」

「これか?これは、クス玉だ…」

「本格的だな…ていうか、完成度たけぇ…」

俺は彼の意外な才能に驚いた。彼は、ふぅと一息つき軽く手のマッサージをするとゆっくりと顔を上げ、

俺の方を向いた。

「おぉ…全員起こしてきてくれたみたいだな…久し振りだなお前ら…」

「お兄ちゃんこそ、元気にしてた?」

眠くても頑張って笑顔で答えようと霖が言った。

「ああ…聞いたところによれば、お前が来て残りもう後数人だけだそうじゃないか…いよいよ、あいつが

来るんじゃないか?」

「あいつ?」

「姉貴だよ…」

「雫にとって姉貴ってことは…澪とかか?」

「ああ…澪は長女…俺が言っている姉貴と言うのは次女のことだ…」

「次女?」

俺は首を傾げた。

「まぁ、その内ここに来るだろう…ああ、それとなんか知らんが、丸くてアツアツのホッカホッカした

やつを、やつに与えるのだけはやめとけよ?」

「丸くてアツアツのホッカホッカって、擬音ばっかじゃねぇか!!そんなんじゃ伝わるものも伝わらねぇよ!!」

理解しがたい説明に俺は文句を言った。

「まぁ、その話は置いといてだな…」

「話を逸らすな!!」

「え〜と、とりあえず全員揃ったところで、役割分断といこう…」

―無視!?


俺は地味に傷付いた。

「霙…お前はプレゼントを狩って来い!」

「おい…漢字が違くないか?」

「分かった!」

「分かったって…おい!!ちょっ…待てって!!漢字がヤベェって!」

―行ってしまった…大丈夫だろうか…あの漢字はどう見てもやばい…。だって、“買って”が

“狩って”になってたもの!!


霙は兄の雫の言うとおり、さっさと狩りに出かけてしまった。あれはもう買い物いうか狩い物に

なってしまっている…。

―狩われるやつもかわいそうに…。


俺は誰だか知らない人物を頭の中に思い浮かべながら、その哀れな人物に手を合わせてお辞儀をして

謝罪した。

「んで、霰と零と霊は…俺と一緒に飾り作り及び、飾り付けだ!」

「うん!」

「面倒ですけど、お姉さまと一緒にいられるだけマシということにしておきますわ…」

「了解です…」

彼女達の意思も確認したうえで、彼はどんどん役を割り振って行く。すると、ふと俺の顔を見て彼は

俺に複数の質問をした。

「ところで神童…お前、ケーキって作ったことあるか?」

「はっ?いや…ねぇけど」

「そうか…」

彼は少し残念そうだった。俺はその顔に少し罪悪感を感じてこう言った。

「いや…レシピを見れば、少しは出来るかもしれねぇけど…」

「おぉ、そうか!じゃあ、お前はケーキ担当な!」

「うぅええええぇぇっ!!!?」

俺は拍子抜けだった。確かに、少しは出来ると言ったが、まさかケーキ“担当”とまでになってしまう

とは…。思いもよらなかった。俺は彼に訊いた。

「なぁ…それって、俺一人でってことか?」

「いや…無論、アシスタントをつけるさ…。え〜と、おお…適任がいるじゃないか…」

彼は残った妹の顔ぶれを見回し、うってつけの人物に目をつけるとその人物の名前を呼んだ。

「霖……」

―うんうん、まぁそれが妥当だな…。


「―と霄な…」

―なんでだぁああああああああああああああああああああああ!!!いやいや、待て待て…

聞き間違いという可能性もあるじゃないか…。


「One more please?」

「だから、霄だよ…そ・ら!!!」

「ああ…今日ってエイプリルフールか…」

俺は遠くを見つめ半目でそう呟いた。

「いや…今日は6月6日だろ…」

「いや…だって霄だろ?お前、霄の料理の腕知ってて言ってんのか?」

「おい、響史…それはどういう意味だ?」

「そういう意味だ!!」

ゴスッ!!

殴られた…不条理だ…。

「イテテ…お前霄の料理食ったことあんのか?」

「無論だ…何年間、トイレに駆け込んだ…―」

ゴスッ!!!

二度目の拳炸裂…。無論、相手は―俺…何故に!!?

「ゴホン!とりあえずだ……」

彼は咳払いを一つすると、立ち上がり俺の傍に歩み寄り膝をつくと、耳元にささやいた。

「いいか?あくまでも彼女はアシスタントのアシスタントで、メインは霖だ!霖の実力は計り知れない…。

彼女なら、霄の負の力も打ち消すことが出来るはず…!!だからここはひとつ…頼む!」

「はぁ…分かったよ」

俺は必死の妹の名誉を保とうとする兄貴の心に折れた。自分に兄がいないせいか…俺には彼女達が

羨ましく思えた。

「…という感じの割り振りだ…。何か分からなかったことや質問はあるか?」

念のため先生のように全員に確認を取る。すると、露さんが不満そうに頬を膨らませ、彼に文句を言った。

「あの…私、どこにも割り振られてないんだけど…」

「あ〜…お前は…そうだな…。まぁいいや。とりあえず、保留で…」

「え〜っ、兄さんどうしてよ!?」

彼女は信じられないと言った風に言った。雫は答えるのもメンドくさそうにこう言った。

「だって…お前、こいつらの邪魔するだろ?」

その言葉に彼女自身は首を横に振ったが、それ以外のメンバーは全員首を縦に動かした。

全員の意見が一致したところで、雫は彼女が目で訴えるのも無視して、頑なに彼女に無理やり言う事を

聴かせた。

「…はぁ鬱だわ…」

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