小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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最初から呼んでいる人は分かっていると思うが、この話から呼んでいる人のために言っておく。

霊というのは猫であるが、実は人間の護衛役だ。霄と違い、彼女はおとなしく…猫というだけあって、

癒しキャラ系の存在なのだが…。

―今思えば、彼女は一体どんな能力を持った護衛役なんだ?霄は、妖刀を使う剣士だっていうのは

聞いたが…。


そんなことを密かに思いながら仕方なく、どれから食べようかという選択をしようがどちらにせよ、

魚料理しかないため、とりあえず鮭の塩焼きを一口サイズに切り取って食べた。

―うまい…。何だ、あいつ。猫のクセにちゃっかり料理出来るのか?


家に帰ったら聞いてみるか…。にしてもいつになったら戻ってくるんだ雛下…。



俺はもう弁当の中身の殆どを食べ終わっていた。このままでは彼女が戻ってくる前に食べ終わってしまう。

そして、俺が最後の一口を食べ終えようとしたその瞬間…

「すみません、少し長くなっちゃって……もう食べちゃいましたよね?」

「んぐっ!!?」

俺は後ろから喋りかけられたため、思わず鮭の塩焼きの鮭の骨が喉にひっかかった。

「あわわわ!!だだだ、大丈夫ですか?」

俺は彼女の言葉を聞きながら、苦しみぼあまり椅子から倒れた。

そして、彼女の心配する言葉を耳で聞き取りながら、意識を失った。



気がつくと、俺は保健室のベッドの中にいた。

「ん…。ここは…」

「あらようやく気付いたの?大丈夫、神童くん…。あなたは、食堂で鮭の塩焼きの鮭の骨を喉につまらせて

倒れたのよ?全く…これぐらいで気を失うなんて、男として情けないわね…」

「は、はぁ…」

俺は申し訳ないと言った顔をした。

その時ふと横を見ると、四角い茶色の机の上に、りんごやぶどう…桃などのフルーツが置かれていた。

「あの先生、これって見舞いですか?」

「ああ…。それは雛下さんが持ってきてくれたのよ?」

―雛下が?


「あの子が言うには、自分があなたを驚かせたからとか何とか言ってたけど…」

先生は白衣を着て、俺の見舞いのフルーツの一つであるりんごを持つと、

それを皮を剥かずにそのままかぶりついた。

「あの…すみません。それ、雛下が見舞いにと俺にくれたんじゃないんですか?」

「ん?そうだけど…、別に一個くらいいいでしょ?」

先生は前向きな言葉を返すと、問答無用でそのままりんごを全部食ってしまった。

「……俺のフルーツ…」

実のことをいうと、俺は今目の前にある見舞いの品であるフルーツの内、りんごが一番大好きだったのだ。

その大好物を食われたのを見て、俺は少し悔しかった。

しかし、相手は保健室の先生。逆らう訳にはいかない。そのため、俺は文句を言えずにいた。

しかも外を見てみると、すっかり遅い時間になっていた。

「や、やばい…。そろそろ家に帰らないと…」

「?…神童くんは今、一人暮らしなんじゃないの?」

「えっ、いやまぁそうなんですけど…」

―いやさすがに、先生に“俺の家には今魔界からきた悪魔達が居候しているんです。”

なんて言えないしな〜。


俺が心の中でそんなことを思いながら先生を見ていると、先生が俺をにらみつけた。

「えっ、何ですか?」

「お前、今何か考えていなかったか?」

―ギクッ!! 全く、女性は何でこんなにも勘が鋭いんだ〜!! これが噂に良く聞く女の第六感ってやつか!?

ここは何か別のことを言って誤魔化さないと…。


「いや、…ていうか俺一人暮らしじゃないですよ?だって、俺の家にはまだ弟がいますし…」

「神童くんの弟は確か友達の家に泊まっているんでしょ?」


―ええ〜っ!?何でそんなことまで知ってるんだ?情報掴みすぎだよ…この人。

俺そんなこと全く話してないぞ?


「せ、先生…。何でそのことを知ってるんですか?」

「ああ…。さっき、雛下さんが言ってたわよ?彼女の家に、あなたの弟が泊まりに来ているって…」

「あ、そうですか…」

―ひ〜な〜し〜た〜!!!


俺は苦笑いをしながら、心の中であいつの名前を叫んだ。

「呼びましたか?」

「うぅおわぁあ!!」

俺はその声に反応して思わずベッドから落ちてしまった。何とその声は、

俺のさっきまでいたベッドの掛け布団の中からしたのだ。

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