小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「ご、ごめんお姉ちゃん!だからお願い離して!!」

「そう簡単に離す思たら大間違いやで!!」

「ぐうぅっ!!お姉ちゃんの胸が大きいから、背中にお姉ちゃんの胸が…!!」

「ふっ…あんたは霄達よりも胸が残念やから、あんまり密着せんでも胸が当たらんもんね〜…」

「なっ!!た、確かに私は霄ちゃん達よりも小さいけど…、でも胸が大きすぎて肩こりが酷くなることは

ないわよ?」

彼女はそう自分で言った後に、ズーン!!と急に暗くなった。

「自分で言って悲しくなるなら、言わなければいいじゃないですか…」

「う、うるさい!そんなこと言われなくても分かってるわよ!!」

露さんはそう言って霞さんの拘束している腕を振り払い、どこかに行ってしまった。

「すまんな…騒がしい妹で…」

「いいえ…。逆に、にぎやかな方が独りぼっちだった俺にとっても楽しいですから…」

「そうか…せやったらええねやけど、ん?…くんくん…、あれ?響史…あんた、たこ焼きかなんか

買っとるん?なんか匂いがすんねやけど…」

突然霞さんが、俺が昼ごろに買っておいたたこ焼きの匂いに反応した。

「ああ…昼に露さんに頼まれて買っておいたんですよ…食べます?」

「えっ、ええんか?」

「ええ…。どうせ、一パックはたこ焼き屋のおやじさんにタダでもらった物ですから…」

「ほうか…せやったら、ありがたく頂戴させてもらうわ…」

そう言って霞さんは俺から爪楊枝を受け取ると、透明のプラスチックの入れ物に12個入っている

たこ焼きの一つに突き刺してパクリと食べた。

「ん〜…いや〜やっぱ美味いわ!!この味が何とも言えへんな〜!」

霞さんはリアクションにしては少しオーバーな感じではあったが、このたこ焼きが美味しいということには

全く持っての同意だった。

「霞さんはたこ焼きが好きなんですね〜」

「そうなんよ…ウチ、これだけあったらどこでも生きてけそうな気がするわ!!」

「それはちょっと無理かと思いますけど…」

本当にやりそうな雰囲気を彼女が出していたため、俺は少し不安だった。

「あの〜…そういえば、霞さんは俺の命を狙ったりしないんですか?」

「あんたの命?別に…そんなもん狙ってへんよ?第一、あたしはこういう派手な事はせぇへん主義やねん!!

そもそも、戦いっちゅうのもあまり好きやあらへんしな!」

どうやら彼女は他の悪魔とは少し異なり、戦いをあまり好まないタイプのようだ。

「へぇ〜…ちょっと意外ですね…」

「そんなにウチが情けもない非情な悪魔やと思たんか?」

「い、いえ…悪魔って結構容赦ない種族だというイメージがあったので…」

「なるほどな…確かにそう言う風なイメージも持たれがちやけど、ウチらって案外そこまで卑劣なことは

せぇへんねん!どっちかというと、人間の方が恐ろしいで?」

「えっ…どこがですか?」

俺は、自分の知らない人間の一面があるのかと、少し興味が沸き彼女に質問した。

「人間は人間を食ったりするんやろ?」

「それって随分昔のことじゃないですか?」

「そうなん?」

「お、恐らくですけど…。それよりも、問題はこれからどうするかですね…」

「せやな…いつまでもここにおったら、あんたにも迷惑かかるやろし…」

「迷惑っちゃ、迷惑なんですけど…そこまで迷惑でもないっていうか…あれ?」

「ふふっ、あんた言っとること訳分からんようなっとるで?」

「そ、そうですか?」

頭をかきながら少し頭の中を整理する俺…。とりあえずこれからのことを考えなければならない。

―警察は今も尚、霞さんのことを探し回っている。ここばいつバレるのかも時間の問題だ。だが、

少なくとも一時間ほどでは見つかることはないだろう。よっぽどの無い限りは…。とにかく今の間に何か

作戦を練っておかなければならない。まずは、これから彼女をどうするか…。このままここにいさせても

いいのだが、仮に見つかった場合、自分達も共犯者として逮捕などという可能性も、無きにしも非ず…。

となると、ここは一旦彼女のこれからではなく、仮に警察が俺の家に来た場合を想定して考えることに

しよう。


「警察が来たらどうしますかね…」

「せやな…。やっぱ見つかるわけにはあかへんし、隠れたりなんかした方がええんとちゃう?」

「そうですね…」

―やっぱりそうなるか…。だが、この家に隠れる場所といえばルナーが研究所にしてしまっている

屋根裏部屋しかない。しかし、そこに警察が踏み込めばどうなるか…。想像しただけで身の毛がよだつ。

というのも、ルナーが作り出した発明品に彼ら警察が大変なことになってしまわないかどうかが

心配なのだ。それで彼らが驚いて引き揚げて一連の事件の事をきれいさっぱり忘れてくれれば、それは

もう万々歳なのだが…。そううまくいく世の中でもないわけで…。


「どうしましょうかね…」

と途方に暮れていた俺の背後から、露さんが歩み寄って来て背後から抱きついてきた。

「響史く〜ん!!」

「ちょっ、こんな時に遊ばないでくださいよ!」

「え〜っ、いいじゃない!だって誰も遊んでくれないんだもの!!」

「えっ?瑠璃とか麗魅とか、その他にも霄達とかいないんですか?」

「いないわよ!!」

彼女にそう言われ俺は急に背中に悪寒が走るのを感じた。

「いないってどういうことですか?」

「だからいないのよ!」

「二階は?」

「いない!」

「風呂場は?」

「いない!」

「じゃあルナーの研究室は?」

「そこは見てない!」

「…じゃあそこですね」

「何よ!その、明らかにそこしかねぇだろ!みたいな顔は!!」

「いや…だって…いるとすれば、もうそこしかないじゃないですか!」

俺は露さんが何をしたいのかがいまいち理解出来なかった。とりあえず、適当にあしらって

話題を戻そうとする。すると、先程までの俺と霞さんの話を聴いていたのか彼女が口を開いた。

「どうせなら、その警察とかいうやつらの記憶を抹消出来ればいいのにね〜!」

「そんな奇跡とも思えるようなことが出来るならとっくにやってますよ!!第一、この時代にそんなこと

出来るわけない…って、出来るじゃないですか!!」

「そうよ!ルナーちゃんなら出来るわ!!」

「ルナー?」

霞さんはたこ焼きを頬張りながら首を傾げる。

「ああ…ルナーっていうのは五界を総べる支配者の一人で鏡界の支配者なんです…。それで、瑠璃と麗魅の

叔母でもあって…―」

「おばさん言うな!!」

「うわっ!いたのか…」

「いるに決まってるでしょ?大体あんたの声大きすぎるのよ!屋根裏まで聞こえてたわよ?」

「そういえば…瑠璃達ってそっちにいるのか?」

「え、ええ…いるけど…それがどうかしたの?」

ルナーは俺におばさんと言われてプンスカ怒って頬を膨らませていたが、俺に瑠璃達の居場所を聴かれると

急に気を落ち着かせ自分の研究室に彼女達がいるということを教えてくれた。

「はぁ〜よかった…。いや露さんが、あいつらがいないっていうから心配してたんですよ!」

「ああ…ちょっと実験に付き合ってもらっててね…」

「危ない実験じゃないよな?」

「大丈夫よ!あんたどこまで私をバカにする気?それよりも何で私の話してたの?」

「ああ…ちょうど良かった、霞さん!こいつがルナーです!!」

「この幼女体系の子が?」

「なっ!私は確かに身長は低いけど、胸ならあんたよりも勝ってるわよ!?」

「ほぅ?いうなこのガキ…。せやけど、残念やったな…お前よりかはウチの方が大きいで?」

「な、なんですって〜!?そんなことない!私の方が勝ってる!!私、自分で言うのもなんだけど身長は

自信ないけど、胸の大きさは自信あるのよ!」

「ホント自分でいうほどのことではないな…」

「うっさい!」

ルナーは俺のボソッと呟いた言葉に文句を言った。すると、霞さんは少しため息交じりに言った。

「せや…お前、なんや発明が出来るんやろ?」

「えっ…そ、そうだけど…」

「せやったら一つ頼みがあるんやけど…、記憶を抹消する薬か何か作ってくれへん?」

「はぁ〜?何言ってんの?そんなの無理…じゃないけど無理よ!」

「どっちなんだよ!!」

俺は、彼女の少しウジウジする姿を見て言った。

「私は忙しいの!これからまた実験結果をまとめなきゃいけないし…」

「そこを何とか頼むわ!!天才発明家さん!!」

ピクッ!

その霞さんのお世辞に彼女は敏感に反応した。

「今…何て?」

聞こえていたはずなのに、聞こえてないふりをしてわざともう一度言わせようとするルナー。

「天才発明家さん!」

「しょ、しょうがないわね…。そこまで言われてやらなかったら、私も何だか罪悪感があるしね…」

「じゃあやってくれるんか?」

「その代り!!」

身を乗り出す彼女をルナーが手で抑え込む。

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