小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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それから数時間が経った…。俺が目を覚ますとそこには倒れている俺に駆け寄り心配そうな眼差しで見つめる

三人の幼女がいた…。

―さすがの俺もダメだったか……。どうやらついにお迎えが来ちまったらしい、目の前に可愛い天使が

見える。しかも、俺の知り合いの顔で――って…んなわけあるかあああああああっ!!!


そう言って俺はガバッ!!と体を起こした。

「だ、大丈夫きょうち?」

「あ、ああ……」

俺は少しめまいがするのを感じ、頭を押さえながら言った。

「目が覚めたんなら早くわたちたちに服着せてよ〜!もうこんなちゅがた耐えられないっ!!」

麗魅が必死に小さな手で体を隠し、顔を真っ赤にして涙目で俺に訴える。ルナーも恥ずかしさのあまり、

その場に蹲っている。

「お、おう!ちょ、ちょっと待ってろ!!」

すぐさま丁度いいサイズの服を探しに向かう俺…。しかし、八才児に似合う様な服のサイズが存在するわけ

もなく、俺は途方に暮れた。どうすればいい?服なんてもんないし……かと言ってこのまま裸のままに

しとくわけにもいかないし。外見は八才児の幼女姿とはいえ、中身は思春期の少女なんだから…。

俺はとりあえず姉の部屋に入った。ここには、姉ちゃんが昔から取ってあるお古の洋服などが多々ある。

ちなみにルナーが着ている服も何着か姉ちゃんの物を拝借している…。勝手に入るのは悪いとは思うが、今は

そんなことを言っている暇などない。

「あっ、あった…」

以外にも姉ちゃんの服の中には八才児よりは少し大きくはあるが、まぁギリギリ似合うかくらいのサイズの

服が何着かとってあった。姉ちゃんに感謝である。

その何着かの服を両手に抱え、俺は空き部屋へと向かった。中に入ると、まだ麗魅とルナーの二人は

言い争いを繰り広げていた。

「おいおいまだやってんのか?」

「うっちゃいわね!しょれよりもちゃんと洋服は持ってきたんでちょうね?」

「ああ、持ってきたよ!」

両手に抱えた服を床に置き、周囲に広げる。

「まぁ、この中から好きなの選んで来てくれ…。まぁ下着はないけど……勘弁な?」

「しょ、しょんな…うちょでちょ?」

「うちょ…嘘じゃねぇよ!!」

―は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!?こいつらがうちょうちょ言うから思わずつられ

ちまったああああぁぁぁぁっ!!!


俺は両手で顔を覆って三人から顔を背けた。

「………今、あんた噛んだでちょ?」

「噛んでるやつに言われたくねぇよ!!」

「しょれは子供だからいいの!」

「何の特権!?」

「いいから、とりあえずあっち向いててよ!!」

麗魅にそう言われ俺は彼女達三人に背を向けた。

にしても、これからどうすればいいんだ?老若変換機は壊れちまったぞ?このままだと永遠にこいつらは

幼女姿のまま――なんてことも!?それだけは勘弁だぜ…。まず、瑠璃と麗魅は学校に連れて行けないし……。

連れて行くとしても幼稚園になる……。

そんなことを考えていると、ようやく三人の着替えが終わった。

「も、もう……いいよ?」

「おう!」

瑠璃に許可を得、俺は振り返る。そこには、赤く頬を染めて恥ずかしがっている三人の姿があった。

「な、何よ!」

「い、いや…何でもない」

思わず可愛いと思ってしまった俺はとっさに視線を逸らした。

「しょんなことよりも、このちゅがた何とかならないの?ちたがスースーしゅるんだけど……」

ルナーが必死にスカートを引っ張りながら言う。

「いや…下着も探したんだが、どうにも見つからなくてさ……」

「まぁこのちゅがたが元に戻りぇば何とかなるでちょ?」

麗魅がルナーに訊く。

「しょれは多分無理ね…」

「えっ?ど、どうちて?」

「どうちてって言われても…にょうにゃにゅへんきゃんきは壊れちゃったち……」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいっ!!ちょっ待てぇええ!!えっ?今の何?えっ、

何だって?」

「だ、だから…にょうにゃにゅへんきゃんき……」

「……………もしかして老若変換機って言いたいのか?」

コクリ…。

ルナーは縦にゆっくりと頷いた。

「いやいやそれはないだろ?いや…確かに老若は言いにくいけどさ…変換機くらいは言えるだろ?」

「ば、バカ言わないでよっ!ちょ、ちょんなの言えるわけ……ないぢゃない!!」

ルナーは俺から視線を逸らし、口元に手を運んで頬を染めた。

「頬そめんな!!なんか俺が恥ずかしい台詞強制で言わせてるみたいじゃねぇか!!」

「えっ、違うの?」

瑠璃が持ち前の天然気を発揮して俺に首を傾げながら訊いてきた。

「違ぇよぉおお!!」

「いちいちリアクチョンがうぢゃいわよ、あんた」

「悪かったな…だったらツッコませないでくれ!」

「ちょ、ちょれではなちを戻すけど…じゃあわたちたちもう元のないちゅばでーにはなれにゃいってこと?」

「おい…誰がナイスバディだ…お前はただの残念――」

「あああん!?」

「怖っ!!?い、今…天使の様な顔が悪魔に豹変したよ!?…あっ、元々悪魔か…ってそう言う問題じゃねぇよ!!

………はぁ、はぁ……疲れる」

俺は1人でツッコみ、一人でノリツッコみと複数の技を繰り出して息切れしていた。側に瑠璃が駆け寄り

心配そうな顔で俺の身を案じる。

「だいじょうぶきょうち?」

「あ、ああ…ありがとな、瑠璃」

「うんっ!!」

優しく瑠璃の頭に手を置き撫ででやると、彼女はまるで猫のように甘えてきた。

―や、やばい…悪魔なのに天使に見えてくる……。


その時だった。またしてもあの老若変換機がゴトゴトと嫌な音を立て始めた。

「おいおい嘘だろ?壊れたんじゃなかったのか?」

俺がルナーに訊くと彼女は少し警戒しながら言った。

「ええ…たちかに壊れてもう動かないはずなんだけど……」

ルナーの曖昧な言葉を聴いて、俺はゴクリと息を呑んで後ろに下がって老若変換機との距離をとった。

いや、例えルナーの話を聴いていなくとも、身の危険を感じて距離を取っていただろう…。

コンコン…。不意に鳴り響くノック音。ガチャ!と、扉が開き耳より上の部分で一つに髪をまとめている

少女――露さんが姿を現した。

「やべぇ!お前ら早く後ろに――っ!!」

咄嗟に俺がとった行動は三人を俺の後ろに隠すということだった。別に隠す必要はないと思う人もいるかも

しれないが、彼女の目の前に今の幼女姿の三人を差し出しでもしたら、鼻血ダラダラで三人に襲い掛かるに

違いない。俺はそう思い、あえて彼女の前に三人を差し出さなかった。

「ど、どうか…したんですか露さん?」

「響史くん…今二階から変な音が聞こえたんだけど、知らない?」

「へっ、変な音……ですか?」

「そう、ボォオオンッ!!ってまるで何かの機械が爆発したような音が――」

そう言いながらふと露さんが視線を下ろした。俺はその視線の跡を追って誤りを見つけてしまった。

誤算だった。三人よりも、まず先に老若変換機を隠しておくべきだった。しかし、今更後悔しても時すでに

遅し……。

露さんは「何これぇ〜?」と、にこやかな笑顔を浮かべてツンツンと老若変換機をつつきながら訊いた。

「ちょっ、や…やめてください露さん!!それに触るのは危険です!!」

「危険?それってどういう――」

刹那――老若変換機が暴走し、露さんが最後まで言葉を発する前に暴発した。

「きゃああああああああああああっ!!」

悲鳴と同時に俺は煙から顔を守った。まずい…露さんまでもが幼女化!?俺は煙を手で振り払いながら露さんが

さっきまでいた辺りに近づく。すると、これまた足元に人気を感じた。おそるおそるしゃがみ込んでみると、

そこには露さんが目を回して気絶している姿があった。

「ちょっ……、大丈夫ですか露さん!?し、しっかりしてください!!」

俺はなるべく優しく彼女の体を揺さぶった。しかし、「うぅ〜っ」とうなされたような声をあげるだけで、

なかなか目を覚ましてくれなかった。

すると、俺の側に瑠璃達三人が集まってきた。

「きょうち…つゆも殺られたの?」

「うおおおおい!もしもし瑠璃さん?あのすみませんが漢字間違ってません?“殺”じゃなくて“や”

だろが!!」

「おっとそうだったそうだった、ちっけいちっけい!」

「失敬な…」

俺はいちいち可愛らしい動きをする三人に、思わず表情を和らげてしまっていた。

そして、ようやく露さんが目を覚ました。

「うっ……う〜ん、ここは?ってありぇ?わたち…どうちてきぜちゅちてたの?」

「大丈夫ですか、露さん?」

「きょうちくん?これはどうゆうこと?わたち…何も覚えてなくて…」

「露さん…露さんも幼女――もとい幼児化しちゃったんですよ…」

「ようぢょか?」

「幼児化です……あなたが幼女って言うと、危ない響きがするので幼児でお願いします!」

「ひっどいな〜きょうちくん!わたちは危ないことにゃんて何もしてないよ?わたちはただ、可愛い女の子を

にゃんにゃんして……教育ちて…etc」

「それ以上はホントに危ないんで自重してください!!」

俺は慌てて露さんの口元に手を運び制止した。

「ちょれにちてもようぢかか……。どうちてこんなことになったの?」

「それがその……そもそもはルナーの発明品が発端でして…」

「わたちのちぇいじゃないってば!!」

「いや、お前のせいだろっ!!」

「わたちのちぇいじゃない〜!!」

そう言ってルナーは顔を真っ赤にして目じりに涙を浮かべて老若変換機を持ち上げた。

「お、おい…何やって…」

「もう怒った!こんなことになるくらいならもっと……もっとひどい目にあわちぇてやる!!この家のやちゅら

全員ようぢかちてやる〜!!ふはははは、全員わたちみたいにチビになっちゃえばいいんだ〜!!!」

突然のルナーの暴走に俺は、訳が分からなかった。

「おいおい、冗談きついぜ…いつもの冗談だろ?なっ、冗談…なんだろ?」

「ふんっ!ぢょうだんなんかぢゃないわ!!わたちは本気よ!やると決めたからには絶対にやる!ちょれが、

ちんのてんちゃいというものなんだから!!」

ルナーはなぜか八才児の体で軽々とあの老若変換機を持ち上げると、偉そうに段ボール箱が幾段も積み重ね

られた上から俺達を見下ろした。といっても、俺からしてみればあんまり変わってないんだが…。

「まぢゅはリビングに居るやちゅらからね…」

そう言うとルナーは老若変換機を持って空き部屋から飛び出した。

「あっおい待て!!」

俺は彼女を捕まえようとしたが、一足遅く…しかも運悪く段ボール箱に足をつまづかせそのままコケて

しまった。

「いってて……」

「きゃはははは!!」

遠くからルナーの笑い声が聞こえてきた。

こうして、事態は急展開……。突然の波乱の幕開けが起こるのだった……。

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