小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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第四十一話「幼き体験(前編)」

「こ、これから…どうするんだ?」

「ちょ、ちょんなこと決まってるぢゃないっ!おばしゃまをちゅかまえて元に戻ちゃちぇるのよ!!」

「そうは言ってもな〜…。第一、どこに逃げたか分かんねぇし……あてはあるのか?」

「な、ない……けど」

麗魅は最初やる気十分に言ったが、後半はほとんどやる気も失せだんだんと気が落ちて来ていた。

「ま、まぁ…探せばそのうち見ちゅかるわよ!だから頑張りまちょ?ねっ、瑠璃ちゃん!」

「えっ、あっ…うん!」

「今、ボーッとしてただろ…」

「えへへ…バレちゃった…」

瑠璃は可愛いしぐさで誤魔化した。

その後も話はなかなかまとまらず、とりあえずルナーを捕まえるという計画だけが推し進められた。

「ぢゃ、ぢゃあ…とりあえず叔母しゃんを探そっか!」

「うん…」

瑠璃と麗魅は互いに協力し、二階を捜索…俺と露さんは一階を捜索することにした。

「にちても見ちゅからないわね〜…どこに逃げたのかちら?」

「逃げ場所は分からないですけど、とりあえずリビングにいるやつらを襲うとか何とかほざいてましたから、

リビングへとりあえず行ってみましょう!!」

「ちょうね!」

俺達二人はとりあえず一階のリビングへと足を進めた。すると、俺の視界に小さな幼女が白衣姿でリビングへ

向かう姿が目に入った。――ルナーだ。

「見つけたっ!!やい、ルナー見つけたぞ!!」

「ふっ、今更来たってもうおちょいわよ!!」

「な、何!?」

「ちょれは、どういうことなの?」

俺と露さんは、ルナーの何かしら企んでいるその表情に困惑した。

「ふふふ…今、リビングには入らにゃい方がいいわよ?」

「それはどういう意味だ!!」

「ごちょうぢょうにお任ちぇちゅるわ!まぁちんじゃいないからあんちんちて?」

「安心できるか!!」

ルナーのその怪しげな瞳に俺は息を呑み、慌ててリビングへと向かう。ついでに側にいるルナーも捕えようと

試み手を伸ばしたが、あいにくとルナーは身軽に俺の手を躱し煙幕か何かでその場から消えた。

―忍者か、あいつは!?


と軽いツッコミを心の中でかましながら俺は舌打ちし、とりあえず今は目の前のことが重要だ。ということで

リビングの扉を開けた。

ガチャッ!!

「誰かいるのか?」

扉を開け周囲の状況を確認する。

「こ、これは…!?」

俺は驚愕の表情を浮かべた。目の前の表情に驚きを隠せなかったのだ。リビングには謎の白い煙が充満し、

テーブルの四方を囲んで座っている護衛役の四人(誰かは不明)の影を確認した。

「お、おい…大丈夫かお前ら!!」

慌てて俺は側に駆け寄り、影に近寄る。すると、白い煙の中にさらにボワンッ!と煙が発生した。

反射的に瞼を閉じた俺は、ゆっくりとその瞼を開き目の前の影を探した――が、見つからなかった。影が

消えてなくなってしまっていたのだ。

―なぜだ?一体どうなってる!?


謎の出来事に腰を抜かす俺…。その傍に露さんが駆け寄ってきた。

「だ、だいぢょうぶ…きょうちくん?」

「あっ…は、はい。露さんは大丈夫ですか?」

「ええ…ちょれよりも、リビングには誰かいた?」

「あ…多分、護衛役のやつらかと…てかそいつらしかありえないんですけど…誰が誰か分からなくて……」

俺は目の前の濃い煙を手で払いながら露さんに説明した。すると、露さんが煙の充満したリビングの中を歩き

だした。彼女が向かっている方向が窓だと察した俺は、露さんの今の身長では窓を開けようにも開けられない

だろうと踏んで、先に窓の鍵を開けてやった。これだと、年上のはずが年下の相手をしているように感じる。

「も、もう!ちょんなことちなくても一人で開けられるのに……」

「えっ?い、いや…どうみても足りないでしょ…そんなに小さくちゃ」

「な、ななな…こ、これから膨らみゅんだもん!!」

「ふ、膨らむ?な、何のことですか?俺は身長の話してるんですけど…」

「へっ?……ちょ、ちょんなことわ…わわわ分かってるわよ!か、勘違いちないでよねっ!!」

「は、はあ…」

顔を真っ赤にして腕をぶんぶん振る露さんを温かい目で見ながら、俺はとりあえずガララッ!と窓を開けた。

同時に煙が外へと流れだし煙が晴れていく。

そして、ようやく煙の中に隠れていた四人の正体が分かった。

テーブルの四方を囲んで座っていたのは、護衛役で水連寺一族の次女…霞さんと、四女の霄と、六女の霙と、

八女の零だった。各々、様々な体勢で床に寝転がっていた。幼児化した状態で――。

「さ、最悪だあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

俺は頭を抱えて叫んだ。

「まぁまぁおちちゅいてきょうちくん?れいしぇいにれいしぇいに…」

「はぁはぁ…これが落ち着いていられますか!!護衛役のほとんどが幼児化ですよ?残ったのはほとんど

中学生や小学生ばっかりじゃないですか!!」

声を荒げ気を失ってしまっている?四人と露さんを指さしながら俺は言った。

「でも、まだ霊ちゃんとか霰ちゃんとか…じょちこうちぇいもいるぢゃない?」

小さな手で耳をふさいでいた露さんが、その手を耳から離しながら俺に人差し指を立てて反例を挙げる。

しかし、俺はさらに反発した。

「いや…あいつらはほとんど思考回路が高校生とは思えないし…」

「ちょこがあの子たちの良い所ぢゃない!」

満面の笑みを浮かべそう言う露さん。

すると、俺達の言い合いが聞こえたのか、四人が「うう〜ん!」と声を唸らせながらムクリと体を起こし

始めた。

「あ、ありぇ?きょうちやにゃいか!どうちたん?ありぇ…あんたちらぬ間にちゅっかりセイチョーちたな!

うち、驚きやで?」

眠り眼の片目を擦りながら半眼で言う霞さん。

―すみません霞さん。言葉カミカミで何て言ってるか分かりません……。


「うるちゃいぢょ、あねぢゃ!もう少しボリュームをちっちゃくちてくれないか?うるちゃくて寝れや

ちない!」

霄がコックリコックリ首を前方に倒しながら姉の霞さんに呟く。

「あ〜ちゅまんかったな霄」

「……」

零は自分の姿の変化に気付いたのか、無言のまま眉を少しピクリと動かした。てか、今の零もリアクションが

分かりにくいけど、小さい頃の零はもっと分かりにくいな…。

「あんれ?あたちどうちて寝てたんだ?たちかあたちは武器の整理ちとって――あれ?思い出せない…。

ん?てゆ〜かきょうち、お前いちゅの間にちょんなデッケェ男になったんだ?」

霙もどうやら寝ぼけているようだ。

―四人――もとい三人はどうして自分の体の異変に気付かないんだ?そもそも、今の格好…ずんだれた服で

肌がスースーするところで気付けよな…。


「お前ら…自分の今の姿――鏡で良く見てみろっ!!!」

俺は怒気混じりの声で立て鏡のある場所をビシッと指さした。三人は頭に疑問符を浮かべて渋々立て鏡の

場所へ向かう…。しかし、そこで問題が起こった。

「ん?おいきょうち!お前もぢゅいぶんと面倒なことをちてくれたものだな……鏡に身長が届かないぢょ?」

「いや……当たり前だろ。身長縮んでんだから……」

「しんちょーが縮んでる?どうゆうこっちゃ、そりゃ?」

霄の代わりに霙が疑問を口にする。

「仕方ねぇな…ほらよ!」

俺は鏡の向きを変えて彼女達三人に見えるようにした。

刹那――三人の寝ぼけたような「ほぇ〜っ」とした顔が一変。目を見開き驚愕の表情を浮かべ、同時に

大声をあげた。

「「「な、なんぢゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああ

あああああっ!!?」」」

「分かったか?これが今の現状だ」

俺は嘆息しながら腰に手を添え三人に諭すように言う。

「ちょ、ちょんな…ウチのナイチュバデーがこんなしょぼくれたちゅがたに……。何の呪いやねんコレ…」

嘆く様に膝を立て両手を床につけて項垂れる霞さん。

「まあ…そうは言っても、単に自分の体が昔の体になっただけですから……」

「何や昔の体に戻る?どーゆーことや、しょれ?」

―また説明するのか…。


俺は嘆息してとりあえずテーブルに座って、既に自分の体の異変に気づいていた

零も交えて四人に説明した。そんな俺の隣では、露さんが両肘をテーブルについて頬に両手を添えるように、

微笑ましいといった感じの笑みを浮かべて四人を眺める姿があった。

―全く何考えてんだこの人…。


と、心の中で呟きながら俺は横目でそれを見ていた。

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