小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「り、霖…ち、違うんだ……こ、これは」

「お、お兄ちゃんが……そんな変態さんだったなんて!」

霖は消え入りそうな小さな声で涙ぐみながら言った。

「いやそれはその……ところで、どこから聴いてた?」

「ぐすっ……最初からだよ?お兄ちゃんが幼女を襲うとしてたところあたりから……」

「それ最初じゃねぇよ!てか、なんちゅう勘違いしてんだ!!襲おうだなんて言って――いや言ったけど、

あれはただの冗談なんだって!!なんて誤解を招きやすいところから聴いてくれちゃってんの!?案の定誤解

なんだって!!お前は勘違いしてんだよ、霖!!」

俺はツツ〜ッと涙を流す霖に必死に言った。

「そんな無理しなくていいよお兄ちゃん。わ、私はその…………平気だから」

「いや、その間からして絶対に平気じゃねぇだろ!!その証拠にさっきから俺から徐々に遠ざかってるし!!」

少しずつ床に座ったまま遠ざかって行く霖を見て俺は言った。

「私はお兄ちゃんが……その、ロリコンの……変態さんでも、嫌いになんかならないから……心配、

しないで?」

「いや……言ってることと行動が合ってないんですけど……どんどん遠ざかってるんだけど!言うなら

ハッキリ言ってくれ!いっそのことトドメをさしてくれ!!惨めになればなるほどよけいに苦しくなるっ!!」

俺に気を使ってくれているのか、はっきりと大嫌いと言ってくれない霖に俺はありがたみを感じる反面、

言葉とは裏の行動を取っていることに心への大ダメージを受けていた。

「せめて、せめて弁解させてくれ!!これにはわけがあるんだよ!それと、こいつはどこかの幼女じゃなくて

お前の姉なんだって!!」

「そんな嘘つかなくていいよ、お兄ちゃん。だって、お姉ちゃんはお胸は小さいけど身長は大きいんだよ?」

「……あの、ちょっと…わたち今軽くけなしゃれたよね?」

露さんが霖の最後の一言がひっかかり俺に訊く。

「霖…それはあまりにも言い過ぎだ」

という俺の一言に露さんは顔を明るくさせて

「…きょうちくん」

と言った。しかし、そこで俺はすかさず一言。

「確かに本当のことだが、言っていい事悪い事がある!」

「がーん!ひ、ひどいよきょうちくん!!」

「俺の心の痛みに比べればマシなものでしょ!?俺はどんどん信頼を失っていってるんですよ!!?」

悲しむ露さんに俺は彼女よりも自分の方が苦しんでいるという気持ちを込めて強い口調で言った。

「………なんか、その…ごめん」

露さんは俺のズタボロの心を見たのか、かわいそうな物を見るような目で謝った。

「いや…」

「本当に露お姉ちゃん…なの?」

「うん、しょうだよ霖ちゃん!」

「……お姉ちゃんみたいだね」

「その間は何!?」

露さんは軽く傷付きながら驚愕の表情を浮かべた。

「でも、どうしてそんな体になっちゃったの?」

「それがその……ルナーが作った発明品の『老若変換機』ってやつでこんな姿にされちまったんだ!それで、

これ以上被害が拡大しないようにルナーを捕まえようと思ったんだが、なかなか見つからなくてな――あっ、

そうだ!霖…お前も一緒に探してくれないか?」

「えっ、私も?」

霖は不意を突かれたような表情を浮かべた。

「ああ……ダメか?」

「ダメってことはないけど」

モジモジと胸の前で指をいじる霖…。何か問題があるのだろうか。しかし、時間的にもう昼過ぎ、

そろそろ昼ご飯を作ったりしないといけないのだろう。霖がこっちに来てからはずっと彼女が料理担当を

務めてきたからな…もしかしたらそんな暇はないのかもしれない。

「忙しいんなら無理にとは言わない…。ただ、ルナーを見かけたりとかしたら連絡してくれ!じゃあ――」

「待って!!」

俺達二人が行こうとすると、霖が俺の背中に突然くっついて俺の服を引っ張り動きを止めた。

「えっ、…あの霖?」

「わ……私も探す。ルナーさんを見つければいいんだよね?」

「ああ…そうだけど」

「私も行く!!」

「そうか!そりゃあ助かる!!」

気が変わったのか、霖は真剣な面持ちで俺達と一緒にルナー捜索に協力してくれることになった。

露さんだけでは頼りないと思っていたところで、期待の出来る助っ人…。これは思ったよりも早く

見つかるかもと俺は思った。



私――水連寺露は、幼女化…もとい幼児化してから、ず〜っと歩きっぱなしだった。家の中とはいえ、

歩きづめは疲れる。しかも、普段はあんまり辛いとは思わなかったのだが幼児化しているためかもしれない

すんごく立っているのが辛かった。しかし、この姿でもメリットがあった。それは、可愛い

可愛い妹――霖ちゃんの、これまた可愛いパンツが見えるからだ。

―ああ〜っ!幼児姿ってのもたまにはいいかも……。身長が小さい分、屈まなくても見えるし〜♪

でも、やっぱり歩くのがだんだん疲れてきた。もう、歩けない……。


と、想ったその時だった。私はいいことを思い付いた。

「ね、ねえ〜二人とも〜!ちょっと待ってよ〜!!」

「ん?どうかしたんですか露さん?」

響史くんが立ち止まって後ろを振り返って訊いた。

「ちょっときゅーけーちない?もう歩きしゅぎてちゅかれちゃった…」

「それもそうだね…結構ずっと立ちっぱなしだったし…」

「たちっぱなち!?」

「何考えてんですか、露さん!!」

また怒られてしまった。でも、どうもこういうことに関しては、理性よりも先に欲望が先に口から

出てしまう。自重しろと言われてもなかなか難しい。

「ねぇ〜疲れた〜!」

「どうする?少し休憩する?」

霖ちゃんが響史くんに相談する。私は現在八才児の姿のため、二人よりも身長が低い…。そのため、

少しばかり頭を上げないと二人の顔が見えなかった。しかし、これは少しキツいためあまり長くは続けて

いられない。昔はこうは思わなかったのだが、今となってはこれを辛いと感じてしまう…。べ、別に

もう歳だからとかじゃないわよ!?

「そうだな……う〜ん、でも早くしないと新たな被害が出ちまいそうだし…すみませんけど露さん、我慢

していてもらえますか?」

「しょ、しょんな〜!!もう歩けないよ〜」

「う〜ん……そう言われても」

「あっ、ぢゃあ抱っこちて?」

「えっ?だ、抱っこですか?」

「うん!そうすれば、きゅーけーするひつよーないよ?」

私は頭の中で考えていた通りの計画を実行しようとした。

「まあ確かに…じゃあ霖、頼めるか?」

―ふっ!計画通り……。


心の中で悪質な笑みを浮かべる私…。我ながら悪魔のようだった。……あっ、私…悪魔か。

「うん、分かった!」

霖ちゃんは満面の笑みで頷き、私の目の前で背中を見せてしゃがんだ。

―あれ、計画と違う……。


「あの〜…わたち、おんぶぢゃなくて抱っこがいいんだけど…」

「え〜?お、おんぶじゃダメ?」

―か、かわいいっ!ウルウルした瞳で眉毛を少し下げて、口元に手を持っていくなんて!そ、そんな可愛い

姿見せられたら…わ、私興奮して覚醒しちゃうぅぅぅぅぅっ!!!だ、ダメだわ!しっかりするのよ露!

ここで「うん、いいよ!」なんて言ったら、せっかく立てた計画がおじゃんだわ!!ここは我慢!


「……ど、どーちても抱っこがいいの」

「………わ、分かった。じゃ、じゃあ…抱っこね?」

「うん!」

私は満面の笑みで頷いた。抱っこがしてもらえるということよりも、自分の立てた計画が実行されるという

期待が私の表情をよりよい物にしてくれていた。

そして私は、小さな両腕を上げて手を広げると霖ちゃんに抱っこしてもらった。昔は立場が逆だった。

私が霖ちゃんを抱っこしたりおんぶしたりなど…。今までこれの逆をずっとしたかった。それがついに

叶うのだ。

「霖ちゃんの体、すんごくふわふわで、きもちーよ?」

「…ゃ。お、お姉ちゃん…く、くすぐったいよ〜」

―ふふふ。すべてはこの計画のため…。なぜ私がおんぶではなく抱っこを強要したのか――。それは、抱っこ

じゃなければ出来ないことだからだ。そう、後ろではなく前…。すなわち、小学生のくせに、高校生で

ある私よりも胸の大きい霖ちゃんの体に触れることが出来るのだ!


小さい子が抱っこしてもらった際に、少しばかり胸に手が触れたくらいで怒られたところなど見たことが

無い。

何よりも、この愛くるしい姿ならば誰にでも許してもらえるはず…。私はそこに賭けていた。頬を摺り寄せて

も抱っこしているのだから自然の道理だ――許されるはず。さっそく私は霖ちゃんの胸に頬を摺り寄せた。

「ひゃっ!く、くすぐったいよ…お姉ちゃん」

「うわ〜…霖ちゃんの胸すんごくあったかいよ?ドクドクって心臓の鼓動も聞こえる――感じてるの?」

「ふえっ!?」

「……って、何やってんですか露さん!」

またもや響史くんにいいところを邪魔されてしまった。何ともタイミングのいい人物だ。

「何って…スキンシップ?」

「歩くのが疲れたから、抱っこしてもらってたんじゃないんですか?」

「そーだよ?でも、せっかく幼児化したんだし…こーゆーのもやってみたいぢゃない?」

「そんなうらやま――じゃなくてルナーを探してるんですよ?そんなことやる元気あるなら降りて探すの

手伝ってください!!」

「やーだよ!せっかく滅多にないちゃんしゅが来たんだから、今の間に楽ちまないといけないんだから!!」

私は響史くんが止めるのも聴かず、そのまま霖ちゃんのなかなかボリュームのある胸に顔をうずめ、小さな

両手で胸を揉みしだいた。

「っひゃあ!や、やめてよ、お姉ちゃん!お、お兄ちゃん…た、助けて〜!!」

「露さんっ!!」

「ぶーっ!分かったわよ、やめればいーんでしょ、やめれば!」

これからというときに響史くんに珍しくキレかかられたので、私は渋々霖ちゃんの体から降りた。



様々な騒動があってから俺は二階の階段近くにやってきていた。と、その時どこからか煙が流れてきた。

しかも俺は、その煙に見覚えがあった。そう、リビングでもみたあの煙である。つまり、これを吸って

しまった者は幼児化してしまうのだ。

俺は急いで霖に煙を吸わないように忠告しようとしたが、時すでに遅しだった。霖はその煙を吸い込んで

せき込んでいた。

―くっ、遅かったか…。


せっかく見つけた未幼児化人物を見つけたというのに、またしても俺だけになってしまうのか、と俺が途方に

暮れていると…そんな俺の肩をポンポンと叩く人物がいた。それは、幼児化していない霖の姿だった……。

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