「さてと、俺も準備するか…」
俺は部屋の扉を開け、一階に降りていった。
―今は、こんな風にこいつらも俺の家にいるが、この感じだと恐らくまた霄みたいな護衛役がくるのか?
それに、このことが親にバレたらどうする?くそ、今は弟が友達の家に泊まりに行っているが、
もしも返ってきたらどうする?マズイな…。何とかしないと…。
様々な思いを思い浮かべながら階段を下り終えた俺は、廊下を逆方向に歩いていき、
リビングへの扉を開けた。俺はふと視線を皿置きの辺りに移した。
すると、そこには大量の汚れた皿が置かれていた。
「はぁ…。そういえば、皿洗いもあったんだったな…」
俺が深い溜息をついているとルリが扉を開けて、俺の名前を呼んだ。
「響史〜!!ねぇねぇ、ちょっと来て!」
無理矢理俺は手を引っ張られ、洗面所に連れて行かれた。
「ねぇ、これってどうやって水を出すの?」
「えっ?ここをひねるんだよ…」
俺は例を見せてあげた。
「へぇ〜。こうするんだ…ありがとう響史!!」
ルリに御礼を言われ、俺は少し照れくさくなり頭のうしろをかいた。その時、何か音が聞こえた。
ガリガリ…。
「何の音だ?」
俺は訳も分からず音のする方に歩いていき、台所にたどりついた。
どうやら、この音は台所からするようだ…。しかし、一体何の音だろうか?
俺が行き当たった場所は勝手口の扉だった。
―どうやら、この音の発信源はここのようだ…。
「何なんだ?」
俺はゴクリと息を呑み、ドアノブに手を伸ばしガチャッと扉を開けた。
すると、足元にフワフワと小さな温もりを感じた。
「何だ?」
「ニャァ〜!!」
「ね、猫!?」
俺は、不意をつかれ、尻餅をついてしまった。
「いって〜…。でも、何でこんなところに猫が…?」
俺はその猫の瞳に心当たりがあった。
“蒼い海の様な瞳…。”
―あれ、この言葉何処かで聞いたような…。
そんなことを思いながら俺はゆっくりと起き上がる。
すると、猫が俺の近くにすりより、媚を売った。
「何だ、腹が減っているのか?」
「ニャァ〜!!」
猫の声に俺は今まで考えていたことを忘れるような感じがした。
俺は立ち上がった瞬間少しめまいがし、倒れそうになった。
その時、誤ってミケ猫の尻尾を踏んでしまった。
「イッタァァイイ!!!」
「!?」
俺は一瞬耳を疑った。
何せ、今の声は間違いなくこの三毛猫から聞こえてきたからだ。
「ニャ、ニャァア…」
「お前、今喋ったよな…?」
俺が冷や汗をかきながら振り返ると、三毛猫が突然激しく威嚇し逃げ出した。
「あっ、待て!!」
俺は自分でも何で追っているのか理解せずに無我夢中で追っていた。二階の階段を駆け上がる、
猫の後を追いかける俺…。三毛猫が向かったのは俺の部屋だった。
「あっ!」
俺は手を伸ばし、ジャンプしている猫を捕まえようとした。と、その時扉が開き、霄が現れた。
「なっ!?」
「あっ!?」
俺は勢いを止められず、そのまま霄にぶつかってしまった。
「イッテテ…あれ?やけに床が柔らかいな…」
「おい!早く、そこをどけ…」
「えっ?」
俺は今の状況を確認した。俺は、霄を押し倒して、その上にのっかっているような状態になっていた。
「あっ、ごめん…」
「全く、何をしているんだ響史…」
霄がゆっくり上半身を起こしながら言った。
「いや、俺はこの猫を捕まえていたんだよ…」
「ん?何だ、霊じゃないか…」
「えっ?タ、タマ?何、この猫…霄のペットだったのか?」
俺は猫の首輪を確認して納得していた。
「いや、私の妹だ…」
「い、妹?えっ、でもこいつ猫だろ?」
「何を言っているんだ、響史?こいつは、人間だぞ?」
俺は自分の目を疑った。
―様々な不可思議な出来事についにおかしくなったらしい…。
そう思った。しかし、すぐにそれは勘違いだということが分かった。
「ニャア…。あの…。そろそろ離してくれないかニャ?」
「えっ、やっぱり猫が喋ってる??」
「だから、さっきお姉ちゃんが言ったニャ。私は猫だけど人間だニャ…」
「どういうことだ?」
「はぁ、実際に見せた方が早いみたいニャ…」
そういうと、突然三毛猫の体全体が光り輝き始めた。