〈もしもし…?〉
「あっ、姉ちゃん?俺、俺!!」
〈はっ!?俺俺詐欺?〉
「違う違う、俺だよ響史だよ…」
〈ああ……ハァ…〉
「あれ今溜息つかなかった?」
俺は少し悲しくなった。
―俺が電話に出るのがそんなにいけないのか。
「実は姉ちゃんに聞きたいことがあるんだ」
〈何だ?用件ならさっさと済ませろよ?〉
―この喋り方正しく男だ…。
〈何か、言ったか?〉
―えっ!?心の中読まれてる??
俺は少し背中に寒気を感じた。
「実は、なぁ『喉越し抜群饅頭』って聞いたことある?」
〈喉越し抜群饅頭?いや、饅頭なら今まで飽きるほど食べてきたが、
そんな名前の饅頭は知らないな…〉
「そうか…」
俺は少し残念な気持ちになった。
「分かった。ごめん、つまらないこと聞いて…」
俺が電話を切ろうと思った次の瞬間、
最悪な事態が起きた。
バタンッ!!
「いった〜い!!!」
ルリが階段から落ちたのだ。その声を電話の向こうから姉が聞いていた。
そして、それをあの姉が見逃すはずがなかった。
〈……響史…。今の女の声だったよな?〉
「い、いやだな〜気のせいだよ…ハハハハ!!?」
―急いで電話を切らないと…。
〈怪しい…。実は今、お前の家のすぐ近くに来ているんだ〉
―えっ!?
俺は直感で身の危険を感じた。
その瞬間、
ピンポ〜ン♪
というチャイムの音…。
―えええっ!!!?いやいや、う…ウソだろ?えっ、だってそのえっ?
ピンポーン♪
「響史、そこにいるんだろ?早く開けろ!!」
バンバンッ!!
玄関のドアが激しく叩かれる音が聞こえた。
―ま、マズイ…。逃げねぇと!!
バキバキッ!!
―うぅええぇええ!!?ドアを無理矢理開けるっていうのは聞いたことあるけど、
ドアをぶち破るってそうそうないよ?そんな、どんだけ力ありあまってんの?
俺はついに観念した。