小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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俺は家の前に居た。―護衛役の少女、水連寺雪とその使い魔エアリス=エアロトゥスを連れて。

弟の亮祐とは光影中央公園で別れた。本当は家で治療してやるから帰って来いと言ったのだが、彼は

普通に俺に遠慮するような感じで

(心配しないでいいよ響兄ぃ!僕は大丈夫だから…)

と言って走って行ってしまったのだ。

―大丈夫かな…。


【大丈夫だろ…】

「あのさ…その急に人の脳内の言葉に対して話すのやめてくれねぇか?すんごく困るんだけど

……いろいろと」

【雪ちゃんにエロエロでロリロリな妄想をしてしまったところを喋られたりしたら大変だから?】

「そうそう…って、違うわぁああああああああああああああ!!!…はぁはぁ」

俺はエアリスにとんでもないことを言われてカ〜ッなって慌てふためいた。

【あはははははは!!ホント面白いよね君は…。良かった〜雪ちゃんの使い魔になって。そうでも

しなければ、君には会えなかっただろうからね…僕はついてるよ】

「俺はついてねぇよ…」

【まぁまぁそう気を落とさず…こんなに可愛い女の子のファーストキスをもらったんだから本望でしょ?】

「そ、それは…その…つぅか、そういう答えずらいことは聴かないでくれ…」

【まっ…そうしたいならそうしてくれて構わないよ…?僕はしばらくの間さっきの急行ロリ列車で

引っ張らせてもらうから…】

「まだ言うか…」

俺は嘆息しながらそう言った。

とまぁこんなところで長話してても話がちっとも先に進まない。というわけで俺はさっさと玄関扉を

開けて中に入った。

ガチャッ!

「ただいま〜…」

「お帰り遅かったね響史!」

瑠璃が相変わらずの明るい声で俺に話しかけてくれる。しかし次の瞬間彼女は表情を笑顔から困惑へと

変えた。

「響史…どうしたのその子?」

「ああ…こいつは霄達の妹の雪だよ…」

「ち、違うよ!頭の上のドラゴンだよ!」

「ああ…こいつは雪の使い魔でエアリスさ…」

【よろしく…姫様】

彼の自己紹介を済ませると同時に本人がテレパシーっぽい方法で瑠璃に挨拶する。彼女も最初は困惑

していたが、状況を呑みこむその持ち前の速さを活かして

「へぇ〜そうなんだ!」

とそれ以上何も言わずに、再び笑顔を浮かべてリビングへと戻って行った。俺も靴を脱いでリビング内

へと足を進める。扉を開けると、テーブルに座っている者や食卓に座っている者…、また料理を作っている

者もいた。相変わらず料理の担当は霖のようだ。まぁ、他のやつらにやらせて霄みたいなとんでも兵器を

作られてはたまらないからな。

すると、さっそく露さんが俺の元へやってきて意味ありげな笑みを浮かべて言った。

「今日は夜遅くまで何してたの響史くん♪」

「別に何でもありませんよ…ただ単に護衛役と戦ってただけです!」

「へぇ〜。で、今日は誰をお持ち帰りしてきたの?」

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ!ほらこの子です!あなたの妹でしょ?」

「うわぁ〜っ!雪ちゃん雪ちゃんじゃない!!雪ちゃ〜ん!!」

「おっと!」

「きゃっ!!」

ドンッ!!

俺は、寝ていて無防備な今がチャンスとばかりに飛びかかってきた露さんの飛びつきから雪を守ろうと、

サッと彼女をその場から移動させた。同時に抱き着く対象物がいなくなりそのまま重力に引っ張られて

床に体をぶつける露さん。

「いったたたた…も〜っ、ヒドイよ響史くん!」

「可愛いからって何でもかんでも飛びかかっちゃダメだってあれほど言ってるじゃないですか!いい加減

そこんとこ理解してくださいよ露さん!」

「いいじゃない可愛いんだから…」

頬を膨らませそっぽを向いてすねる露さん。

するとそこへ霄が話しかけてきた。

「おっ…響史帰って来たのか…。遅かったな…って、そいつは雪じゃないか!!」

俺に話しかけてくるなり驚愕の表情で雪に近寄ってくる四女の霄。

「いやその、何ていうか…今日の夕方頃に狙われたんだよ…ったく、お前らがいなくて寂しいからって

ここに俺の首を頂くってことも兼ねて襲いに来たみたいだぜ?はた迷惑な話だ」

「ん?響史…お前が頭に乗せているその竜は何だ?」

ふと俺の頭の上に目がいった霄が指さして訊いてくる。

「ああ…こいつか?こいつは―」

【雪ちゃんの使い魔だよ…】

「何!?雪の使い魔?…なるほどそうだったのか。よろしくな」

【こちらこそよろしく…】

―って、何でお前も普通に対話してんの?「このドラゴン喋ったぞ!?」みたいな疑問は抱かないわけ?


俺はそんな疑問を抱きながら彼女の行動を見ていた。

結局その日は人間界での久しぶりの雪との再会と使い魔であるエアリスとの話で盛り上がった。



次の日の夜の事だった。

俺は日頃の疲れを取ろうと眠りについていた。すると、ふと誰かが俺を呼びかける声がした。

「―し、…響史…響史ってば!!」

俺の名前を呼ぶその声に反応した俺は、ガバッとその体を起こした。

「えっ、あっ…何だ?」

「ねぇねぇ、どうこれ…似合う?」

顔を上げる俺の目の前には眠っていた俺を起こした瑠璃だけでなく、光影学園に通っている護衛役の

メンバーさらに麗魅が何故か全員―水着を着用していた。

「何…やってんのお前ら?」

「響史に訊きたいことがあって…」

「訊きたいこと?」

「そう…水着ってさ、これでいいんだよね?」

「いいんだよねって…いいんじゃねぇの?それで…だって別におかしいとこは特になさそうだし…」

その言葉に彼女は少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら後ろを向いたり横を向いたりなどいろんな

動きをした。

「水着って下着つけないの?」

「いや…着けないだろ…第一着けてたら濡れるじゃん?」

「あっ、そっか…」

―それくらい分かれよ!


「てか、お前らプールとかないの?」

「プールはないよ?あるとすれば水浴びくらいだし…水浴びだってこういう風なのは着ないし…」

そう言って瑠璃は自分が着ている水着の水着をビヨーンと引っ張った。伸縮性があるため、そんなに

大きな水着を買わずともちゃんと着れる。第一、大きすぎるのを買ってしまったら万一泳いでいる

途中でポロリと言う事も考えられる。亮太郎のことだ…そういうことも考えているに違いない。

現にあいつは明日の為に今日は早く寝るとも言っていた。

―どんだけ楽しみなんだあいつは…。


「じゃあ、水着を着るのは初めてなのか…」

「うん…水着って初めて着たけど、何かこう締め付けられてる感じがあるよね…」

「締め付けられる!?」

異常な反応を示したのは露さんだった。全くこの人は何を考えているのやら…。

「確かにアタシ的にはこういうピチッとしたのはちょっと…。まぁ、空気の抵抗とか水の抵抗は

少なそうだから動きやすいっちゃ動きやすいけどさ…」

霙が軽くジャンプしながら軽く運動し言った。

「にしても、何でここで着替える必要があるんだ…」

「だからさっきも言ったでしょ?ちゃんとあってるかどうか見てもらってたんだよ…」

「見てもらうって…そんなもん他の―あっ、俺以外人間いないのか…この家」

今思えばそうだ。俺以外全員女であり悪魔である。即ち誰も水着という物を知らないのだ。確かに着た事

のない物を着たり見た事のない物に触れるというのは少しばかり不安がある。

「だったら学校の他の女子に訊いたりとかさ…」

「今日まですっかり忘れててな…」

霄が腕組みしながら言った。

「だからって全員が着替える必要があるのか?」

「暑かったってのもあるけど、本当の目的は別にあるわよ」

「本当の目的?」

露さんの言うとおり今日は暑かった。だが、それよりも彼女の意味深な言葉に首を傾げながら俺は露さん

に訊いた。

「ちょっ、露さん!やめてください!!」

「いいじゃんいいじゃん!そんなに照れなくてもさ…似合ってるよ麗魅ちゃん♪」

麗魅と何やらヒソヒソ話をしている露さんだが、俺には疑問符しか浮かばない。

とりあえず、俺は水着の着方はあってるから安心しろということと、汗かいたりして洗う事になるのも

勘弁ということで早く着替えてもらった。何よりも見ているこっちが恥ずかしい。スクール水着のために

控えめな肌の露出だが、それでも普段よりも見えている部分が多すぎる。特に全員悪魔の上に美少女

ということで、目の行き場に困るのだ。

そんなこんなで俺は、次の日の体育の授業―プールを何か起こりそうだなと不安に思いながら眠りに

就くのだった。

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